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【US Women’s Open】アリセン・コーパスが全米女子オープンでメジャー初優勝

US Women’s Open
2023年7月6日〜9日/Pebble Beach Golf Links・6509ヤード・パー72

女子メジャー初のペブルビーチ開催
ミッシェル・ウィ・ウエストが引退し、後進へバトンタッチ

ハワイ出身のアリセン・コーパスが「全米女子オープン」でメジャー初優勝

優勝

©USGA

Allisen Corpuz
アリセン・コーパス(米国)

1998年3月20日生まれ。ハワイ・ホノルル出身。175cm。2021年にプロ転向。LPGAツアーには2022年から参戦。2022年「ISPSハンダ・ワールド招待」2位。今季は「シェブロン選手権(メジャー)」4位タイなど。

今年、世界のゴルファーの憧れの地「ペブルビーチGL」で女子メジャーが初めて開催された。
ミッシェル・ウィ・ウエストも自身の引退試合に、この特別な場所を選ぶほど、女子ゴルファーにとっても夢の舞台だが、そこで優勝したのはウィと同じ、ハワイ出身のアリセン・コーパスだった。

ペブルビーチGLの名物7番ホール・パー3。大会期間中は98~113ヤードの距離で設定されていた。風向きや強さによっては番手が2~3番手違ってくるホールだ。

©Getty Images

ペブルビーチのロゴマークにもなっているシンボルツリー「ローンサイプレス」。コースから車で5分ほどの海岸線にある。

©USGA

フィリピン人の父・マルコスさん(左)、韓国人の母・メイさん(右)と記念撮影。

©Eiko Oizumi

大会期間中・4日間のドライバーの平均飛距離は、約245ヤードで、フェアウェイキープ率は77%。パーオン率は65%で3位タイだった。バーディ数は17個で1位。

「全米女子オープン」でツアー初優勝は20年ぶり

女子メジャー史上、初めてペブルビーチで開催された「全米女子オープン」。
優勝したのは、ツアー2年目のハワイ出身、アリセン・コーパス(25歳)。
4日間を通じて唯一人アンダーパーを記録し、メジャーでツアー初優勝を飾った。
ロレックスランキング(世界ランキング)は今大会終了時点で6位に浮上。
レース・トゥ・CMEランキングは8位に浮上した。

「本当に信じられない。これはまさに私が夢見たこと。こんなことになるとは、思ってもみなかった。両親が揃って来てくれたことも、とても特別。ここには家族や友達がいっぱい来てくれていて、叔母や叔父、従兄弟、ボーイフレンドの家族、大学のチームメイト……本当にたくさんの人たちとみんなでペブルビーチという歴史的なコースにいるというのは本当に素晴らしい」

最終日、首位の畑岡奈紗に1打差の2位でスタートしたコーパスは、6バーディ、3ボギーの69をマーク。
3つスコアを伸ばし、通算9アンダーに。
2位タイのチャーリー・ハル、シン・ジエに3打差をつけて優勝した。
米国人ゴルファーが本大会で優勝したのは、2016年のブリタニー・ラング以来のこと。
「全米女子オープン」でツアー初優勝を飾った選手は、20年ぶりとなる。
一方、最終組でプレーした畑岡は1バーディ、5ボギーとスコアを4つ落とし、76を叩いて通算3アンダーの4位タイに終わった。

「タイガー(ウッズ)はこの場所で、他の選手たちに圧勝した。本当に特別な場所なの。今から20~30年後に、『全米女子オープン』で優勝したことの大きさを実感するだろうけど、それがペブルビーチでの優勝だから、こんなに素晴らしいことはないわ」

ペブルビーチは過去、「全米オープン」や「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」など、男子のメジャーやPGAツアーの試合を開催してきたが、今年初めて女子のメジャー大会を開催。
すでに、次回のこの地での「全米女子オープン」は2035年に開催されることが決まっている。

ミッシェル・ウィ・ウエスト、オバマ大統領の後輩

さて、アリセン・コーパスとはどんな人物か、ここで紹介しておこう。
フィリピン人の父で歯科医のマルコスさんと、韓国人の母メイさんの間に誕生。
ハワイ・オアフ島の出身で、過去、LPGAツアーも開催したことのあるカポレイGCの7番ホールの左脇に住んでいるという。
オバマ元大統領やミッシェル・ウィ・ウエストが通った、プナホウ高校を卒業。
オバマ元大統領からは、優勝直後にSNSを通じて「ハワイの仲間、アリセン・コーパス。『全米女子オープン』優勝おめでとう。あなたは我々の誇り。カポレイでのプレーを楽しみにしている」とメッセージが贈られた。

ゴルフとの出会いは、ゴルフ好きの父に導かれ、兄のジョージとともに4~5歳の時に始めたのがきっかけ。
6歳の時、マルコスさんに「もし私にゴルフをさせたいなら、叱らないで」と言ったという。
誰にも強要されることなく自分でゴルフに取り組むメンタルが、すでに6歳の時点であったのだ。
7歳でハワイのジュニアプログラムに参加し始め、日本ツアーでもおなじみのデビッド・イシイに師事していたこともあった。

2008年には「全米女子アマ・パブリンクス」に10歳3か月9日で出場し、それまでミッシェル・ウィ・ウエストの持っていた最年少出場記録を更新。
コーパスにとって憧れの人は、ウィであり、地元のビッグスターとして理想の存在だった。

「彼女と私を比べるなんて、考えたこともないですね。私はいつも、2014年のパインハーストでの彼女の優勝(『全米女子オープン』)が心に残っていますが、彼女は私に大きな影響を与えてくれた選手なんです」

「打ち急がないように、全ての動作をゆっくりにしてプレーに臨んだ」アリセン・コーパス

©Eiko Oizumi

最終日、最終組でコーパスと戦った畑岡奈紗(右)。76を叩き、4位タイに終わった。左はコーパス。

©Eiko Oizumi

大会中は曇り空が広がる日々だったが、最終日はようやく朝から晴れた。美しい太平洋とカーメルビーチを望む9番ホールでバンカーショットする畑岡。

©Eiko Oizumi

シン・ジエも最終日に68をマークし、2位タイに。

©USGA

チャーリー・ハルは、最終日に66と猛追。通算6アンダーで2位タイに入った。

昨年からLPGAツアーメンバーとして戦っているコーパスだが、今年に入り「全米女子オープン」終了までの13試合で、予選落ちは2回のみ。
3月にはシンガポール開催の「HSBC女子世界選手権」に出場。
最終日にコ・ジンヨン、ネリー・コルダという世界ランク1~2位とプレーし、3位タイに入った。
また「シェブロン選手権」4位タイ、「KPMG全米女子プロ」15位タイとメジャー2試合でも上々の成績を残している。
ツアーの平均飛距離は約252・65ヤード(116位)と飛ぶ方ではないが、フェアウェイキープ率は84・8%で6位、パーオン率でも71・97%(13位)と高い確率を誇る。

今大会最終日にも、精度の高いショット力がものをいい、難コースながらも冷静にショットをピンに絡めながら、6つのバーディを奪取した。
1番でバーディ発進し、最初の3ホールで2つスコアを伸ばして畑岡奈紗を抜いたが、その後も並ばれることはあっても抜かれることはなく、猛追していたチャーリー・ハルからも逃げ切った。

「リーダーボードはあまり見ていなかった。自分のゲームに集中していた。ステディにプレーすることだけを考え、動作が速くなってしまわないように、全てのことをスローダウンして、プレーを楽しんでいた」

そしてキャディのジェイ・モナハンさん(PGAツアーのコミッショナーとは無関係。ジェニファー・カプチョの夫)の存在も大きいという。
昨年の1月末から約1年半、バッグを担いでいるが、とても物静かで、必要な時に何をいうべきかを知っており、兄のような存在だと語った。

なお優勝賞金は、女子メジャー大会最高額の2ミリオン(約2億8400万円)。
その他、ミッキー・ライトメダル、優勝トロフィーの1年間保有、今後10年間の「全米女子オープン」出場権と、今後5年間のその他のメジャー(「シェブロン選手権」「KPMG全米女子プロ」「AIG全英女子オープン」「エビアン選手権」の4大会)出場権、5年間のLPGAシード権を獲得した。

女子ゴルフ界に数々のセンセーションを巻き起こしたミッシェル・ウィ・ウエストは引退したが、ハワイの巨星に続く新星がペブルビーチで誕生した。

2023全米女子オープン最終成績

優勝アリセン・コーパス−9
2位チャーリー・ハル
シン・ジエ
−6
4位ベイリー・ターディ
畑岡奈紗
−3
6位古江彩佳
キム・ヒョージュ
−2
8位ユ・ヘランE
9位ローズ・チャン
マヤ・スターク
1
12位ブルック・ヘンダーソン3
13位ミンジー・リー
木下 彩
4
20位笹生優花5
33位西郷真央
リディア・コー
8
45位セリーヌ・ブティエ9
48位岩井千怜10
53位佐藤心結11
64位野村敏京
川﨑春花
ネリー・コルダ
13
68位三ヶ島かな14
71位勝みなみ16

予選落ち/吉田優利、岩井明愛、渋野日向子、山下美夢有、西村優菜、上田桃子、脇元華、馬場咲希(アマチュア)

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/USGA、Getty Images

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