

鳴物入りでプロ転向したスマイリーの大改革
2021年初め、エルビス・スマイリーが19歳でプロ転向した際、豪州ゴルフ界の「次なる大物」になると予測する人は多かった。
2019年「オーストラリア・ボーイズ・アマチュア選手権」での優勝や、プロ入り直後の2試合でそれぞれ2位と3位に入るなど、輝かしい戦歴を積んできたスマイリーにとって、成功するのは時間の問題と見られていたのだ。
しかし、2024年初めの時点で未勝利だったスマイリーは、いくつかの大きな決断を下した。
コーチ、体力強化&コンディショニングトレーナー、理学療法士、そしてメンタルコーチを一新したのだ。
「白紙の状態からやり直す必要があった。そしてそれ以来、私はどんどん強くなっている」
その結果、2024~25年の豪州シーズン前半で2勝を達成。
10月の「ボウラ&オーデア・ネクサスアドバイザーネットWAオープン(以下WAオープン)」での優勝に続き、11月には「BMWオーストラリアPGA選手権(以下、豪州PGA)」で人生を変える勝利を収めたのだ。
開催100回目を迎えた「WAオープン」でのスマイリーの勝利は、素晴らしいフィニッシュで達成された。
72ホール終了時点で、スマイリーとジャック・カーターが19アンダーで並び、プレーオフへ突入。
1ホール目でスマイリーは、ウェッジでピンそばに寄せ、短いパットを沈めて優勝トロフィーを手にしたのだった。
「豪州PGA」は1929年に初めて開催され、現在はDPワールドツアーと共催されている。
この優勝によりスマイリーは、今後2年間、DPワールドツアーに出場する権利を獲得した。
この大会は雨の影響で54ホールに短縮されたが、最終ラウンドではスマイリーが豪州のLIVゴルフスターであり、2022年「全英オープン」優勝者、さらに「豪州PGA」を3度制したキャメロン・スミスと首位でスタート。
同組には、わずか1打差で追うマーク・リーシュマンもいた。
2019年に「キャメロン・スミス奨学金」を受けたスマイリーが、自身のヒーローとの直接対決に気後れするのではないかと多くの人が予想していたが、プレッシャーに屈するどころか、正確なショットでフェアウェイやグリーンをとらえ続けたスマイリーは、前半で4バーディを奪い、3打差のリード。
後半はティーショットでフェアウェイを4回外す場面もあったが、そのたびにパーセーブを成功させ、スミスに2打差、リーシュマンに3打差をつけて勝利した。
「日曜日は、子供の頃から憧れていたキャム(スミス)やリーシュ(リーシュマン)と一緒にプレーするという、とても特別な日だった」とスマイリーは語った。
スマイリーの両親はテニスプレーヤー

スポーツエリートの家系に生まれ育ったスマイリー
クイーンズランド出身のスマイリーは、トップスポーツ選手としてのキャリアを積むのに十分な資質を備えている。
彼の母、リズ・スマイリーは、豪州最高のテニスプレーヤーの一人で、1985年に「ウィンブルドン女子ダブルス」で優勝。
さらに「グランドスラム混合ダブルス」で3度の優勝を果たした。
シングルスでも、ウィンブルドンで2度、ベスト16に進出している。
父親のピーターもプロテニスプレーヤーだったが、早々に引退し、コーチングに専念。
エルビス・プレスリーに敬意を表し、息子に「エルビス」と名付けたのも彼である。
スマイリーは、才能あるスポーツ選手の両親のもとで育ったことが、自身にとって大きなアドバンテージであることを十分に理解している。
「テニスとゴルフは異なるスポーツだが、トップに上り詰めるために必要な資質を身につけるという点で、多くの共通点がある」と語っている。
彼は今でも両親にアドバイスを求めることがあるが、今回の大きな飛躍は、ミンジー・リー、ミンウー・リー、ハナ・グリーンも指導している西オーストラリアのコーチ、リッチー・スミスのチームに加わったことがきっかけとなっている。
スマイリーは「豪州PGA」での優勝に続き、「ISPSハンダ・オーストラリアオープン(以下、全豪オープン)」で安定したプレーを見せ、5位タイに入賞。
その後、DPワールドツアーの「ネッドバンクゴルフチャレンジ」に出場するため、南アフリカへと向かい、ツアープロとしての旅路を歩み始めた(結果は14位タイ)。

一方、同じ豪州出身のルーカス・ハーバートは、「全豪オープン」の最終ラウンドを首位タイで迎えながら、後半で失速し、スマイリーと並んで5位タイとなった。
しかし、彼はその前のオーストラリアのゴルフシーズンで、3ラウンドを60台で回った「NSWオープン」で3打差の勝利を収めるなどの活躍を見せている。
ゴルフ界の女性を称える賞を創設

「全豪オープン」開催期間中には、初の「R&A女性ゴルフ・チャーター賞」と「女性ゴルフ賞」の表彰式が行なわれた。
注目すべきは、WPGAツアー・オブ・オーストラレージア、および豪州ゴルフ産業評議会の議長を務めるカレン・ラン氏が、イングランドのサリー州フォックスヒルズCCで開催された「女性ゴルフ賞」で「インターナショナル・ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたことだ。
ラン氏はプレーヤー、および管理者として30年以上のキャリアを通じて、豪州、欧州、英国でゴルフに多大な貢献を果たしてきた。
その他、ゾン・リー氏が「地域社会への優れた貢献」で表彰された。
リー氏は「年間最優秀進歩クラブ・施設」にもノミネートされ、創設者アリシア・ネーグル氏は「ゴルフ界で最も影響力のある女性賞」にノミネートされていた。
彼女は1960年に「全英オープン」で優勝した故ケル・ネーグルの孫娘である。
Text/Karen Harding

カレン・ハーディング
(オーストラリア)
メルボルン出身のゴルフジャーナリストで、数々の賞を受賞。女子ゴルフやゴルフ場の環境問題、大衆ゴルフなどに関する執筆に注力。