世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第15回はルワンダ共和国を紹介する。
ルワンダ共和国
西はコンゴ、北はウガンダ、東はタンザニア、南はブルンジと国境を接する内陸国で、イギリス連邦の加盟国。赤道より少し南に位置し、東アフリカの大湖地域にある。
ルワンダの悲劇「ジェノサイド」から立ち直り、急激に経済成長を遂げている「アフリカのシンガポール」
1994年に起きた「ルワンダの大虐殺」でライオンも殺され絶滅。その後南アフリカから寄贈され、アカゲラ国立公園に放たれた。
首都キガリから車で約3時間の火山国立公園。その熱帯雨林には絶滅危惧種のマウンテンゴリラが生息している。
アカゲラ国立公園内には、ゾウやキリン、バッファロー、シマウマなどが生息。
熱帯雨林や火山、サバンナが広がる東アフリカの小国の悲しい歴史
別名「千の丘の国」と呼ばれるルワンダは、いくつもの丘や谷があり、水と緑の豊かな国。
マウンテンゴリラやゴールデンモンキー、チンパンジーなどの霊長類のほか、ゾウやキリン、シマウマ、ライオンなどが生息している国である。
また、1300万人以上の人々が住む、世界で15番目に人口密度の高い国としても知られ、首都キガリには100万人以上のルワンダ人が住んでいる。
ルワンダといえば、2006年に公開された映画『ホテル・ルワンダ』を思い出す人もいるだろう。
1994年に起きたルワンダ国民間の争い(ツチ族とフツ族)で、人口800万人のうち、100万人前後が大量に虐殺された悲劇(ジェノサイド)を描いたものだ。
あれから約30年。現在は二度と悲劇を繰り返さないために、部族という概念を捨て、平和を目指しており、治安のよい国として認識されている。
また、首都キガリはゴミひとつ落ちていない、美しい街並みを誇っており、目覚ましい経済成長を遂げているのだ。
マウンテンゴリラがルワンダの観光業を支える
1994年の虐殺によりルワンダのGDPと経済は著しく落ち込んだが、近年においてはドイツ、アメリカ、中国が主要輸出国となっており、経済は著しく成長。
日本のNGOも活躍しており、ルワンダ経済に一役買っているのだ。
自給自足の農業がGDPの約3分の1を占め、じゃがいもや小麦、とうもろこし、キャッサバ、豆などを主に栽培。
主要な輸出用商品作物にはコーヒー、紅茶などがあり、バナナは最大の輸出作物となっている。
また2000年代からは、観光業が盛んで、火山国立公園の「マウンテンゴリラトレッキング」は、世界でも3か所でしか体験できない希少なもの。
世界で1000頭ほどしかいないという、絶滅危惧種のマウンテンゴリラの半数がビルンガ山地に生息しているが、一人当たりの入山料は1500ドル(約20万円)とかなり高額。
ただし、マウンテンゴリラを100%の確率で見ることができ、観光客の必見スポットとなっている。
その他の2つの国立公園(ニュングェ森林国立公園・アカゲラ国立公園)でも野生動物を観察できるサファリツアーがあり、重要な収入を生み出している。
米国、EU、日本などがルワンダの交通網の発展に貢献しており、キガリと他の主要都市、街を結ぶ交通路は整備されている。
ルワンダの発展と平和のためのスポーツ
ルワンダでは、コーヒーとともに紅茶も主要輸出産品として重要視されている。アフリカ大陸では5番目の生産量。
首都キガリは人口密度が高い都市として知られ、約100万人が生活している。丘の上には近代的な建物も。アートの街としても知られている。
キガリに住む庶民の生活風景。世界で15番目に人口密度の高い国で、キリスト教が最大の宗教だ。
1994年の「ルワンダの大虐殺」(ジェノサイド)の犠牲者を追悼する「ニャマタ虐殺記念館」は首都キガリの南30キロに位置する元教会。
ルワンダのポール・カガメ氏は、2000年に就任した第5代大統領。ルワンダ愛国戦線(政党)に所属。2022年11月にエジプトで行なわれたCOP 27に出席した(写真)。
ルワンダではクリケットも盛ん。写真は今年1月に行なわれた「ICC女子U19 T20ワールドカップ」に出場したルワンダの選手たち。
ルワンダにはスポーツ発展政策があり、「ルワンダの発展と平和構築のための手段としての、スポーツの促進」を目的としている。
クリケットやバレーボール、バスケットボール、陸上競技、サッカーなどが人気で、自転車競技も人気上昇中。
1984年に初めてオリンピック代表団を送り出し、2004年に初めてパラリンピックに参加した。
ゴルフに関してはまだまだ発展途上の段階。
2つのゴルフ場があり、観光業の発展のためにゴルフに注力している。
また、ゴルフアカデミーではゴルファー育成のためのプログラムもあり、徐々に関心が高まっている。
キガリゴルフリゾート&ヴィラズ
Kigali Golf Resort & Villas
都会の喧騒から離れた緑のオアシス
『フォーブス』誌に「最も訪れる価値のある場所」として評価されたこともある、キガリゴルフリゾート。
www.kigaligolf.rw
ゲーリー・プレーヤーが改修
「千の丘の国」の秘宝
大きなグリーン、計画的に配置された池やバンカーがあり、戦略性を持ってプレーすることが必要。
クラブハウスのレストランでは、ホットドッグやサンドイッチ、ハンバーガー、サラダ、スープなどを楽しめる。
午前6時から午後6時までオープンしている、ルワンダ初のゴルフショップがある。
エコロジーに配慮したルワンダ唯一の18ホール
「ソース・ドゥ・ナイル(ナイルの源流)」の名で1986年に建設され、1999年にオープンしたこのコースは、のちにゲーリー・プレーヤーが改修。
6595メートル、パー72の18ホールのコースに変貌を遂げ、2021年に「キガリゴルフリゾート&ヴィラズ」として再オープンした。
ルワンダに存在する18ホールのコースはここだけだ。
65エーカーのクラブには、コースの他に練習場やテニスコート、ヘルスクラブもあり、ルワンダ初のゴルフショップも完備している。
男女、ジュニアも含む450名のメンバーがおり、ビジターでもプレーできる。
息を呑むほど美しい景色の中に広がっているコースだが、ショットの精度が求められる難しいレイアウトになっているのが特徴。
危険とご褒美が隣り合わせのチャレンジングなコースとなっている。
また環境保全にも注力しており、多様な植生、動物を見ることができる。
Photo/Kigali Golf Resort & Villas
ファルコンゴルフ&カントリークラブ
Falcon Golf & Country Club
夕日の美しいゴルフ場
ムハジ湖岸に位置するファルコンG&CC。四角いグリーンもある、ユニークなコースだ。
https://www.falcongolfrwanda.com/
ムハジ湖のほとりに広がるバードウォッチングも楽しめるコース
ハゲハゲのグリーンは決していい状態とはいえないが、十分楽しめる。
コース内には、このような傾斜地も多い。
夕日の美しさを堪能しながら、クラブハウスでは料理を楽しみたい。
コンペも頻繁に開催されており、9ホールのコースを2周する。
ルワンダのトッププレーヤーが造った9ホールのコース
ルワンダのトッププレーヤーで、投資家のイノセント・ルタム氏によって開発されたファルコンゴルフ&CCは、もともとベルギーの植民地時代に建てられた家屋跡地に広がる9ホールのゴルフ場。
カヌーに乗り、釣りをする地元住民のいるムハジ湖のほとりに面しており、美しい景色が広がっている。
キガリ空港からは車で約40分の距離。
夕暮れ時には美しい夕日を堪能しながら、料理を楽しむのがオススメだ。
また、スタッフやゴルファーたちもフレンドリーで、エコにもフレンドリー。
コース内ではプラスティックティーの使用は禁止されている。
Photo/Falcon Golf & Country Club
Photo/ Compliments of Rwanda Development Board, Gorilla Nest One and Only Lodge,Kigali Golf Resort, Falcon Golf Club
Text/Susanne Kemper
スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。