• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. 20歳1ヶ月17日でPGAツアー初優勝
    アジアの新星、...

20歳1ヶ月17日でPGAツアー初優勝
アジアの新星、キム・ジュヒョン

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

最終日、1イーグル、8バーディ、1ボギーの61でラウンドし、PGAツアー初優勝を遂げたキム・ジュヒョン。

 2018年にプロ転向し、アジアンツアーで2勝を遂げ、2020〜2021年シーズンの賞金王に輝いた、韓国の20歳、キム・ジュヒョン。彼は今年、「AT&Tバイロン・ネルソン」17位、「全米オープン」23位、PGAツアーとDPワールドツアー(欧州ツアー)の共催試合「ジェネシス・スコティッシュオープン」3位、「全英オープン」47位タイなど、PGAツアーでの成績を確実に積み重ね、同ツアーのテンポラリーメンバーの資格を「全英オープン」後に獲得した。そしてその3週間後、フェデックスカップ・レギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」でPGAツアー初優勝を飾り、晴れてPGAツアーのシード権を獲得したのだ(2024年まで)。

 なお、今回の優勝ではさまざまな新記録、珍記録を樹立している。初日のスタートホール(パー4)で8を叩いたが、ダブルパー、あるいはそれよりも悪いスコアを大会初日の1番ホールで記録し、優勝したのは彼が初めて。また、20歳1ヶ月17日でのPGAツアー初優勝は、ジョーダン・スピース(2013年「ジョンディアクラシック」優勝)に次ぐ、史上最年少優勝だ。さらに、最終日にマークしたフロント9の27は、2018年「ウィンダム選手権」でブラント・スネデカーが記録したスコアに次ぎ、ツアー史上2番目に良い記録だ。

「『スコティッシュオープン』前は、コーンフェリーファイナルに進めるだけの十分なポイントを稼ぎたいと思っていたんですが、その大会で3位に入り、『全英オープン』でも予選通過し、『3M選手権』『ロケットモーゲージクラシック』、そして『ウィンダム選手権』と5週連続で試合に出続けたんです。まるで3ヶ月経過したかのような感じですが、その間にいろんなことが変わりましたね」

「今年は2週間しか自宅に戻っていませんし、本当はこのあと自宅に戻る予定でしたが、フェデックスカップ・ファイナルの3試合に出るので、最終戦の『ツアー選手権』まで出場できれば、8週連続となります。ゴルフばかりの日々ですが、楽しもうと思いますし、PGA ツアーで戦えることを誇りに思います」

 彼は今年、春先までは主戦場のアジアンツアー(初戦のサウジアラビアを含む)を転戦し、春以降は欧米に戦いの場を移し、「マスターズ」以外のメジャーに出場した。20歳の彼にとっても、過酷な参戦スケジュールではあったが、「全米プロ」で予選落ちをした以外は全て予選通過を果たし、着々とポイントを積み重ねた。そして、晴れてPGAツアーメンバーの仲間入りを果たし、フェデックスカップランキングで34位に浮上。来週から始まるフェデックスカップ・ファイナル2試合で上位に食い込めば、30位以内のエリートのみが出場できる「ツアー選手権」への出場権も得て、その先には「プレジデンツカップ」への出場も視野に入ってくるだろう。世界選抜チームのトレバー・イメルマンキャプテンも、彼の動向には注目しているようで、「全英オープン」の練習ラウンド中も、彼と言葉を交わし、連絡先の交換などもしたようだ。

「ゴルフを初めて以来、ずっと『プレジデンツカップ』は観てきたし、是非、彼のチーム入りを果たしたいですね」

 過去14回のうち、世界選抜チームはたった1勝しか挙げていないが、その敗北の裏には、選手間の「言葉の違い」「文化の違い」「食事の違い」がいつもつきまとう。だが、キムにはそのような心配は無用だ。彼は韓国で生まれ、オーストラリアやフィリピン、タイなど、5カ国に引っ越し、生活してきた経験がある。英語も話せるし、文化の違いにも柔軟に対応できるのは強みだ。

 機関車トーマスが好きで、自ら「トム」と別称を名付けたというキム・ジュヒョン。彗星の如く現れたアジアの新星「トム・キム」に、注目したい。

関連する記事