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「ジェネシス招待」で米ツアー9勝目
アジア人最多のツアー優勝記録を達成した
松山英樹

Text/Eiko Oizumi
Photo/TGR Live / J.D. Cuban, Getty Images

「ジェネシス招待」でツアー9勝目を飾り、優勝トロフィを掲げる松山英樹(Photo/TGR Live / J.D. Cuban)

 タイガー・ウッズがホストを務める「ジェネシスインビテーショナル(以下、ジェネシス招待・2月15日〜18日開催)」は、賞金総額2000ドル(約29億6320万円)、優勝賞金400万ドル(約6億円)というカリフォルニア州・リビエラCCで開催されたシグネチャーイベント(昇格試合)。予選落ちのある、限定数の選手のみが出場できる大会だが、松山は最終日に9バーディ、ノーボギーの「62」という圧巻の好スコアを叩き出し、通算17アンダーでホールアウト。6打差の7位からスタートし、大逆転劇を演じて、米ツアー9勝目を飾った。 

2022年に「ソニーオープン」で優勝し、ツアー8勝目を達成。チェ・キョンジュ(崔京周/KJチョイ)と並び、アジア人最多タイ記録(米ツアー8勝)を樹立したが、ついにチェを追い抜き、アジア人最多の米ツアー9勝目を達成した。「8勝目を挙げてから、ケガとかで(9勝目までが)すごく長く感じてましたし、トップ10入りも全然できなくて、もう優勝もできないんじゃないか、と思ったこともたくさんあった。でもこうして優勝できて、すごく嬉しい。KJさんの8勝を超えることは1つの目標だったから、すごく嬉しい」(松山)

最終日の18番ホール、2打目をショットする松山。

 なお今回の優勝で世界ランキングは、55位から一気に20位に浮上。フェデックスカップランキングでは3位にジャンプアップした。優勝賞金は自己最高の約6億円をゲット。ツアー障害獲得賞金額は、合計4853万1991ドル(約73億円)となった。

 米ツアー3勝の丸山茂樹から、「アジア人の最多優勝が8勝なので、早くKJの8勝を抜いてくれ」と言われていた松山。2022年「ソニーオープン」で優勝し、タイ記録の8勝に並んだが、その後は首痛などを理由に試合を棄権、あるいは欠場することも何度かあった。昨年はフェデックスカップ・プレーオフ第2戦「BMW選手権」の2日目に背中の痛みを感じ、大事をとって棄権。ツアーエリート30名のみが出場できる、フェデックスカップ・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」への10年連続出場がかかっていたが、その出場はかなわず、シーズン終了となった。「10年出場を目指してたんですけど、優勝も出来ず、悔しい」と語っていた。

 体の痛みに悩まされた2023年。思うように練習も出来ず、ショットやパットに苦しんだことも。そんな未勝利の2年間を「ジェネシス招待」優勝後に振り返り、「8勝してから、ケガなどですごく長く感じていたし、トップ10も全然入れなくて、もう優勝もできないんじゃないか、と思ったこともたくさんあった。でも一方であっという間に2年間が過ぎたな、という感じもある。それはたぶん痛みと戦ってきたというのもあるし、やることがいっぱいある中で、それを一つ一つこなしてきたから、そう思うのかもしれない」と心中を明かした。

 だが、今年に入って首の痛みについては「寝る時に痛みの不安を感じることなく眠ることができていた」そうで、「もうちょっとしたら上位で戦えるんじゃないかな」と思っていたという。去年まではいつ痛みが再発するのか? と不安を感じながらプレーしていたというが、今年はそうした痛みの心配をすることなく、プレーできていると語った。

「9勝目ができたんで、(勝利数を)2ケタに乗せたいという気持ちも強いし、やっと世界ランキングも下げ止まったので、よかったなと思う」とニッコリ。55位まで下がった世界ランキングも、今回の優勝で20位まで一気にジャンプアップ。35人抜きで、再び世界のエリートプレーヤーの目安でもあるトップ50圏内に入ってきた。

 最終日の62をマークし、コースレコードまであと1打、と迫ったが、結局、記録樹立とはならなかった。

「ショットは望んでいるものとはかけ離れていたけど、この4日間、パッティングにすごく助けられた。いつもショットの良さが評価されるけど、今日はパットやショートゲームがよくて、このスコアを出せた。これだけショートゲームだけで優勝できたのは初めて。このショットでも勝てるんだという自信もついたし、パッティングももっと磨かないといけないと改めて思った」

優勝後の記者会見に臨んだ松山。2年ぶりの優勝に、喜びもひとしお。

 ショットメーカー、特にアイアンの精度の高い選手のイメージが強い松山は、「ショットはいいけど、パットが……」と言われることも多いが、今大会では「ショットがバタバタで、そのおかげでパッティングにずっと集中できた」そうだ。

 2年ぶりの優勝に大きな喜びを感じた松山だが、たった一つ、残念に思うこともあった。大会ホストのタイガー・ウッズが、インフルエンザに感染し、表彰式に姿を現さなかったことだ。通常、タイガーが優勝者へトロフィーを渡し、記念撮影を行なうことになっているが、今年はあいにくホスト不在。「この試合で優勝することは、目標の一つだったし、タイガーがホストになってから、なおさらその気持ちが強くなった。今日、一緒に写真を撮りたかったんですけど、残念でしたね」と優勝後の記者会見冒頭で語っていた。

今後は、2週間休みをとり、「アーノルド・パーマー招待」「プレーヤーズ選手権」とビッグイベントが続く。そして4月初旬には今季メジャー第1戦「マスターズ」だ。ショットの調子が今ひとつ、という状態ながらも、他の選手を圧倒し、今回のような爆発的な勝ち方ができた松山なら、メジャー優勝にも期待が持てる。まずは「マスターズ」での活躍に期待したいところだ。

表彰式後に「チーム松山」で記念写真。みんないい笑顔!
リビエラCCのクラブハウスに向かってドライバーショットを放つ松山。リビエラCCのオーナーは日本人だ。

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