• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. ミッシェル・ウィ・ウェストが引退した「全米女子オープン」で<...

ミッシェル・ウィ・ウェストが引退した「全米女子オープン」で
初優勝したハワイの大器、アリセン・コーパス

Text/Eiko Oizumi
Photo/USGA

「全米女子オープン」で、ツアー初優勝を飾ったハワイ出身のアリセン・コーパス。

 女子メジャー史上、初めてペブルビーチで開催された「全米女子オープン」で優勝したのは、ツアー2年目のハワイ出身のアリセン・コーパス(25歳)。4日間を通じて唯一アンダーパーを記録した選手として、メジャーでツアー初優勝を飾った。ロレックスランキング(世界ランキング)は6位に浮上、レース・トゥ・CMEランキングでは8位に浮上している。

「本当に信じられない。これは私が夢見たこと。それと同時にこうなるとは思っても見なかったことです。両親が揃って来てくれたこともとても特別。ここには家族や友達がいっぱい来てくれていて、叔母や叔父、従兄弟、ボーイフレンドの家族、大学のチームメイト……本当にたくさんの人たちとみんなでペブルビーチという歴史的なコースにいるというのは本当に素晴らしいことね」

 最終日、首位の畑岡奈紗に1打差の2位でスタートしたコーパスは、6バーディ、3ボギーの69をマーク。3つスコアを伸ばし、通算9アンダーで回って、2位タイのチャーリー・ハル、シン・ジエに3打差をつけて優勝した。アメリカ人ゴルファーで優勝したのは2016年ブリタニー・ラング以来初めてだ。また、「全米女子オープン」でツアー初優勝を飾った選手としては、20年ぶりとなる。一方、最終組でコーパスとプレーした畑岡は1バーディ、5ボギーとスコアを4つ落とし、76を叩いて通算3アンダーの4位タイに終わった。

最終日、最終組で畑岡奈紗(左から2番目)と2サムで戦ったコーパス(右)。8番ホールにて。

「タイガー(ウッズ)はこの場所で、他の選手たちに圧勝した。本当に特別な場所なの。今から20年後とか30年後になった時に、全米女子オープンで優勝したことの大きさを実感することになると思うけど、それがペブルビーチでの優勝なら、こんなに素晴らしいことはないわ」

 ペブルビーチは過去、「全米オープン」や「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」など、男子のメジャーやPGAツアーの試合を開催してきたが、今年初めて女子のメジャー大会を開催。すでに次回のこの地での「全米女子オープン」は2035年に開催されることが決まっている。

 さて、アリセン・コーパスとはどんな人物か、ここでご紹介しておこう。

 フィリピン人の父で歯科医のマルコスさんと韓国人の母メイさんの間に誕生。ハワイ・オアフ島の出身で、過去、LPGAツアーも開催したことのあるカポレイGCの7番ホールの左脇に住んでいるという。オバマ元大統領やミッシェル・ウィ・ウエストが通った、プナホウ高校を卒業。オバマ元大統領からは、優勝直後にSNSを通じて「ハワイの仲間、アリセン・コーパス。全米女子オープン優勝おめでとう。あなたは我々の誇り。カポレイでのプレーを楽しみにしている」とメッセージが贈られた。

父のマルコスさん(左)と母のメイさん(右)と優勝トロフィを持って記念撮影。

 ゴルフとの出会いは、ゴルフ好きの父に導かれ、兄のジョージとともに4〜5歳の時に始めたのがきっかけ。6歳の時、マルコスさんに「もし私にゴルフをさせたいなら、叱らないで」と言ったという。誰にも強要されることなく、自分でゴルフに取り組むメンタルがすでに6歳であったのだ。7歳でハワイのジュニアプログラムに参加しはじめ、日本ツアーでもおなじみだったデビッド・イシイに師事していたこともあった。

 2008年には「全米女子アマ・パブリンクス」に10歳3ヶ月9日で出場し、それまでミッシェル・ウィ・ウエストの持っていた最年少出場記録を更新。コーパスはもちろん彼女に憧れており、地元のビッグスターとして理想の存在だった。

「彼女と私を比べるなんて、そんなことしたことないですね。私はいつも、自分の名前を残したいと思うだけ。2014年のパインハーストでの彼女の優勝(全米女子オープン)が心に残っています。彼女は私にとって、本当に大きなインスピレーションを与えてくれた選手です」

2014年「全米女子オープン」で優勝し、今年の今大会で引退したミッシェル・ウィ・ウエスト。彼女もコーパス同様、ハワイ・プナホウ高校を卒業している。

 昨年からLPGAツアーメンバーとして戦っているコーパスだが、今年に入り、「全米女子オープン」終了時点までの13試合で、予選落ちは2回のみ。3月にはシンガポール開催の「HSBC女子世界選手権」に出場し、最終日にコ・ジンヨン、ネリー・コルダという世界ランク1〜2位とプレーし、3位タイに入った。また「シェブロン選手権」4位タイ、「KPMG全米女子プロ」15位タイとメジャー2試合でも上々の成績を残している。平均飛距離は約252.65ヤードと、飛ぶ方ではないが(116位)、フェアウェイキープ率は84.8%で6位、パーオン率でも71.97%(13位)と高い確率を誇る、ショットメーカーである。

 今大会最終日にも、精度の高いショット力がものをいい、難コースながらも冷静にショットをピンに絡めながら、6つのバーディを奪取した。1番でバーディ発進し、最初の3ホールで2つスコアを伸ばして畑岡奈紗を抜いたが、その後も並ぶことはあっても、畑岡に抜かれることはなく、猛追していたチャーリー・ハルに並ばれることもなかった。

「リーダーボードはあまり見ていませんでした。自分のゲームに集中していましたね。メンタルコーチのビル・ネルソンと今朝ちょっと話し、落ち着いて臨むようにしていたんです。ステディにプレーすることだけを考え、動作が速くなってしまわないように、全てのことをスローダウンして、プレーを楽しんでいました」

 そしてキャディのジェイ・モナハンさん(PGAツアーのコミッショナーとは無関係。ジェニファー・カプチョの夫)の存在も大きいという。昨年の1月末からバッグを担ぎ、約1年半が経過しているが、とても物静かだが、必要な時に何をいうべきかを知っており、兄のような存在だと語った。

 なお優勝賞金は、女子メジャー大会最高額の2ミリオン(約2億7600万円)。その他、ミッキー・ライトメダル、優勝トロフィの1年間保有、今後10年間の「全米女子オープン」出場権と、今後5年間のその他のメジャー(「シェブロン選手権」「KPMG全米女子プロ」「AIG全英女子オープン」「アムンディ・エビアン選手権」の4大会)出場権、5年間のLPGAシード権を獲得した。

 ハワイの巨星は引退したが、新たなスターが誕生。女子ゴルフ界に数々のセンセーションを巻き起こしたミッシェル・ウィ・ウエスト。そんな彼女に続くハワイ期待の星の活躍に注目だ。

関連する記事