• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. 海外ツアーへ積極的に出場する
    日本人選手たち

海外ツアーへ積極的に出場する
日本人選手たち

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Asian Tour

2023年のアジアンツアーメンバー。香妻陣一朗、木下陵介の姿も見える。

 日本男子ツアー(JGTO)が開幕戦の「東建ホームメイトカップ」を迎えるのは3月末。それまでは推薦をもらったり、あるいは自分で取得した資格を活かして、海外遠征に出かける選手も多い。

 先週は中東で2つの大会が開催されていた。一つは、DPワールドツアー(欧州ツアー)の「ラス・アル・カイマ選手権(アラブ首長国連邦・ドバイ)」、もう一つはアジアンツアーの開幕戦「サウジ・インターナショナル(サウジアラビア・ジェッダ)」である。DPワールドツアーの試合には、DPワールドツアーメンバーの久常涼、比嘉一貴、星野陸也、岩﨑亜久竜が出場。久常以外の3選手は、昨年のJGTO 賞金ランキング上位3名で、今年からDPワールドツアーの出場資格を得ている。一方、「サウジ・インターナショナル」には谷原秀人、香妻陣一朗、金谷拓実、木下陵介、岩田寛、稲森佑貴、池村寛世の7名が出場した。もともと星野、岩﨑は「サウジ・インターナショナル」に出ることも考えていたが、DPワールドツアーの大会への出場を希望しており、ウェイティングリストの上位で、出場が繰り下がるのを待っていた結果、2人とも出場が可能になったというわけだ。

 さて、彼らがこうして海外遠征に積極的なのは、いくつか理由がある。JGTOの開幕戦「東建ホームメイトカップ」が始まるまでの間、試合感を養いたいということ。そして、昨夏からJGTOツアーの大会への世界ランキングポイントが減少したため、海外のビッグイベント(メジャーやWGCイベント)などに出場するには、国内ツアーを戦っているだけでは世界ランキングが上がらない。そこで少しでもランキングポイントの高い試合に出場したいという理由だ。また、海外のレベルの高い選手たちの出場している試合に出て刺激をもらい、少しでも自分のスキルアップを目指したいという向上心からでもある。

日本でもおなじみのスコット・ビンセント(左)と谷原秀人。ビンセントは昨年のアジアンツアー「インターナショナルシリーズ」で賞金王に輝き、今年のLIVゴルフリーグの出場権を獲得している。

 先週のサウジアラビアとドバイの試合のポイントを考えると、アジアンツアーの試合の方がDPワールドツアーの試合よりも高かった。かつては世界ランキングの上位を占めていたLIVゴルファーたちが、多数出場していたからだ。ダスティン・ジョンソンは腰痛のため欠場したものの、キャメロン・スミス、ブライソン・デシャンボー、パトリック・リード、ブルックス・ケプカ、セルヒオ・ガルシア、エイブラハム・アンサー、ババ・ワトソン、フィル・ミケルソン……などなど、知名度の高いトップランカーたちがこぞって出場していた。

「サウジ・インターナショナル」に出場したブライソン・デシャンボー。コブラのクラブ契約も昨年末で終わり、テーラーメイドのステルス2ドライバーを使用していた。

また、サウジアラビアの賞金総額は5ミリオンドル(約6億6000万円・優勝賞金1ミリオンドル/約1億3200万円)だったので、賞金額でもDPワールドツアーの賞金額を上回っていた。「ラス・アル・カイマ選手権」の賞金総額は2ミリオン(約2億6000万円)、優勝賞金はサウジの大会の約3分の1の5000万円である。それでもDPワールドツアーメンバーである4人の選手は、少しでもDPワールドツアーランキングで上位に入り、今後のポイントや賞金の高い試合に出場できるよう、そして世界のビッグイベントへの出場を目指してDPワールドツアーに出場することを選んだ。

「サウジ・インターナショナル」を選んだ選手は、賞金も魅力だろうが、試合のない日本を離れ、トップレベルの選手たちと戦いながら、試合感を養い、レベルアップをしたい、そして世界ランキングポイントを獲得したいというのが大きな目的だ。これは先週の「サウジ・インターナショナル」に出場していた日本人選手たちが口をそろえて語っていたことである。逆をいえば、DPワールドツアーの試合への出場権を得られない選手で、海外で戦いたい選手にとっては、アジアンツアーへの参戦の方が可能性が高い、というのも現実だ。(もちろん、アジアンツアーへの出場資格がなかったり、あるいは推薦をもらえないと、アジアンツアーへの出場も無理な話なのだが……)

香妻陣一朗は昨年の11月、アジアンツアーのインターナショナルシリーズに2戦出場し(モロッコ・エジプト)、アジアンツアーのシード権を確保。「日本をメインには戦いたいと思いますが、日本の試合がない時などにアジアンツアーに出たいと思ったので、シード権が取れてよかったです」と語っていた。そして今週、池村は「アジアンツアーのQTを受けたんですが、ダメでした。アメリカにいくのが自分の目標だったんですけど、アジアンツアーのインターナショナルシリーズの賞金王はLIVにいける、と。LIVに出られるんだったら、それでもいいと思っています。確実に日本よりレベルが高いし、出ている選手のレベルもすごい。そこでやれるなら、挑戦したいと思う。今まではアメリカだけに縛られていたけど、どこかしらチャンスがあるなら、挑戦した方がいい。日本で早めに勝てて、海外に出られるチャンスがあるなら、海外にも出て行きたい」と語っている。

昨今のLIVゴルフの出現もあり、世界のゴルフ界は大きく変わりつつある。選手たちの戦いの場は、欧米の伝統的なツアーや大会だけではなく、アジアやゴルフ発展途上国の中東・アフリカまでグローバルに拡大しているのだ。そんな潮流に乗り、日本の若手男子選手たちは、一つの枠に縛られることなく、世界に挑戦しようとしている。世界の大舞台に出ていくためには、国内だけにとどまっていては不可能。韓国やタイの選手たちに多く見られるように、日本人選手たちも戦いの場を求めて、海外の試合に出場する選手もさらに増えてくるに違いない。

「レベルの高い選手たちが出ているLIVゴルフに出られるなら、それでもいい。」と池村。
今年のアジアンツアーのシード権を獲得し、日本のオフシーズンでも試合に出ることができて嬉しい、と香妻。

関連する記事