コマーシャルバンク・カタールマスターズ優勝
星野陸也
ヒーロー・インディアンオープン優勝
中島啓太
ISPS HANDA欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!優勝
桂川有人
欧州ツアーで活躍が目立つ日本勢
2024年に入り、日本の男子ゴルフ界には注目すべき話題が豊富にある。
まずは、海外で選手たちが結果を出しているという明るいニュースから。
昨年9月にDPワールド(欧州)ツアーで初優勝し、新人王となった久常涼が今年は米ツアーに戦いの場を移しているが、彼に続き、2月の「コマーシャルバンク・カタールマスターズ」で星野陸也が優勝。
3月末には「ヒーロー・インディアンオープン」で中島啓太が4打差圧勝。
4月には「ISPS HANDA欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」で桂川有人が優勝と、いずれも欧州ツアーで存在感を示している。
3人とも最終的には米ツアーでプレーする目標があり、今年「ジェネシス招待」で米ツアー9勝目を達成した松山英樹を目指して奮闘中だ。
またアジアンツアー「ニュージーランドオープン」では幡地隆寛が初優勝を飾っている。
今春から新体制で臨む日本男子ツアー
海外で活躍する選手たちが増える一方で、日本ツアーはまだ始まったばかり。
年間23試合という試合数の少なさは相変わらずで、全体の賞金額は「長嶋茂雄インビテーショナルセガサミーカップ」が5000万円ダウン、「ANAオープン」が5000万円アップで日程発表時と変わっていない。
変わったのはツアーを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)の執行部だ。
4期8年続いた青木功政権がようやく終わり、3月19日に発足した新体制は、かつて副会長を務めた諸星裕氏を会長に、倉本昌弘、谷原秀人ら4氏が副会長と顔ぶれが一新している。
1999年に日本プロゴルフ協会(PGA)から独立してJGTOを作った1人であり、前PGA会長の倉本が、選手会アドバイザーとなり新政権設立をサポート。
世界のスポーツに明るい諸星氏を会長に立てた。
「選手の生活権を守り、スポンサーには投資へのリターンができるように」と就任会見で開口一番諸星会長は口にした。
だが、見通しについては決して楽観的ではない。「まずは、今ある試合を続けてもらうこと」と、倉本副会長は現状を守ることを第一に挙げた。
さらに、離れてしまったスポンサーに改めて事情を聞くという対策も口にしている。
海外には特に目を向ける方向だ。
久しぶりのJGTOの仕事ということで、諸星会長は「マスターズ」で各ツアー関係者と関係を構築し直した。
さらに「海外と一緒にやること、ファンの方を1人でも増やすこと」(諸星会長)に徹することを口にしている。
世界ランキングに反映されるポイントの割合低下や、スポンサーとの信頼関係など、前政権が残した〝負の遺産〟をいかに克服していくか。
与えられた課題は大きいが、選手と主催者が同じ方向を向き、選手の生活権を守ることを忘れなければ、道は残されているはずだ。
新たなヒロイン誕生で沸く女子ツアー
竹田麗央が大躍進の日本女子ゴルフ
日本の女子ツアーでは、竹田麗央の勢いがすごい。
2021年11月にプロテスト合格。
実質3年目のシーズンだが、昨年はトップ10入り8回で、メルセデスランキング22位に入り、シード権を獲得。
今年も開幕から5試合中4試合でトップ10入りと絶好調だった。
何度も優勝争いをする中で経験値は確実にアップ。
それを生かしたのが地元、熊本開催の「KKT杯バンテリンレディス」だ。
初日こそ41位タイと出遅れたが、鈴木愛、イ・ミニョンの実力者2人と、同じく初優勝を狙う鶴岡果恋の3人に2打差をつけて初優勝を飾った。
6歳でゴルフを始め、師匠はプロである母の平瀬哲子。
デビュー当時はキャディも務めていた。
その母の妹が1993~1994年賞金女王で、米女子ツアープレー経験もあり、現在は解説者として活躍している平瀬真由美だ。
誕生日は、岡本綾子と同じ4月2日で、21歳になった直後の初優勝だった。
その翌週、「フジサンケイレディス」で2週連続優勝。
開幕からの安定した成績もあり、一気にメルセデスランキングトップに躍り出た。
優勝で涙を流すことなく淡々としている平常心は、叔母の平瀬を思わせる。
武器はツアー第3位で平均約246ヤードの飛距離。
フェアウェイキープ率は約57%(87位)と決して良くないが、パーオン率は約77%と、しっかりグリーンをとらえてくる。
どこまで飛躍を遂げるのか、楽しみだ。
一方、鈴木愛は2~3戦目と連続優勝し、竹田が勝った2試合はいずれも優勝争いしている。
持ち前のパットのうまさで、4季ぶり3度目の女王奪還を目指す。
海外組も徐々に面白くなってきた。
序盤戦でトップ10入り4回と安定している古江彩佳はポイントランキングで6位。
ツアー7勝目を狙う畑岡奈紗が19位で続いており、「パリ五輪」の日本代表はこの2人が有力だ。
調子を上げてきているのが、「シェブロン選手権」で9位タイと光るプレーを見せた勝みなみ。
同大会で出場5試合連続優勝の快挙を成し遂げたネリー・コルダ(米)に、日本勢が立ち向かう可能性は十分にある。
Photo/Getty Images, Yasuhiro Iwai, Seiryu-sha
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。