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【PGAツアーレポート】「ここで勝たないと一流ゴルファーとしての履歴書は完成しない」世界ランク1位のスコッティ・シェフラーがニクラスの庭で初優勝

The Memorial Tournament
2024年6月6日~9日/ミュアフィールドビレッジGC(米国オハイオ州)/7561ヤード・パー72

優勝
Scottie Scheffler

スコッティ・シェフラー(米国)
1996年6月21日生まれ。190cm、91kg。PGAツアー12勝。メジャーは、2022年、2024年「マスターズ」で2勝。今季は「メモリアルトーナメント」など6勝。今年の5月に一児のパパに。世界ランク1位。
5月中旬に誕生した第一子、ベネットちゃんを抱きかかえるメレディス夫人(左)と優勝したスコッティ・シェフラー(左から2番目)。大会ホストのジャック・ニクラス(右)とバーバラ夫人とともに記念撮影。©GettyImages

「18番ホールのパットを決めて優勝し、ニクラス氏と握手するのは格別」

最終日の18番ホール、2打目をフェアウェイから放つ、スコッティ・シェフラー。©GettyImages
最終日、スコッティ・シェフラーと最終組で戦ったコリン・モリカワ(左)が、出迎えてくれたジャック・ニクラスと握手。「将来、できるだけ早く勝って、ジャックとの最後の握手を交わしたい」©Eiko Oizumi
最終日は、ニクラスの定番カラーである、黄色いウェアを着用するよう呼びかけられる「プレー・イエロー・デイ」。松山は昔から黄色のウェアを最終日に着用することが多い。©Eiko Oizumi

グリーンの硬さがコースを難しくした週末

世界ランク1位のスコッティ・シェフラーの勢いが止まらない。

メジャー18勝のジャック・ニクラスがホストを務める、高額賞金のシグネチャーイベント「メモリアルトーナメント」でシェフラーが初優勝。
今季5勝目を飾った(この後、『トラベラーズ選手権』で今季6勝目)。

彼はPGAツアー通算12勝を達成し、年間5勝以上を挙げた選手としては、2016~2017年シーズンのジャスティン・トーマス以来、7人目に。
そして今季、シグネチャーイベントで複数回優勝している唯一の選手でもある(アーノルド・パーマー招待、RBCヘリテージ、メモリアルトーナメント、トラベラーズ選手権)。

「ここで優勝することは特別だ。ジャック・ニクラス氏を長い間尊敬してきたが、彼は常に家族を第一に考える人。僕もできる限り、家族を第一に考えようとしている。神のご加護があれば、僕と妻のメレディスも彼が64年間続けているように、結婚生活を続けられるといいね」

彼の最終日のプレーは、1バーディ、3ボギーの74と、決して最高のプレーができたわけではなかった。
しかし、連日の日照りでグリーンはますます硬くなり、難しくなったことで、他の選手たちも大きくスコアを伸ばすことが容易ではなかった。

「まあまあのプレーだった。もう少しパットが入っていれば、本当にいいラウンドだっただろう。今年、優勝するのに一番困難だった試合は『プレーヤーズ選手権』だが、満足感からすれば、今回の勝利が一番高い。ニクラス氏のコースで開催された、過去に何度も悔しい思いをした試合で、勝利できて非常に満足。18番ホールのパットを決め、ニクラス氏と握手するのは格別」と振り返った。

ホストのジャック・ニクラスは、世界ランク1位のシェフラーが優勝したことに対し、次のように語っている。

「世界ランク1位の選手がいて、その選手がパフォーマンスを発揮して優勝するなら、本当に誇らしいことだ。彼は今日、何ホールかでAゲーム(最高のプレー)ができなかったかもしれないが、他の選手たちも同様に完璧ではなかった。スコッティは必要な時に十分なAゲームができて、優勝したんだ。素晴らしかった」

ニクラスもシェフラー同様に、グリーンの硬さが今大会のコースの難易度を高めたと考えていたが、その理由に、「晴天続き」であることを挙げた。
本大会は雨や雷雨で中断することも多い試合として知られているが、ここ2年間は、大会中に雨が降っていないのだという。

「私は難しくてチャレンジングなコースが好きだが、今回は私が望むよりも少し難しかったかもしれない。ただ我々はコースを最善の状態に整え、フェアなテストを提供することが大切だ」とニクラスは語った。

「子供の頃に使った、汗で汚れたキャップを見ながら、これまでの努力を思い出す」
これが、シェフラーの原動力

優勝後の記者会見に臨む、シェフラー(右)と大会ホストのジャック・ニクラス。©Eiko Oizumi
ミュアフィールドビレッジGCには、優勝者の名前が刻まれた石碑がある。©Eiko Oizumi
2014年には松山の名前も刻まれている。彼にとって、PGAツアー初優勝を飾った記念すべき大会だ。©Eiko Oizumi

子供の頃に使っていた汗で汚れた帽子がモチベーションの源

昨年の5月末から今(6月21日現在)に至るまで、57週連続世界ランク1位の座をキープし続けているシェフラー。
彼がここにきて、ますます進化を続け、強くなっているのには理由があった。

それは、「世界ランク1位になったからといって、全ての面でゲームを向上させようと努力することをやめない」からである。
彼は、「最初のティーに立つ時、自分の準備が整っていることを確認している。そして準備が整ったと自覚することで、自信を持ってプレーできる」と語る。
そして、いかにも彼らしいのは、「結果は自分に委ねられてはいない、と覚えておき、ただ戦うだけ」というメンタル術を持っていることだ。

彼は敬虔なクリスチャンで、日頃から「神が授けてくれた技術を使って、神に勝利を捧げるために戦っている。自分のためではない」という信条の持ち主。
だから、「全力で戦った結果、勝っても負けても、それは神が定めた自分の運命だ」と考えているのだ。
確かにそう考えれば、結果に一喜一憂しすぎることはないのかもしれない。

そして、彼は世界ランク1位の座に君臨し続けるために、あるものを見ながら日々努力をしていることを明かした。

「家のジムには、子供の頃に使っていたキャップがいくつかある。汗で汚れたキャップを見ると、自分がここまで来るまでに、どれだけの努力をしてきたか、を思い出すんだ。努力を続けることで、成功への道を切り開いている。これが私の原動力となっている」

特にお気に入りのキャップは、大学時代に「マスターズ」でプレーした時のものだそうで、ジムでトレーニングしている時にこれらのキャップを見ると、「モチベーションになるんだ」という。

8月のフェデックスカップ最終戦「ツアー選手権」までにまだ時間があるだけに、勝ち星をあといくつ重ねるのか、楽しみである。

最終成績

優勝スコッティ·シェフラー−8
2位コリン・モリカワ−7
3位アダム·ハドウィン−4
4位クリスチアン·ベゾイデンハウト−3
5位マシュー·フィッツパトリック
ルドビグ·オーバーグ
セップ·ストラーカ
−2
8位松山英樹
イム·ソンジェ
トニー·フィナウ
ザンダー·シャウフェレ
−1
15位ビクトル・ホブラン
ローリー·マキロイ
+2

棄権/リッキー・ファウラー、ジョーダン・スピース

グレイソン・マレー自殺
「早すぎる死」に衝撃

今年1月の「ソニーオープン」でツアー2勝目を飾っていたグレイソン・マレー(左)とフィアンセ。©Eiko Oizumi
「メモリアルトーナメント」のメインリーダーボードにも、彼の死を悼む掲示があった。©Eiko Oizumi

今年の「ソニーオープン」でツアー通算2勝目を挙げたグレイソン・マレーが亡くなった。享年30歳だった。

彼は、3年前にアルコール依存症であり、メンタルヘルスに苦しんでいることを告白。
優勝後の会見では、「アルコール依存症もフィアンセのサポートもあって克服。
4月にはフィアンセと結婚するのが楽しみだ」と語っていた。

「チャールズ・シュワブチャレンジ」に出場していたマレーは、2日目の16番ホールを終えたところで棄権。翌朝に亡くなったという。
彼の両親は、ツアーを通して声明を発表し、「自殺」であったことを明かした。

これに対し、ジェイ・モナハンPGAツアーコミッショナーは「グレイソンの死去には衝撃を受けた。彼からたくさんのことを学んできたのに」と早すぎる死を悼んだ。

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

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