【2021ライダーカップ】世界ランクトップ10のうち8人がメンバーの米国選抜ドリームチーム
タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンなど世界のトップランカー揃いにもかかわらず、なぜか負け続けてきた過去を持つ米国選抜。2002年以降、9戦2勝7敗だった米国が、今年は欧州に10点差をつけて圧勝した。いったい何が起きたのだろうか?
世界ランキングの差が如実に出た今年のライダーカップ
本来は昨年開催される予定だった「ライダーカップ」。欧米の男子トッププロたちが、プライドをかけて戦う、世界最大のゴルフのイベントで、世界中が熱狂する大会だが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期となり、ついに今年、1日4万人の観客を入れて行なわれた。場所は、米国ウィスコンシン州ウィスリングストレーツ。過去「全米プロ」や「全米シニアオープン」が開催されたメジャー開催でもおなじみのコースである。米国のキャプテンをスティーブ・ストリッカーが務めたが、彼の出身地であり、今も居住する、まさしく「ホーム」。そんな彼が率いる米国選抜が、欧州選抜に10ポイント差をつけて19対9で圧勝した。
「本当に特別な1週間だった。メンバーが2週間前から集まってくれて、いい関係を築きながら準備を重ねてくれた。このチームの一員となることができ、しかも地元のウィスコンシンでの優勝。非常に嬉しく思う」
2002年以降、9回のライダーカップが開催されているが、米国選抜2勝、欧州選抜7勝と圧倒的に欧州が勝ち続けてきた過去がある。タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンら世界で1~2を争う選手がいるドリームチームにもかかわらず、米国は負け続けてきたのだ。世界選抜を相手に戦う「プレジデンツカップ」では圧倒的な強さを見せるのに、なぜか欧州に対しては本来の強さが出せない。負の連鎖が続き、自信を失っていたのかもしれない。
だが、今年の米国選抜は違った。全メンバー12人のうち、20代の選手が8人で、平均年齢は29歳。初出場の選手が6人おり、最年長でもダスティン・ジョンソンの37歳と非常に若いチームだった。そして世界ランクトップ10以内に8人がその名を連ねるという、若くてエネルギッシュな実力派揃い。過去の呪縛に囚われず、「勝利」に向かって全力で積極的に取り組める経験豊富な若者が集まったことが、米国の勝利の要因といえよう。
一方、欧州の平均年齢は35歳。初出場の選手は3人で、最年長はリー・ウエストウッドの48歳だった。その他40代の選手に、イアン・ポールター(45歳)、ポール・ケーシー(44歳)、セルヒオ・ガルシア(41歳)と過去の「ライダーカップ」で活躍してきたベテラン勢が何人もいたが、経験豊富な選手を集めた欧州よりも、イケイケの強いヤングガンを揃えた米国勢に軍配が上がった。世界ランキング上での差がモロにチームの実力差に出てしまったのである。
欧州には世界ランク1位のジョン・ラームがいるものの、2番手はビクトル・ホブランの14位。米国の世界ランク最下位は、スコッティ・シェフラーの21位。一方欧州はベルンド・ウィースバーガーの63位だった。世界ランクの平均は、米国は9位、欧州は31位と桁違いだ。
ガルシアのキャディを長年務めるグレン・マーレー氏は、欧州チームの負けが決まると、ぽつりと一言呟いた。
「今年のアメリカは強すぎる」
そして米国のブライソン・デシャンボーは優勝後に次のように語った。
「今年が新時代の始まりなんだ。僕たちは今後、何かすごいことを成し遂げそうな気がする」
「ライダーカップ」の勢力図が大きな転換期を迎えようとしている。
Text・Photo/Eiko Oizumi