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【世界のゴルフ通信】From USA PGAツアーが行なおうとしている最大の改革とは?出場選手の人数削減の可能性

PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏。PGAツアーからは、今後の出場者人数の変更について、正式なコメントは出ていない。©GettyImages

PGAツアーの最大の改革が物議を醸す恐れ

PGAツアーは、出場選手の人数に関する制度の分野に大幅な変更を加えることを真剣に検討している。
これは恐らく過去40年間で最大の変革となり、間違いなく物議を醸すものとなるだろう。

試合の出場選手枠を縮小し、毎年のシード選手数を減らすことで、ツアー側は毎週、より認知度の高い選手が参加し、プレーのペースが改善され、ツアーに残るための競争力が高まることを期待している。
この夏、選手諮問委員会がさまざまな構想を検討していることを『ゴルフウィーク』誌が初めて報じた。
ウェブサイト「mondayq.com」では、スポンサーの招待枠や月曜日に行なわれているマンデー予選会の数を減らすといった計画の詳細が最近明らかにされたのだ。
PGAツアーはこの件に関するコメントを拒否している。

政策委員会の会議は11月に行なわれたが、そこで2025年シーズンの開始前に、選手たちが翌シーズンに向けて、何を競うべきかがわかるよう、あらゆる変更は承認される必要がある。
複数の情報筋によれば、実際の人数はまだ決まっていないが、概要では、毎年決定するシード選手の数を125人から100人に減らし、通常の試合での出場選手枠もできるだけ縮小する予定だという。
これにより、各日の午前、午後のプレーに時間の余裕が生まれるため、多くの場合、土曜日の朝までずれ込むこともある、金曜日の夕方行なわれる36ホールでの予選カットに、より多くの時間を確保できるようになる。

どんな試合で出場人数を減少させるのか?

「アメリカンエキスプレス選手権」や「ファーマーズ・インシュランスオープン」など、36ホールの予選ラウンドが複数のコースで開催される試合は、影響を受けない可能性が高い。
しかし、例えば「WMフェニックスオープン」のような試合では、出場選手数が132人から120人に削減されるかもしれない。
また、シーズン後半の試合で144人、または156人の出場人数を持つものも、人数が削減されるだろう。

出場選手数を減らすために、ツアーはシード選手の人数を減らす予定だ。
125人から100人に減らすのも、その一つである。
mondayq.comは、コーンフェリーツアー(PGAツアーの下部ツアー)から参加する選手の数が、30人から20人に削減される可能性があると報じている。

この計画は、ツアーのレギュラーメンバー(上位ではない選手層)からは歓迎されないだろう。
彼らは、PGAツアーでプレーする機会が減り、賞金総額が通常100万ドル(約1億5000万円)程度のコーンフェリーツアーで、PGAツアーよりもはるかに少ない賞金を競わなければならないからだ。
通常、PGAツアーの賞金総額は900万ドル(約13億5000万円)、シグネチャーイベント(今回の制度改革の影響を受けないと予想される)は2000万ドル(約30億円)となっている。

シード選手数や出場者数を減少させることで、有名選手の出場を促す目論み

1週間で60万人超の観客数を集める「WMフェニックスオープン」も、出場選手数が減らされる可能性がある。写真は1ホールだけで3万人以上の観客が集まるという16番ホール・パー3。©GettyImages

現在とは全く異なる過去のツアーの出場方法

元プレーヤーでCBSのキャスターだったゲーリー・マッコード氏は、1983年シーズンに承認された、賞金ランク125位までの選手が、シード選手として全試合に参加できるという構想への移行の立役者だった。
この移行により、賞金ランキング(現在はフェデックスカップポイントランキング)で125位までの選手が、翌シーズンの出場権を維持できるようになった。
ツアーにはこの他に、トーナメント優勝者、メジャー優勝者、過去の優勝者、医療免除者など、数多くの複数年にわたる出場カテゴリーがある。

1983年以前は、どのシーズンでも予選を免除されるのは60人だけで、出場者の大半は月曜日の予選会の通過者で占められていた。
月曜日の予選会に通過し、本戦で予選通過を果たすことで、次週の試合に出場する権利を確保できたのだ。
毎年(時には年に2回)行なわれる予選会を通過しても、月曜日の予選会に参加する資格を得るだけだった。

1983年以降、システムはほとんど変わっていない。
2年前、ツアーはフェデックスカップ・プレーオフに参加できる選手人数を70人に減らすという、大きな変更を行なった。
しかし、現在行なわれているように、シーズン序盤のシグネチャーイベント2試合に参加できる資格を得る機会を含め、いろいろな面で秋に選手が競技に参加することは依然として許可されている。
この構造が新たな方針の下で変更されるかどうかは不明である。

今年一年で、ツアーの規模縮小を求める動きが見られた。
ローリー・マキロイは、3月の「アーノルド・パーマー招待」でこれについて声を上げ、「ツアーをもっと熾烈に、もっと競争的にするのは賛成だ。これを言うと私の人気もなくなるだろうが、私は選手を減らし、シード権を減らし、最高の選手を集めることに賛成だ」と述べた。
詳細については、まだこれから発表される予定である。

PGAツアーとサウジ政府系ファンドの最高責任者が、ゴルフの聖地で共にプレー

DPワールドツアー「アルフレッド・・ダンヒル・リンクス選手権」に出場し、同組でラウンドしていたPGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏(右)と、LIVゴルフを後援するPIF(サウジ政府系ファンド)の総裁、ヤシール・アル・ルマイヤン氏。©GettyImages
ルマイヤン氏(右)のショットの行方を見守るモナハン氏(左)。©GettyImages
ゴルフ界を一つにまとめるための仲介役を務めている南アフリカの億万長者、ヨハン・ルパート氏(右)とローリー・マキロイ。©GettyImages

欧州ツアーの試合でPGAツアー、PIFの代表がともにプレー

今から約1年前、サウジアラビアの公共投資基金(PIF)のヤシール・アル・ルマイヤン総裁は、「ダンヒル・リンクス選手権」で「アンドリュー・ウォーターマン」という偽名を使って、LIVゴルフのピーター・ユーラインとペアを組み、こっそりプロアマ大会に出場しようとした。
しかし今年は、そんなふうにコソコソ出場する必要はなかった。
アル・ルマイヤン氏は、初日のペアリングシートに堂々と名前が載り、同じ組にはPGAツアーのコミッショナーであるジェイ・モナハン氏もいた。

これら全ては、ダンヒルを統括する南アフリカの74歳の億万長者ヨハン・ルパート氏の壮大な使命の一部であるようだ。
彼は、既存のプロゴルフツアーとLIVゴルフの間の仲介役を務め、男子プロゴルフ界を再び一つにするために動いている。

「この大会を運営するヨハン・ルパート氏がやろうとしているのは、ゴルフ界を少しでもまとめることだと思う」と、ローリー・マキロイはBBC北アイルランドに語った。

「もし我々が何らかの形で無理やりでも一つになる必要があるのなら、彼はそのために努力をする。それは良いことだと思うし、間違いなく正しい方向への一歩だ」

ゴルフ好きで知られるルパート氏は、DPワールドツアーの2つの大きなダンヒルトーナメントのスポンサーを務めており、10月の「ダンヒル・リンクス選手権」にLIVゴルフの選手14人が出場できるよう、招待状やツアーの規定を調整した。
スコットランドのセントアンドリュース・オールドコース、カーヌスティ、キングスバーンズで行なわれるプロアマ大会では、ゴルフ界の「内戦」で名を馳せた大物が、アマチュア選手として大会に出場。
第1ラウンドでは一緒にプレーする姿も見られた。

モナハン・コミッショナーは、PGAツアーメンバーのビリー・ホーシェル(「BMW PGA選手権」の優勝者)とペアを組み、初日のカーヌスティではアル・ルマイヤン氏とLIVのディーン・バーメスターが一緒にプレーした。
アル・ルマイヤン氏はPIFを統括しており、そのPIFがLIVゴルフに資金提供をしている。

2つの主要団体が、同じ組でプレーするというペアリングが組まれたことは関係者の間で話題となり、好意的に受け止められた。

「ゴルフの本場ほど、みんなを一緒に集めて話をするのにふさわしい場所はない」とマキロイは語る。「ジェイとヤシールが一緒にプレーするのは素晴らしいことだと思うし、LIVからもかなり多くの選手がこの大会に参加しているのは、良い兆候だ」

これは微妙に氷を溶かす試みだが、最終的に何を意味するのかはまだ不明だ。
DPワールドツアーのCEO、ガイ・キニングス氏もプレーに参加しており、ニューヨークで行なわれた全ての関係者との会議にも出席している。
現在、何らかの話し合いが行なわれていることは確かだが、このようにゴルフコースで一緒に時間を過ごすのも悪くない。

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

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