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【世界のゴルフ通信】From USA タイガーが統合遅延の原因? LIVゴルファーへの態度軟化を見せる欧州ツアーに対してPGAツアーは?!

昨年10月、セントアンドリュースで行なわれた「アルフレッド・ダンヒル・リンクス選手権」で同組でプレーした、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏(中央)と、PIF(サウジ政府系ファンド)最高責任者のヤシール・アル・ルマイヤン氏(右)。©GettyImages

遅々として進まない欧米ツアーとLIVの合意

2023年6月6日にPGAツアー、DPワールドツアー、サウジアラビアの公共投資基金(PIF)との間で締結された枠組み合意からすでに1年半が経過した。
あの驚くべき、そして物議を醸した合意は、PGAツアーコミッショナー、ジェイ・モナハン氏とLIVゴルフリーグを支援するPIFの最高責任者であるヤシール・アル・ルマイヤン氏との間で結ばれたが、その合意には、解決のための期限として2023年12月31日が設けられていた。

現在はすでに2025年に入っているが、両者は引き続き交渉を続けており、合意に向けて進展していると伝えられている。
しかし、ゴルフ界全体が分裂したままで、その進展の遅さに疑問の声が上がっている。

「このプロセスに関わっている我々全員が、こんなに時間がかかるとは思わなかった」とタイガー・ウッズは、バハマで開催された自身のチャリティイベント「ヒーロー・ワールドチャレンジ」で語った。

「もし今までに合意が成立していたとしても、それは司法省の手にかかっていただろう。今までに何かもっと具体的な進展があったらよかったのだが……」

ウッズはさらに、「物事は非常に流動的。我々はまだ取り組んでいる最中で、毎日のように何かが起きている。政策委員会の立場から見ても、PGAツアーエンタープライズの立場から見ても、事態は動いており、建設的に進んでいる。しかし、確かに進んではいるものの、もっと進展があったらと思う」とも話した。

統合の遅延の最大の原因はタイガー?

一部では、ウッズ自身が進展を妨げているとの見方もある。
メジャー15勝を誇るウッズは、2023年7月にPGAツアーの政策委員会のメンバーに任命された。
この決定は、モナハン氏やPGAツアーの幹部がサウジアラビアの代表者と秘密裏に交渉していたことに対する選手たちの広範な失望を受けて行なわれたものだ。
ウッズは理事会の追加メンバーとして任命され、選手たちには彼らの承認なしに契約を締結することはできないという保証が与えられた。

それでも、LIVゴルフが発足して約3年が経過しているが、ウッズ自身の発言には、この展開に対してあまり満足しておらず、どんな犠牲を払ってでもPGAツアーを守りたいという意向が強く示されている。

ウッズは2024年春にアル・ルマイヤン氏と直接会談し、ともにゴルフをしたが、ウッズはパトリック・キャントレーと共に、合意に関しては強硬な立場を取っていると見られている。
ウッズ自身はほとんどコメントを控えているため、それが正確に何を意味しているのかは不明だ。

2024年初め、PGAツアーは「ストラテジック・スポーツ・グループ(以下SSG)」というプライベートエクイティファームと契約を結び、PGAツアーエンタープライズに約15億ドルを投資した。
PIFの投資額も同様と見られているが、新しい提携のもと、LIVゴルフがどのように運営されるのか、LIVを含む全てのツアーから、最も優れた選手がどのようにメジャー以外の試合に集まるのかといった問題が伴うことになる。

現在、LIVゴルファーたちはPGAツアーの試合に出場することが許されておらず、DPワールドツアーの試合に参加するには罰金を支払い、出場停止処分を受ける必要がある。

「私たちはできるだけ最高のプロダクトを提供し、ゴルフ界に必要な平和をもたらすために、即座に活動している」とウッズは続けた。

「ゴルフ界にとって非常に難しい時期が続いている。ゴルフの美しさから外れるようなことが多かった気がするが、我々はそれを統一し、ファンに最良の体験を提供しようとしている」

DPワールドツアーは一足先にサウジと別合意を締結。
ゴルフ界全体にとって、一刻も早く混乱を終わらせるべき

昨年12月にバハマで開催された「ヒーロー・ワールドチャレンジ」の記者会見に出席したヒーローモトコープのパワン・ムンジャル会長(右)とホストのタイガー・ウッズ。©GettyImages

PIFと欧州ツアーの新たな展開

「ヒーロー・ワールドチャレンジ」開催前には、PIFとDPワールドツアーが別の合意を進めているという『ブルームバーグ』の報道があった。
それは、DPワールドツアーは、LIVメンバーがツアーに参加できるようにし、スケジュールが重複しないように譲歩する代わりに、サウジアラビアの組織がDPワールドツアーに多額の投資を行なう可能性があるというものだ。
DPワールドツアーはこれに対して否定はしていないが、PGAツアーがどう関係するかは不明である。
PGAツアーは現在、DPワールドツアーの賞金を補填し、年々増加することを保証しているが、これは相当な資金力を持つPIFでも、同様の支援を簡単に実行できることだ。

「私たちはPGAツアー、PGAツアーエンタープライズ、SSG、PIFと共に、男子ゴルフ界全体について議論を続けているが、まだ合意には至っていない」とDPワールドツアーは声明を出している。

ウッズはこの問題について直接的な回答を避け、「これは進行中の交渉であり、物事は日々、週ごとに進行している」と語った。
「我々は皆、この状況を乗り越え、ツアーにとって最善のことをしたいと思っている。そうしようとすると、時には衝突が起きることもあるだろうし、時には少し難しいこともあるだろうが、最終的には全てのファンと選手全員にとって、より良いプロダクトを提供し、ゴルフ界が切実に必要としている平和を手に入れることができると信じている」と述べた。

スポンサーの立場からゴルフ界の統一に意見

PIFがバックアップするLIVゴルフは、過去何度もドナルド・トランプ氏が所有するゴルフ場で大会を開催してきたこともあり、ルマイヤン氏(右)とトランプ氏の関係も深い。トランプ氏の大統領就任が、LIVゴルフにとって追い風となるか?!©GettyImages

同記者会見で、ヒーロー・モトコープの会長である、パワン・ムンジャル博士は、「ヒーロー・ワールドチャレンジ」のタイトルスポンサー契約を2030年まで延長することを発表した。
インドを拠点とする同社は、「ヒーロー・ドバイ・クラシック」や「ヒーロー・インディアンオープン(男女共)」のスポンサーも務めており、インドにおける女子ゴルフツアーのアンブレラ・スポンサーでもある。

ヒーローは、2022年にLIVゴルフに移籍したインド人ゴルファー、アニルバン・ラヒリを契約解除したが、熱心なゴルファーであり、ビジネスマンでもあるムンジャル博士は、一昨年LIVゴルフイベントにも参加した経験がある(フィル・ミケルソンとプロアマでプレーした)。
また、枠組み合意が発表された直後に、インドでLIVイベントを開催する協議もしていると言われている。

そして多くのスポンサー同様、ムンジャル博士も合意の成立を強く望んでいる。

「非常に簡単に言うと、ゴルフというスポーツも、選手たちも利益を生んでいない。おそらくツアーの一部の選手たちはそうかもしれないが……」と合意に至っていない状況で、ムンジャル氏は語った。

「全員が再び集まり、ゴルフというゲーム、選手たち、スポンサーたちが前進することが必要だ。今のような混乱の中では、スポンサーたちもどうすべきか、どこに行くべきか、未来をどう見るべきかがわからない。将来が不確かであることは、良くないことだ」

「選手の大多数は、この混乱から利益を得ていない。我々は前進する必要があるし、確実性が必要だ。全ての人が明確な将来の計画を知り、それに沿って進む必要がある。混乱は誰にとってもいいことではない」

Photo/Getty Images、LIV GOLF、Eiko Oizumi、Golf Australia、Asian Tour

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

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