海外の大舞台で実力発揮の夏
日本男子・女子・シニア
海外で大活躍の日本男子・女子・シニア
「近い将来への期待と不安がにじむ、怒涛の夏」……8月終盤までの日本ゴルフ界を言葉にすると、こうした表現になるだろうか。
プロの世界を見ると、日本勢の海外での活躍や可能性はどんどん広がっている。
松山英樹の「パリ五輪」銅メダル、そして「フェデックス・セントジュード選手権」での米ツアー節目の10勝目。
これに続こうとする若手も力をつけてきており、海外を主戦場に経験を積んでいる選手たちも増えている。
女子では、「アムンディ・エビアン選手権」での古江彩佳のメジャー優勝。
山下美夢有は、メダルは逃したものの「パリ五輪」で4位タイに入った。
西郷真央は米ツアー初優勝を惜しくも逃し、「全英女子オープン」では7位タイ。
米女子ツアー新人王レースの首位をひた走っている。
また、「全英女子」には史上最多の19人が出場。岩井明愛が西郷と同じ7位タイに入って、自信をつけている。
シニアの世界でもこの夏、日本勢は元気なところを世界中に見せつけた。
日本ツアー18勝の藤田寛之が、「全米シニアオープン」で優勝にあと一歩と迫った。
2打差単独首位で最終ラウンドを迎えたが、これが悪天候のため中断後に順延となった。
結局最終ラウンドはスコアを1つ落とし、英国のリチャード・ブランドに追いつかれてプレーオフに。
規定の2ホール、サドンデス1ホール目と互いに譲らなかったが、次のホールをボギーにして惜敗した。
「全米シニア女子オープン」でも、山本薫里が大活躍した。
日本では、45歳以上のレジェンズツアー4勝の実績を持ち、50歳になった今も試合に出ることに積極的な選手。
昨年はまだ49歳だったため、仲のいい大竹エイカのキャディとして大会を経験した。
50歳の今年、満を持して臨んだテキサス州での予選をトップで通過。
初出場の本戦で初日から首位を突っ走った。
しかし、5打差単独首位で臨んだ最終日にスコアを伸ばせず、猛攻を見せた地元、米国のリタ・リンドリーに追いつかれて逆転負け。
2位に終わっている。
同大会には、予選からも含めて13人の日本勢が出場。
山本を筆頭に鬼澤信子(3位)、久保樹乃(5位)、表純子(7位タイ)がトップ10入り。
さらに第1回大会から6回連続出場を続けている斉藤裕子(13位タイ)も来年大会の出場権を獲得した。
全米ゴルフ協会(USGA)主催のメジャーで優勝争いを引っ張り、2位になった藤田と山本。
女子の出場選手が多かったこともあり、日本のシニア勢の強さには注目が集まった。
秋以降、1か月間空き週のある男子ツアー
延期された女子ツアーの「全試合の主催化」
日本男女ツアーの問題点
日本ツアーに目を向けると、男子は「日本プロ」の杉浦悠太を始め、平田憲聖、米澤蓮、香妻陣一朗らが優勝。
若い力が育っていることがはっきりとわかる。
秋になると10月2週目の「日本オープン」までは毎週、試合があるが、その後、11月2週目の「三井住友VISA太平洋マスターズ」まで約1か月間、試合がない。
ゴルフのトップシーズンともいうべき時期にこの有様なのは、まさに緊急事態。
青木功会長時代の〝旧体制の負の遺産〟から立ち直るために、新体制の手腕が問われる。
海外に出て活躍する選手が増えるのは素晴らしいことだが、日本ツアーそのものは存続の危機からいまだ脱していない現状を、どう打開するのか。
女子ツアーは、海外メジャーの成績がメルセデスランキングに反映されることもあり、争いはし烈を極めている。
今季5勝と台頭し、メジャーでも頑張っている竹田麗央がランキング首位にいるが、3年連続年間女王を狙う山下も、今季は国内未勝利だがメジャーでのポイントが効いて2位にいる。
夏場に3勝している川﨑春花、初優勝からすでに2勝の桑木志帆、明愛&千怜の岩井ツインズ、安定の小祝さくら……。
「日本女子プロ」、「日本女子オープン」、「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」と公式戦3試合がある終盤に向けて、激戦の予感でいっぱいだ。
順風満帆に見える女子だが、ツアーに不安がないわけではない。
2025年からの予定を、2027年からに延期した〝全試合のJLPGA主催化〟については、相変わらずあまり進展がみられない。
長い目で見ながらツアーの仕組みを、さらに広い視野で考える必要がある。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。