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【私の愛したゴルフコース】第21回パインハーストNo.2 (アメリカ)

世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。

彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。

私の愛したゴルフコース第21回はパインハーストNo.2を紹介する。

Pinehurst No.2

©David Cannon (Getty Images)

クラブハウスに向かって打っていく18番ホール(415ヤード・パー4)。右側の深くて長く伸びるフェアウェイバンカーを避け、ミドルアイアン、あるいはショートアイアンでグリーンを狙う。右手前のガードバンカーは非常に難しいので、避けた方が賢明。

パインハーストNo.2
●設計:ドナルド・ロス(のちにベン・クレンショー&ビル・クーアが改修)
●コース:全長6961ヤード・パー72
●備考:ローリー・ダーラム国際空港から、車で約1時間15分。ティーグラウンドとフェアウェイはバミューダ、グリーンはチャンピオン・ウルトラドワーフ。パインハーストには全部で9コース(全て18ホール)あるが、最も有名なのがNo.2。宿泊とゴルフのパッケージもあり。
https://www.pinehurst.com

数々のメジャーが開催されている“ゴルファーの理想郷”

パインハーストでゴルフをすると、まるでゴルフの「ユートピア(理想郷)」にいるような気分になる。
パインハーストリゾートには9つのゴルフコースがあり、来年の夏には10番目のコースがオープンする予定だ。
その中で特に素晴らしいのは、間違いなく、有名なNo. 2コースだ。

パインハーストは、ノースカロライナ州にあり、砂の上に造られた素晴らしいコースが並ぶ。
ゴルファーの遊び場としか説明しようがない、北米の究極のゴルフの「砂地帯(サンドベルト)」の真ん中に位置しているのだ。

No. 2コースは、米国で最も多くの重要なゴルフトーナメントが開催されている場所だ。
現在までに「全米オープン」が3回開催され、さらに2024年、2029年、2035年、2041年、2047年に開催が予定されている。
2014年には、史上初めて男女の「全米オープン」が2週連続で開催され、マーティン・カイマーとミッシェル・ウィーが待望のタイトルを獲得した。
ここでは、1936年にデニー・シュートが優勝した「全米プロ」、1951年の「ライダーカップ」、1991年~1992年の「ツアー選手権」、1999年にペイン・スチュワート、2005年にマイケル・キャンベルがそれぞれ優勝した「全米オープン」も開催されている。

ドナルド・ロス設計の「最もフェアなチャンピオンシップコース」

パインハーストは1895年、ジェームス・ウォーカー・タフツによって設立された。
1907年、ドナルド・ロスの設計により、伝説のNo. 2コースが完成。
ロスはこのコースを「私が設計した中で、最もフェアなチャンピオンシップゴルフのテストの場」と表現した。
ロスが設計した他の多くのコースと彼がゴルフ界に残した重要な遺産を考えると、この発言はこのコース設計の重要性を大きく物語っている。

ジョニー・ミラーはかつて、パインハーストのお皿をひっくり返した(お椀を伏せた)ようなグリーンを「フォルクスワーゲン・ビートルの屋根にゴルフボールを落とそうとするようなもの」と表現した。
パインハーストの固いグリーンは、現代の進化したゴルフに対するコースの抵抗であり、非常に難しく、そして楽しい挑戦を与えてくれる。

2010年、ビル・クーアとベン・クレンショーによるNo. 2コースの大規模な再設計プロジェクトが行なわれた。
彼らの目的は、密集したラフと、オリジナルレイアウトを「阻害」し始めていた木々を除去することにより、硬質砂と原生低木がフェアウェイを縁取る、ドナルド・ロス設計のオリジナルコースを復元することだった。
この再建は素晴らしい成功を収め、私たちが現在プレーしているパインハーストNo. 2は、驚くほど難しいが、究極にフェアなゴルフのテストの場となっている。
〝自分の実力に合った〟ティーを選べば、この素晴らしいコースでの挑戦を最大限に楽しむことができるだろう。

ドナルド・ロスの傑作
2024年「全米オープン」開催コース

©David Cannon (Getty Images)

5th Par5/508yard
2014年に行なわれた「全米オープン」で優勝したマーティン・カイマーは、このホールでイーグルを奪取した。フェアウェイは右から左に傾斜しているため、ティーショットは右狙いが正解。

©David Cannon (Getty Images)

2014年には男女の「全米オープン」が2週連続で開催され、男子はマーティン・カイマー、女子はミッシェル・ウィー(右)が優勝。写真左は、アマチュア当時のブルック・ヘンダーソン。中央は2位のステイシー・ルイス。

©David Cannon (Getty Images)

18番奥には、1999年「全米オープン」で優勝し、飛行機の墜落事故で亡くなったペイン・スチュワートの銅像がある。

©David Cannon (Getty Images)

クラブハウスの横にある、No.2を設計したドナルド・ロス(左)と、パインハーストのオーナー、リチャード・S・タフツの銅像

Utopia ―理想郷

©David Cannon (Getty Images)

9番ホール(174ヤード・パー3)は、コース内で最も短いホールだが、油断は禁物。クラブ選択がカギとなる。グリーン左のガードバンカーや、グリーン奥にいくと危険。2段グリーンで横幅は広いが、奥行きがないのでグリーンオーバーに注意。

パインハーストの攻略で大事なポイント

クラブハウスから1番ティーに向かって歩いていくと、1999年の「全米オープン」で優勝した故ペイン・スチュワートの有名な勝利の瞬間の像があり、この地がいかに特別なものであるかを実感するだろう。
1番、2番はクラブハウスから一直線に伸びており、フェアウェイが比較的広いので、なんて開放的なコースなんだ、と思うだろうが、これに騙されることなかれ。
確かにスペースはあるが、フェアウェイのどこに球を置いて、どういう風にピンを攻めるかを考えないと、起伏のある皿をひっくり返したようなグリーンの場合、ピンに近づくことはもちろん、グリーンに乗せることさえ不可能な場合があるからだ。

No.2の特徴の一つは、フェアウェイバンカーやガードバンカーを含むすべての砂地がウェイストエリア(捨て地)として扱われることだ。
そのため、クラブを砂につけることができるので、バンカーから脱出するのが若干ラクになる。

パー3の9番は、有名なホールだ。
高台にあるティーグラウンドからグリーンまで、砂地と低木林を横切るようにティーショットを打つが、グリーンは、非常に奥行きが浅いため、ここでは、正しいクラブ選択が重要になる。
グリーン周りのバンカーと砂地が、この悪魔のようなグリーンを囲っている。
プレーするのは楽しいが、ダブルボギーやそれより悪いスコアを叩きやすいホールなのだ。

上がり3ホールも見事だ。
まず16番ホール(パー5)は、現代の基準からすると距離が短いのでイーグル奪取は可能だが、グリーンに乗せるためには、ティーショットでフェアウェイをとらえる必要がある。
そして次の17番(パー3)もバーディーチャンスがある。
したがって、18番(パー4)のティーグラウンドに向かう前に、2つのバーディチャンスがある。
18番にはフェアウェイの幅が非常に狭い部分があり、ショートアイアンでグリーンを狙いたい場合は、ドライバーで飛ばしてその狭い部分を突破しなければならない。
そしてグリーンも、パインハーストNo. 2特有のお椀を伏せたようなグリーンで、四方が傾斜している。
ピン位置がどこであっても非常に難しいため、バーディーを取ることができれば格別だ。

Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)

David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)

海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。

Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)

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