1860年に第1回大会を開催して以来、今年で150回目を迎えた「全英オープン」。
セントアンドリュース開催時の火曜日の夜には過去のチャンピオンたちが集まる「チャンピオンズディナー」が開かれるが、今年はさらに「セレブレーション・オブ・チャンピオンズ」が開催され、歴史と伝統を大いに祝った。
後列左から、イアン・ベーカーフィンチ、ジョン・デーリー、フランチェスコ・モリナリ、ザック・ジョンソン、スチュワート・シンク、ジャスティン・レナード、ポール・ローリー、ローリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、シェーン・ローリー、ダレン・クラーク、ヘンリク・ステンソン、ルイ・ウーストハイゼン、デビッド・デュバル。前列左から、サンディ・ライル、ボブ・チャールズ、パドレイグ・ハリントン、リー・トレビノ、ニック・ファルド、トム・ワトソン、コリン・モリカワ、ジャック・ニクラス、タイガー・ウッズ、ゲーリー・プレーヤー、アーニー・エルス、ビル・ロジャース、マーク・オメーラ、マーク・カルカベッキア。
テーラーメイドのスタッフプレーヤー用のバッグに、時計の文字盤を発見。これは1時50分、つまり「150」回大会を意味しているのだという。
R&Aの建物には、セントアンドリュースの地で生まれ、ここで亡くなった伝説のゴルファー、トム・モリス(「全英オープン」4勝)のプレートが埋め込まれている。
リー・トレビノ(左)とゲーリー・プレーヤーが大爆笑。この2人はレジェンドであると同時に、ムードメーカーでもある。
「セレブレーション・オブ・チャンピオンズ」で一緒に回っていた昨年の「全英女子オープン」チャンピオンのアナ・ノルドクイスト(右)と、コリン・モリカワ(右から2番目)、中島啓太(左)。
ニック・ファルドの全盛期を支えていた、キャディのファニー・スネソン(右)とともに。
ヘンリク・ステンソン(左)とルイ・ウーストハイゼン。大会後にステンソンはLIV行きを表明したが、この2ショットは、つまりそういうことだったのだ。
チャンピオンたちのイベントで、同組で4ホールを回ったリー・トレビノ(左)とタイガー・ウッズ。
前年度のチャンピオン、コリン・モリカワが大会前にクラレットジャグをR&Aに返還。
ゴルフの伝統と歴史を祝うイベントに過去のチャンピオンたちが集結!
ディフェンディングチャンピオンのコリン・モリカワの組で、「アジア・パシフィックアマチュア」チャンピオンの中島啓太(右)、「全英女子オープン」チャンピオンのアナ・ノルドクイスト(右から2番目)らもプレー。
最終組でスタートした、マキロイ、タイガー、ジョージア・ホール、リー・トレビノの組にジャック・ニクラス(右)もやってきて、豪華な顔ぶれに。
LIVゴルフCEO のグレッグ・ノーマンと、LIVゴルファーのフィル・ミケルソンの、2人の「全英オープン」チャンピオンは、「セレブレーション・オブ・チャンピオンズ」と「チャンピオンズディナー」への参加を拒否された。
クラレットジャグに刻まれた、自分たちの名前に見入るパドレイグ・ハリントン(中央)、とフランチェスコ・モリナリ(右)。左はスコットランド出身の女子プロ、カトリオナ・マシュー。
「全英オープン」開催週の月曜日の午後(練習日)、150回記念の今大会の歴史と伝統を祝う「セレブレーション・オブ・チャンピオンズ」が開催され、ゲーリー・プレーヤー、トム・ワトソン、ニック・ファルド、タイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、コリン・モリカワら錚々たる面々のチャンピオンたちが集結。
「全英女子オープン」チャンピオンのアナ・ノルドクイストやジョージア・ホール、中島啓太などのアマチュアや、障害者ゴルファーらも参加し、老若男女のチャンピオンたちが4ホールのエキシビションを楽しんだ。
注目は最終組のタイガー、マキロイ、トレビノ、ホールの「チーム・ウッズ」だったが、首位と3打差の2位タイで終了。
ニック・ファルド、ジョン・デーリー、ルイ・ウーストハイゼン、ザック・ジョンソンの「チーム・ファルド」が優勝した。ちなみにこのチームは全員が、聖地での「全英」で優勝した選手だ。
なお、「全英オープン」チャンピオンのグレッグ・ノーマンとフィル・ミケルソンは、R&Aから両イベントへ参加しないよう求められた。
LIVゴルフと深く関わる彼らの参加により、ゴルフの歴史と伝統を純粋に祝うイベントが台無しになることを恐れてのことである。
ミケルソンはR&Aから「君が参加するのはいい考えではないと思うが、それでも参加したいならどうぞ」と言われたそうだが、「大ごとにはしたくなかったので、参加しなかった。それでいいんだ」と語った。
アメリカで3人目のゴルフの聖地での名誉
ジャック・ニクラス
「セントアンドリュース名誉市民」に選ばれたジャック・ニクラス(右)。その式典に出席するため、セントアンドリュースを訪れた。左はバーバラ夫人。
セントアンドリュースの街中で、パレードが行なわれた。車にはニクラス夫妻が乗り込み、沿道ではゴルフファンたちに囲まれて祝福された。
メジャー18勝を挙げ、「全英オープン」で3勝を飾っているジャック・ニクラス。
アメリカ人としてはベンジャミン・フランクリン、ボビー・ジョーンズに次ぎ、3人目の「セントアンドリュース名誉市民」に選ばれ、「全英オープン」で引退した2005年以来、17年ぶりにセントアンドリュースの地を訪れた。
「過去、2人のアメリカ人しか選ばれていない名誉を受け、とても光栄だ。セントアンドリュースに帰ってこられて嬉しい」
彼はセントアンドリュースで3回のうち2回、優勝しているが、同地の攻め方を尋ねられると、次のように語った。
「セントアンドリュースは、ミスするとしたら左がいい。時々左がダメな時もあるが、ほとんどのトラブルは右サイドで起きる。OBやバンカーなどのトラブルは、右サイドにあるんだ。バンカーに入るクラブで打たないこと、グリーンに乗せることだ」
ボビー・ジョーンズはいつも「セントアンドリュースで勝たなければ、ゴルファーとしてやるべきことを達成したとは言えない」と言っていたという。
ニクラスもタイガーもこの地で2勝を挙げているが、聖地で勝つことこそ、本物のチャンピオンの証なのだ。
記念すべき150回大会を誰にも邪魔されたくない!
R&A最高責任者 マーティン・スランバーズ氏
R&A最高責任者のマーティン・スランバーズ氏は、記者会見で「今年は29万人の観客が来場する」とコメントした。
過去の優勝者たちのイベントから排除されたLIVゴルフCEOのグレッグ・ノーマン。
大会前日の記者会見に出席したマーティン・スランバーズR &A最高責任者は、LIVゴルフ、及びそれに参加しているプロゴルファーたちについて言及した。
「プロゴルファーはどこでプレーし、どこで賞金を受け取るか、自分で決める権利がある。それについてはなんの問題もない。だが、センチュリオンやパンプキンリッジ(LIVゴルフの2大会)で見られたモデルは、スポーツ全体の長期的な利益にはならないし、完全に金によって動かされている。ゴルフというスポーツを特別なものにしている実力主義の文化やオープン競技の精神を台無しにしていると思う」
また、過去のチャンピオンたちを集めて行なわれた4ホールのイベントや、チャンピオンズディナーで「全英オープン」2勝のグレッグ・ノーマンやフィル・ミケルソンを排除したのは(ミケルソンは自ら辞退したということもあるが)、世界最古のゴルフトーナメントの会場で、これまで築き上げてきたゴルフの歴史と伝統を祝福するにあたって、妨げとなると判断したからだ、とスランバーズ氏は説明した。
今年はLIVゴルファーたちも出場することができたが、来年以降については予選免除や出場資格の基準を見直す可能性もあるという。
現在、LIVゴルフは世界ランキングのポイントを獲得すべく、申請中だが、「3日間の大会で、しかも予選落ちがない。
そんなイベントではポイントはもらえない」という見方が強い。
セントアンドリュースに野球界のスターが登場
平成の怪物が、アジアの怪物を直撃!
長年にわたり「全英オープン」のTV解説を務め、今年で引退した青木功(右)と元プロ野球選手の松坂大輔さん。
リラックスムードの中、インタビューは行なわれた。
「平成の怪物」の異名をとる、元プロ野球選手の松坂大輔さんが、大会前に松山英樹に直撃インタビュー。
8年前に知り合い、ゴルフも一緒にやったことがあるそうだが、セントアンドリュースで2人の対談が実現した。
「引退していなければ、この仕事もできなかったですし、しかもセントアンドリュースに来れるとは思ってなかったので、本当に幸せですね」
以前、タイガー・ウッズが「ダンロップフェニックス」に出場していた際、プロアマ戦で一緒に回ったことがあった松坂さんだが、全盛期のタイガーをオーバードライブしたこともあった、と振り返った。
「たぶん320ヤードくらいは飛んでたんだと思いますが、めちゃくちゃ嬉しかったですね。タイガーが僕のボールが飛んでいるのを見て、こうやってガッツポーズして……一生忘れられません」
現在は70台で回ることもあるそうだが、今後はハンデを取得し、健康状態を維持しながら、シニアになったらプロゴルファーを目指すことも考えているという松坂さん。
野球界では、長谷川滋利が2019年にチャンピオンズツアー(米シニアツアー)デビューを果たしたが、8年後には松坂さんもプロゴルファーになっているのだろうか?
安倍晋三元首相の死に半旗の日の丸
練習日の数日だけだったが、日の丸は「半旗」に。
7月8日、奈良市内で銃撃された安倍晋三元首相の死去のニュースは、世界中を駆け巡り、ゴルフの聖地にもその悲報は届いた。
練習日の数日だけではあったが、1番ホール奥のギャラリースタンドに設置された国旗のうち、日本の国旗は半旗となり、追悼の意を表していた。
安倍氏はドナルド・トランプ前米大統領が来日した際、松山英樹と霞ヶ関CCでプレーしたこともあり、トランプ氏にドライバーを贈るなど、ゴルフ愛好家でもあった。
ネッシーが聖地をラウンド?
17歳の女子学生がゴルフバッグに描いた世界観
カラフルなデザインが一際目を引く、キャロウェイの「全英オープン」仕様・スタッフプレーヤー用バッグ。ヘッドカバーにもバグパイプ演奏者のイラストが刺繍されている。写真は、キム・シウー。
コース周辺のゴルフショップにディスプレーされていた、イラストの原画とキャディバッグ。
コンテストで優勝できなかった候補作品は、セントアンドリュースの街中に展示されていた。
キャロウェイのカラフルなスタッフバッグを見て、興味を覚えた方もいるだろう。
実はこれ、セントアンドリュースにあるセント・レナーズスクールという寄宿学校の17歳の女子学生がデザインしたものだ。
キャロウェイとセントアンドリュースとのコラボで「ビッグ・バッグ・トレール」プロジェクトを立ち上げ、学生たちから150回記念大会用のスタッフプレーヤー用バッグのデザインを募集。
最終的に10作品に絞られ、彼女の作品が優勝したというわけだ。作品名は「ネッシーのラウンド」で、彼女はデザインについて次のように語っている。
「セントアンドリュースの街を友達と歩きながら、いろいろ写真を撮ってたんですが、最も大事なのはオールドコースの18番の有名なスウィルカン橋だと思いました。この橋と港周辺のカラフルな家、聖堂、海を描きたい、と」
そして、スコットランドといえば、ネッシーということで、スウィルカンバーンを泳ぐネッシーを描いた。
また女子学生らしく、ジッパー部分にはアイスクリームのデザインが施されている(セントアンドリュースには、アイスクリーム屋が点在)。
セントアンドリュース17番は名物だらけ!
グリーン脇にある壁の周辺からアプローチするミケルソン。時にはこの壁に当てて、そのハネ返りを利用して寄せる、という方法をとることもある。
ホテル横の看板越えが有名な17番ホールのティーショット。写真はローリー・マキロイ。
セカンド地点エリアには、セントアンドリュース・オールドコースホテルに隣接する有名なパブ「ジガーイン」があり、大会中はここで酒を飲みながら観戦する人が大勢いる。
日本では「トミーズバンカー」としておなじみの、深くて難しいロードバンカー。1978年「全英オープン」で中嶋常幸は首位タイだったが、このバンカーから脱出に4打を要し、9を叩いたことで脱落したというバンカーだ。写真はトニー・フィナウ。
セントアンドリュース・オールドコースは名物ホールも多いが、中でも「ロードホール」と呼ばれる17番ホールは、有名な障害物も多く、見どころがいっぱいだ。
オールドコースホテル越えのティーショットや、グリーン周りのトミーズバンカー、壁、フリードロップできない砂利道など、一度は敢えて挑戦してみたい障害物ばかり。
このホールを体験しただけでも、満足感を味わえるかもしれない。
R&Aでもエコを推進!
アメリカから来たボランティアの男性も、給水。「これはいいシステムだね」。
「全英オープン」の会場内にはこのような給水所があり、無料で水を汲むことができる。
R&Aは、数年前からペットボトルの水を販売するのを中止し、ロゴ入りのステンレスボトルを7ポンドで発売している。
シンプルでお土産にも最適だ。
チャンピオンの足元は人気のハリスツイード
キャメロン・スミスもハリスツイードのドライジョイズを着用。サイドには千鳥格子柄ツイードが施されており、いかにもスコットランド風。
スコットランドといえば、ツイード(特にハリスツイード)が人気だが、フットジョイは「ドライジョイズ・プレミア・パッカードwith ハリスツイード®️」を販売。
ゴルフの聖地での記念大会に、スコットランドの代表的な生地の一つである伝統的なハリスツイードを使用した特別なコレクションが、「全英オープン」で戦う選手たちの足元をサポートし、大会を盛り上げた。
ハリスツイードオリジナルシューズバッグもおしゃれ!
Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/R&A via Getty Images, Getty Images