Text/Eiko Oizumi
Photo/Augusta National Golf Club

「マスターズ」2日目を終えて、5バーディ、1ボギーの68をマークした昨年の「全米オープン」チャンピオンのブライソン・デシャンボー。通算7アンダーとし、首位のジャスティン・ローズに1打差の2位に浮上した。10番ホール(パー4)では、2打目をグリーンの左奥に外し、43ヤードのアプローチを残したが、ピン側1.5メートルにつけ、パー。自身も「10番の寄せワンは、自分の人生でも屈指のプレーだった」と振り返るほど、満足のパーセーブだった。
「今日のラウンドは、厳しいコンディションの中で素晴らしい内容だったと思う。リーダーたちがスコアを伸ばしていく中で、自分も置いていかれたくない気持ちが出るし、グリーンには狭いエリアがあって、そこに正確にボールを運ばなければいけない。フェードもドローも全ての球筋を持っていないといけないし、毎ショット、高度な技術が求められる。だから、ただ『我慢強くいこう』と心がけても簡単じゃない。そのバランスをどう取るかは、神のみぞ知る、だね」
オーガスタはテレビで観るよりも起伏があり、体力的にも疲労がたまりやすい。しかもコース攻略においても頭を使ってうまくプレーしなければ、好スコアは望めず、精神面でも負担のかかるコース。練習量をいつもよりもセーブして、体力を温存している選手も多い中、デシャンボーは普段通り、練習場で納得のいくまでショットを打ち続けている。初日は日が沈み、練習場に照明が灯されても、アイアンでドローが打てるまで球を打ち続けた。
「主にアイアンショットを練習したよ。持ち球のドローをしっかり打てるようにね。フェースが少し開き気味だったので、スイングの順序やフェースアングルを調整していたんだ。実際は、今日のラウンド中にスイングを見つけた感じ。だから、今夜はそこまで練習しないと思うけど、普段通りには少しやると思うよ」
「(誰よりも練習場でボールを打ってることについて)ちょっと普通じゃないんだろうね。頭のどこかがおかしいのかも(笑)。僕にとって大事なのは、自分が思い描くショットを実際に打てることなんだ。狙った“ウィンドウ”から思い通りのカーブを描いてボールが出てこなければ、それができるまで打ち続ける。自分の感覚と現実が一致するまで、とことん突き詰めるんだ。だから、どれだけオーガスタが(肉体的に)過酷なテストであっても関係ない。この大会は最も肉体的に厳しい場だとは思っているが、それでも狙ったウィンドウにボールを通すために全力を尽くす。それが僕のやり方だ」
常にスイングについて研究しながら試行錯誤を繰り返しているデシャンボーだが、今は体を横に傾けて、フェースを返す動きを練習しているという。
「卓球で言うと、トップスピンみたいな感覚だね。それが自分のスイングの中で欲しい動きなんだ。何年も続けていることだけど、もっと安定してできるようになりたい」
スイングイメージが「これだ!」と思えるまで、1週間に100パターンくらいは試すのがデシャンボー流。頭の中は情報でパンパンだそうだ。自分でも「正直、自分の脳内には入りたくない(笑)」とジョークを飛ばす。
昨年は、狙った場所に球を最短距離で打ち出すために、ボールとピンを結ぶラインの中間にあった13キロもの表示杭を引っこ抜き、グリーンオンさせてバーディを奪取したこともあるほど、最善の結果を得るためには、方法を選ばないデシャンボー。2016年「マスターズ」でローアマに輝いた彼は、シルバーカップを手にしたが、今度こそ「マスターズ」のトロフィーを手にするために、他の選手たちにはない発想や計算、パワーを駆使して挑む。
