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【世界のゴルフ通信】From Latin 来る者と去る者!PGAツアーにたどり着いたヌニェスとLIVへいったアンサーとオルティス

「PGAツアーにたどり着くまでの間で人生経験が豊富になり、上達できている」アウグスト・ヌニェス

今季からPGAツアーを主戦場に戦うアルゼンチンのアウグスト・ヌニェス。2013年にPGAツアー・ラテンアメリカでデビューを果たし、コンフェリーツアーを経て、ようやく夢のPGAツアーの舞台に立つ。

ラテンゴルフ界でPGAツアーに行く者、去る者

ラテンゴルフ界も、新たにPGAツアー入りする選手がいる一方、サウジ資本をバックにしたLIVゴルフへの参加を決意し、追放されたスター選手がいるなど、激動の時代を迎えている。

歌手フリオ・イグレシアスの歌に、次のような歌詞がある。
「来る者もいれば、去る者もいるが、人生は同じように続いていく」。
しかし、それについては、フリオは間違っている。
人生は同じまま、とどまりはしない。
アルゼンチンのプロゴルファー、アウグスト・ヌニェス(29歳)は、プロ転向後10年で、PGAツアーに参戦する夢を実現した。
一方、LIVゴルフ行きを選んで、先行き不透明な状況に直面しているメキシコのエイブラハム・アンサーとカルロス・オルティスにとっても以前と同じ人生ではない。

アルゼンチンのアウグスト・ヌニェスが、プロ入りして10年が過ぎた。
プロ入り前は何年もキャディを務めていたが、PGAツアー・ラテンアメリカ、コーンフェリーツアーで道を切り開いた後、9月にはついにPGAツアーデビューを果たす。

7月17日まで開催された「メモリアルヘルス選手権」を、5位タイで終えた彼は、PGAツアーのポイントリストで、シード権ラインの875ポイントを超え、出場権を得た。
この9月から、妻のディニと娘のルジャンを連れてPGAツアーに本格参戦するが、エミリアーノ・グリジョとファビアン・ゴメスという同胞がPGAツアーにはいる。

ヌニェスは14歳のとき、父や兄の歩んだ道をたどって、トゥクマン・ジョッキークラブでキャディになることを決意した。

2013年にPGAツアー・ラテンアメリカでデビューし、その1年後、PGAツアー・ラテンアメリカの条件付き出場権を獲得。
2015年の賞金ランキングで17位になった。2016年に初勝利を挙げ、2017年にはコーンフェリーツアーのシード権を獲得した。

「PGAツアー・ラテンアメリカのメンバーであれば、素晴らしい選手たちと常に争う機会に恵まれます。それはコーンフェリーツアーへのいい準備にもなるし、その後も試合で戦い、学び、PGAツアーに出るまでに上達するのです。ゴルフは私にすべてを与えてくれました。ゴルフがなかったら、今の自分はなかったでしょう」

そして、さらに若者たちに次のようにアドバイスをしている。

「一生懸命練習して、ゴルフを楽しんでください。できないことはありません。だから、あきらめないこと。最後には、すべてがうまくいくんです」

PGAツアーにトッププレーヤーが1人もいなくなってしまったメキシコ

©LIV GOLF

セルヒオ・ガルシアがキャプテンを務める、LIVゴルフのラテン系グループ「ファイヤーボール」。左からエウヘニオ・チャカラ(スペイン)、カルロス・オルティス(メキシコ)、グレッグ・ノーマン(LIVゴルフCEO)、アブラハム・アンサー(メキシコ)、セルヒオ・ガルシア(スペイン)。

©LIV GOLF

第2戦・ポートランド大会からメキシコのカルロス・オルティスもLIVゴルフに参戦。

エイブラハム・アンサーもLIVゴルフ入り。2人は東京五輪ゴルフにも一緒に出場している。

LIVゴルフ行きを決めたラテンの選手たち

エイブラハム・アンサーとカルロス・オルティスがLIVゴルフに参加したことで、メキシコはPGAツアーの代表選手を欠いたままの状態となっている。

フェデックスカップ84位、世界ランキング22位のアンサー(31歳)は、LIVゴルフに行った選手がよく言われている「終わった選手」とは言い難く、むしろその逆で、ライジングスターである。
2013年にプロ入りして以来、将来を嘱望されており、今季は「全米プロ」で9位タイ。
昨年はツアー初優勝を果たした。「全英オープン」では、最終ラウンドで65をマークし11位タイに。
彼の生涯獲得賞金総額は、1500万ドル強(約20億円)に達している。

「慎重に検討し、LIVゴルフに参加することにした。決して軽い気持ちで下した決断ではない。とても幸運だと感じているし、これまでの機会を与えてくれたPGAツアーに感謝している」

アンサーはセルヒオ・ガルシアの呼びかけに応じ、アマチュアの若きスター、エウヘニオ・ロペス・チャカラもプロ入りして、チーム・ラテン(ロス・トロスに改名予定)のメンバー入りを果たしている。

しかし、チーム・ラテンを完成させるには1人足りず、オルティスに白羽の矢が立った。
オルティスは、PGAツアー・ラテンアメリカ、コーンフェリーツアー(3勝)を経た後で、PGAツアー入りを果たし、2020年東京五輪のメキシコ代表に。
そして、生涯獲得賞金総額は、770万ドルに及ぶ。

「セルヒオとは年明けから話をし始めたのだが、すべてが軌道に乗り始めた頃、私自身のゴルフの調子がよくなかったので、自分はもう呼ばれないだろうと思っていたんだ。でも、6月にセルヒオから電話があり、何を望んでいるのか聞かれて、もしそれが手に入ったら、LIVに行くことを約束してほしいと言われた。それでLIVへ行くことに決めたんだ。それは難しい決断で、家族、友人、代理人と相談した。私には3人の娘がいるが、彼女らともっと一緒に時間を過ごしたいし、シード権を維持するために最低28週間、プレーする必要のないLIVを選んだ。しかし私は、PGAツアーに復帰できることを願っている。かといってまた年に 30 週間、プレーしたくはない。またLIVでは、仲間意識や連帯感がある。PGAツアーの試合では、他の選手の勝利を喜んだり、シャンパンをかけ合う光景は決して見られない。グリーン上には友達はいないんだ。LIVでは、もっと自分らしさを出していこうと思っている」

Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)

PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。

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