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「ライダーカップ」を観戦していなかったら
プロゴルファーにはなっていなかった
ジョン・ラーム

Text/Eiko Oizumi
Photo/ Rolex/Thomas Lovelock、Thomas Laisne、
Thanks to Rolex

2018年の「ライダーカップ」でティーショットを放つ欧州チームのジョン・ラーム。

 過去2回、「ライダーカップ」に出場し、今年で3回目を迎えるジョン・ラーム(スペイン)。2018年に初めて出場した時は、欧州チームが優勝し、その一員に。2020年大会では米国チームに大敗を喫したが、今年、イタリア・ローマのマルコ・シモーネGCでトロフィ奪還に燃える。

Q:1997年の「ライダーカップ」を観戦したあと、家族全員がゴルフを始めたということですが、「ライダーカップ」はあなたの成功とゴルフのキャリアを振り返った時に、大きな意味のある大会でしょうか?

ジョン・ラーム(以下JR):最近、父とこの話をしていたんですよ。「もし1997年の『ライダーカップ』がスペインで開催されていなかったら、どうなっていたかな?」と。この大会を観戦したことで、父がゴルフを始め、だからこそ私もこうしてプロゴルファーになっている。1997年の「ライダーカップ」は私にとって、ゴルフへの情熱に火をつけたきっかけとなりました。これがどれだけ重要か、数値化したり、言葉で表現することはできませんが、私にとって非常に重要なものです。また、「ライダーカップ」はゴルフの最大のマーケティングツールでもあり、ゴルフ界でも圧倒的に最大のイベント。世界の一流選手の中でも、自分のためではなく、チームとして一堂に会する唯一の機会なんです。米国・欧州両チームは最後まで戦い抜きますが、それほどまでに重要なもの。非常にユニークな競技であり、たとえ自分のチームが負けたとしても、それでも楽しく特別で、その一部になったことは非常に価値のあること。それはゴルファーが、満員のスタジアムでプレーする他のスポーツ選手が味わう経験に最も近い感覚を持てる瞬間と言えるでしょう。

Q:今年のローマでの「ライダーカップ」をどれだけ楽しみにしていますか? チームとしてプレーするための準備はどのように行ないますか?

JR:私個人に関しては、準備はいつもと同じですね。誰も私のショットを助けてくれるわけではないので、自分のやり方でことを進めます。いつもと同じことをやり、チームの一員として戦うのです。私がマシュー・フィッツパトリックのような誰かとプレーする場合でも、彼に私のスイングやショットを助けてもらうことはできません。それぞれのショットを打ち、次に進む。それだけのことです。

Q:2018年の「ライダーカップ」で欧州チームの一員としてプレーした経験について教えてください。ユニークなチーム競技を初めて経験したと思いますが、自分が思ってた通りでしたか?

JR:2009年、私は「欧州ヤングマスターズ」に出場しました。これは16歳以下の選手のための国別対抗戦で、各国から最も優れた男女2人ずつが代表に選ばれるんです。その試合中、4番ティーに向かう途中で、2018年「ライダーカップ」の看板を見て、「2018年はここに来るんだ!」と自分に言い聞かせました。実際、それを果たし、2018年の「ライダーカップ」で欧州チームのメンバーとしてプレーしたことは、非常に不思議で素晴らしいものでした。自分がとても誇らしく、子供の頃のプレーの思い出が蘇ったんです。最良のプレーではありませんでしたが、日曜日にタイガー・ウッズと対戦した試合(シングルス戦)は、私の償い、埋め合わせのようなものでした。その試合に勝ち、最終的に欧州チームの勝利に貢献できたことはとても特別でした。初めてプレーした時は緊張しましたが、2021年にウィスリングストレーツで開催された時は、ずっと簡単でした。私自身、2021年には非常に実績のある選手になっていましたし、「全米オープン」チャンピオンでもあり、「ライダーカップ」の経験もあった。だから、はるかにやりやすさを感じられたんです。

Q:過去、あるいは現在の選手を選べるなら、誰を「ライダーカップ」のパートナーに選びたいですか?

JR:そうですね。多くの選択肢があり、素晴らしい選手がたくさんいます。1人を選ぶのは難しいけど、マシュー・フィッツパトリックのような選手とプレーしたい人は多いでしょうね。私はトーマス・デトリーと一緒にアマチュア時代にゴルフをしてきたので、彼がメンバー入りするなら、一緒にプレーするのは楽しいかもしれませんが。

Q:あなたが今までに受けた最高のアドバイスは何ですか?

JR:一つのアドバイスに絞るのは難しいですね。状況にもよりますが、おそらく父からもらったアドバイスが1番だと思います。「1日には24時間あり、8時間は睡眠、16時間は昼間に自分がやるべきことをする時間だ。それをきちんと計画し、自分がしたいことや、やらなければいけないことを全てやり遂げるには十分な時間がある。時間を効率よく使い、自分の得意なことをよりよくできるよう、心がけなさい」と。今では父に言われた意味を、私も完全に理解していますよ。

Q:2016年にプロ転向したばかりの自分に何か伝えたいことがあるとしたら、何といいたいですか?

JR:おそらく練習場での球数を減らすように伝えるでしょうね。でも正直、あまり大きな変更はないと思います。幸い、私のキャリアは今のところ非常に順調に進んでおり、大幅な変更は必要ありません。アマチュアからプロ転向し、9ヶ月で世界のトップ10にまで上り詰め、プロ転向した同じ年に世界のトップ5に入りました。急速な成功に対する変化になれるのはとても難しかった。プロ2年目には、誰も知らない存在から、一躍注目の的となることに、慣れる必要があったんです。練習方法やトーナメントへの取り組みについては、何も変えないと思いますが、もし成功に伴う名声や注目に対処するために、どうやったらよりよく準備ができるか、ということで改善できる方法があるなら、それを伝えたいです。

プロ転向した2016年以来、ロレックス・テスティモニーとして活躍するジョン・ラーム。ロレックス・テスティモニーであったセベ・バレステロスに続き、スペイン人としては2人目の世界1位になった。「時計の製造とゴルフには驚くほどの類似点がある。ゴルフは無限に複雑なスポーツで、時計の製造と同様に最終的にはシンプルなアイデアとコンセプトに帰結する」と語っている。ラームにとって最も重要な時計は、2021年「全米オープン」優勝後に入手したデイトナ・レインボーだという。

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