Text & Photo/Eiko Oizumi

今回の「全英オープン」でメジャーの舞台を初めて経験する阿久津未来也は、練習日にこんなことを語っていた。
「送迎が(メルセデス)ベンツだし、『ザ・ショップ(お土産売り場)』が体育館くらいデカい。僕は15万円くらい買いましたが、どのくらいの売り上げがあるんだろうって思っちゃいました。18番もやばいですね。ハマスタ(横浜スタジアム)みたい。それにプレーヤーズラウンジの料理もおいしいし、練習日でもグリーンスピードの情報が(メールで)くるんですよ。それに練習日からこれだけチケットが売れてる。CMで“日曜日から日曜日までの8日間(8デイズ)を楽しんでください”という広告を見たんですけど、その辺もすごいな、と。日本人なのに、子供達もサインプリーズって必死に、気安く、明るく言ってくれて、写真を撮りましょうって言ってくれる。何か地域の人の温かさみたいなものを感じますね。全部驚いています」
そして、練習場やコースでは、それまでテレビの中で見ていた憧れの選手たちがプレーする姿を目の当たりにして興奮。「練習ラウンドくらいまでは、同じタイトリストの選手だし、好きなんで、ジャスティン・トーマスらと写真を撮ってもらいましたけど、写真を撮りたいと思ったのは、ローリー・マキロイとトミー・フリートウッドくらい。でも、誰かの言葉じゃないですけど『憧れるのはやめたい』。ボギーの数よりもバーディの数が1個でも上回るようにしたいし、『ミズノオープン』の優勝者として来てることをしっかり自信にして、初日の1番に立ちたいと思う」と語っていた。
しかし開幕してみると、なかなか思うようなゴルフができない。初日を終えて、3バーディ、6ボギー、2ダブルボギーの78(7オーバー)でホールアウトし、144位タイで終了。2日目はバーディとボギーが交互に来るような試合展開でスコアを思うように伸ばせず、通算9オーバーの143位タイと、予選通過はならなかった。
「悔しい。もったいない3パットがところどころあった。昨日から何か変えたわけでもないが、1アンダーくらいで回れてたら自分の中で達成感があった。若干、パワーゲームのようなところがあって、ドライバーとかで攻めていかないと、アイアンでバーディを取るのは難しいという面は痛感した。今回、メジャーに出て、ゴルフの視野が広がったのかなというところは、プラス」
「全英オープン」はよく、1日に四季があると言われるが、今回も雨、風、寒さ、暑さを経験した阿久津。「ここに来ないとそれは体感できないし、プラスの経験値として捉えたい」と語った。
そして今回、初めて海外メジャーを経験し、また「全英オープン」に戻ってきたい、メジャーに出たいという気持ちが一層強まったという。同年代の若手選手たちが、欧米ツアーを主戦場に戦う姿を見て、今回「全英オープン」に出場したことで、彼らの「海外で戦いたい」という気持ちがよくわかったそうだ。そして海外に挑戦したいという気持ちは、この1週間で強くなったと語る。彼の今後のゴルフ人生やゴルフ観を左右するような初メジャー参戦となった。

