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「コマーシャルバンク・カタールマスターズ」で
DPワールドツアー初優勝を飾った星野陸也

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

巨大な貝殻を模したトロフィを掲げる星野陸也。

 日本ツアーで6勝を挙げ、昨年からDPワールドツアー(欧州ツアー・以下DPWT)に本格参戦している星野陸也が、カタールのドーハGCで開催された「コマーシャルバンク・カタールマスターズ(以下、カタールマスターズ/

2月8日〜11日開催)」でDPWT初優勝を飾った。欧州ツアーの試合では、昨年9月に優勝した久常涼以来の日本人優勝。青木功、松山英樹、久常涼に次ぐ、日本人4人目の欧州ツアー制覇となった。なお、この「カタールマスターズ」は、1998年から行なわれており、過去、アダム・スコット、アーニー・エルス、セルヒオ・ガルシア、レティーフ・グーセン、ヘンリク・ステンソンなど錚々たる顔ぶれが歴代優勝者に名を連ねている大会だ。

「去年は2回優勝争いをして、2位と惜しい試合があったので、今回、3回目の優勝争いで優勝できて嬉しい。『カタールマスターズ』は日本人が優勝したことがない試合なので、これからに生きる大切な優勝です」

 昨年の11月、DPWTの開幕戦「フォーティネット・オーストラリアPGA選手権」と「ISPSハンダ・オーストラリアンオープン」でいきなり2週連続で優勝争いし、いずれも2位に入賞。特に「オーストラリアンオープン」では、ホアキン・ニーマンとのプレーオフにもつれ込み、あと一歩のところで優勝を逃した。だが、この2試合で来季(2025年)のシード権も確定させ、「全英オープン」出場権もゲット。今年に入り、「ドバイデザートクラシック」「ラス・アル・カイマ選手権」とドバイ2連戦で予選落ちを喫したが、その翌週の「バーレーン選手権」で12位に入ると、再び好調の波に乗り、翌週の「カタールマスターズ」初日に7位、2日目に2位と順位を上げた。最終日は、3人が首位タイに並ぶ混戦の中、最終組でスタート。6バーディ、2ボギーの68で回り、最後は1メートルのパットを沈めて優勝を決めた。

「今年に入ってドバイでちょっとつまづいてしまったんで、バーレーンから巻き返したいと思っていた。緊張はしていたけど、楽しむことを意識した。最後は少ししびれてしまったけど、勝ててよかった(笑)。 今日は落ち着いてプレーできたところと、風と雨の難しいコンディションの中で、バーディをとっていけたというのが、勝因。また、海外の地で日本の方々に応援してもらうのは力になるし、今回の優勝は応援のおかげと言っても過言ではない」

 星野は昨年、体力的にも精神的にもキツかったのだという。試合に毎回出られるわけでもないので、ウェイティングの日々が続き、海外の食事が合わず、体重も5キロほど減ってしまったのだという。日本に帰国した際は、体重を戻すために「めっちゃくちゃ食べた」そうだ。だが、今年は食事にも慣れ、ツアーの半分近くは去年、経験したコースなので、「去年とは違った気持ちで臨める」という。また、昨年末のオーストラリアでの優勝争いを経験したことで自信がついたことも大きな変化で、「去年は攻め方も自信がなくてすごく安全に、とか、攻めきれない部分があったけど、オーストラリアで優勝を逃して悔しい思いをしたので、今年は優勝したいし、去年1年間の経験を活かして、試合に臨みたい」と語っている。

持ち球のドローボール以外に、フェードもものにし、欧州の狭いコースでも攻められるようになったという星野。

 また、彼は「欧州ツアーのコースはすごく狭いイメージなので、あまり攻めすぎても危険。今まではドロー一辺倒だったけど、去年からフェードも打てるように練習し、それがものになってきた」と言う。欧州の選手は、距離の長いパー4で、ティショットでライン出しをしながら攻める選手が多いそうで、以前の星野のようにドロー一辺倒の攻め方では、曲がってしまうこともあるのだという。そこで去年の後半から、スイングを変化させながら、フェードボールの習得にも力を注いだ。

DPWTは、欧州だけでなく、アフリカ、アジア、オーストラリア、アメリカにも転戦する「ワールドツアー」。健康第一で、体力がものをいうツアーだ。だから、今の順位を下げたくないからといって、連戦していては身が持たない。「成績を出して、休めるのが理想。本当は全部出たいという思いはあるが、体やスイングの調子を整えながら、転戦に備える必要がある。

 その上で、星野の掲げる目標は、DPWTのレース・トゥ・ドバイランキングで上位に入り、50人が出場できる最終戦「DPワールドツアー選手権」に出場すること。阻久常涼のように有資格者以外の上位10名に入り、来季からPGAツアーへ行くことだ。久常が昨年、「カズー・フランスオープン」でDPWT初優勝を飾り、上位10名に入って今年からPGAツアーに参戦しているが、「常ちゃん(久常)が去年、ポポポーンとスムーズにPGAツアーに行ったので、それはそんなに簡単なことではないですけど、自分もそういうルートを目指したいと思う」と久常に刺激を受けている。優勝する直前の「バーレーン選手権」では、「PGAツアールートに行くには、優勝したい。まずは1勝し、2勝目を挙げ、上位でPGAツアーの枠に入れるようにしたい」と語っていたが、まさしく彼の筋書き通りの展開になってきた。優勝直後のデータでは、レース・トゥ・ドバイランキングでローリー・マキロイに次ぎ2位。PGAツアー枠では1位につけている。

薬丸龍一キャディ(左)とともに、二人三脚の旅が続く。
今年のDPワールドツアーは、基本的には川村昌弘(右)、中島啓太(右から2番目)とともに転戦している星野(左から2番目)。星野の右横は筆者。

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