• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Australia 新たな試合...

【世界のゴルフ通信】From Australia 新たな試合形式を模索する豪州ゴルフ

従来の歴史と常識にとらわれず新たな道を模索する豪州ゴルフ

©Golf Australia

「プレーヤーズシリーズ・ビクトリア」はジェフ・オギルビーがホストを務めるユニークな大会。男・女プロとアマチュアが出場。優勝したのはブラッド・ケネディ。日本ツアー(JGTO)でも3勝を挙げている。

 

©Golf Australia

B・ケネディと3打差の3位タイには米LPGAツアーを主戦場に戦う女子プロ、スー・オーが入賞。

 

男・女・アマチュアのミックス試合誕生!

世界的規模のコロナパンデミックがオーストラリアのプロゴルフをも混乱に陥れたが、一方では将来を見据えた新たなトーナメント形式の模索に役立ったともいえる。

先頃行なわれた「プレイヤーズシリーズ」は革新的な試合形式で、これはトップジュニアおよびアマチュアゴルファーが男女プロ選手たちと一緒に、一つのトロフィーを目指して競い合うというものである。
このアイデアは新型コロナウイルスのパンデミックが始まる一年以上前に生まれていたが、1月にビクトリアで開催された「ISPSハンダVICオープン」が、非常に大きなヒントになったことは確かだ。

元々は「VICオープン」(男女ともに同コース、同日程でプレー。
賞金総額も同額)からインスピレーションを得たものだが、「プレーヤーズシリーズ」は、オーストラリアの新進気鋭のプロや、プロゴルファーになりたいトップアマたちのために、戦いの場を提供している。

ローズバッドCCで開催されたビクトリアの試合は、今年2試合あるうちの1試合目であり、2試合目は3月にシドニーのボニードーンGCで開催される。

ローズバッドでは、LPGAプレーヤーのスヒョン・オーや日本ツアーで複数回の優勝経験があるブラッド・ケネディ、将来有望な10代のアマチュアであるエルビス・スマイリーらが最終日の終盤に首位タイに並んでいたが、最終的にケネディが抜け出して優勝した。
なお、2006年の「全米オープン」チャンピオンであり、トーナメントホストのジェフ・オギルビーは初日のラウンドを64で回り、首位に立った。

1試合目が成功したことで、2戦目のシドニーでの試合にも期待が高まっているが、もし同じくらい大会が盛り上がるのであれば、さらにスポンサーがつくだろうと期待が寄せられている。

この試合は72ホール・ストロークプレーの「正式な」ゴルフトーナメントとして、その品位を維持する一方で、同時に他のどの試合とも違うオリジナリティを見せている。

プロゴルフは通常、4日間のストロークプレーで行なわれているが、それは週ごとに最高の選手を決定する最も公平な方法だからだ。しかしながら、スポンサーの観点から見ると、毎週同じようなことが続けば、マンネリ化してしまい、興味も薄れやすい。
その点で「プレーヤーズシリーズ」のようなイベントは魅力的である。

ローズバッドでは、主催者たちが男女平等にプレーできるようコースセッティングを整えることで、競技が成立(男女の飛距離の差を調整するために男性と女性は異なるティーを使用)。
シドニーでも同様に実施でき、そして再び試合の終盤で男・女・アマチュアがうまい具合に混戦模様となれば、「プレーヤーズシリーズ」は、オーストラリアのゴルフ界が過去20年に渡って探し求めてきたものをついに実現、となるかもしれない。

 

アマチュアゴルフ界に2つの大きな話題

©Getty Images

プロ転向したオーストラリアの期待の星、ガブリエラ・ラッフルズ。「全米女子アマ」に優勝した経験を持つ。

 

トップアマたちのゴルフはオーストラリアではあまり注目されないが、ここ数週間で開催された2つの試合はそれぞれ異なる理由から、大見出しを飾るものとなった。

ひとつは120年を超える伝統を打ち破ったこと、そしてもうひとつは将来有望な同国最高の若手の一人がプロ入りを果たしたことである。

ガブリエラ・ラッフルズは「全米女子アマ」で優勝した唯一のオーストラリア人だが、彼女が初めてクラブを手にしてからたった5年で達成した功績である。

今年の2月下旬、プロ入りを果たした20歳の南カリフォルニア大生である彼女が、大学最後の年に先んじて、プロとして「ゲインブリッジLPGA」に出場した。

ラッフルズは兄のライアン(コーンフェリーツアーでプレー中)、両親のレイ・ラッフルズとアンナ・マリア・フェルナンデスに次ぎ、スポーツ選手として生計を立てる仲間入りを果たした。両親はプロのテニスプレーヤーだった。

 

「全豪アマ」が72ホールのストロークプレーに

©Golf Australia

2018年の「オーストラリア・アマチュア選手権」は日本人の中島啓太と、山口すず夏が優勝。現在この大会は、72ホールのストロークプレー方式に変わった。

 

また、同国で最も名誉あるアマチュアタイトル「全豪アマ」が、120年を超える歴史の中で初めてストロークプレー形式で開催された。

「全英アマ」や「全米アマ」など、ほとんどの国の「アマチュア選手権」では、36ホールのストロークプレー(予選)から上位64名が本戦に進むという形式を取っているが、本戦はマッチプレー形式で行なわれ、各マッチが終わるたびに半数が脱落。
最終的に2名が残り、優勝を争うことになっている。

「全豪アマ」は昨年まで同様の形式で行なわれていたが、トーナメントの運営を合理化するため、ゴルフオーストラリアは選手枠を156名(男子105名、女子51名)に減らし、72ホールのストロークプレーに変更した。

出場選手枠が少なくなったことにより、男女両試合をひとつのコースで同時に行なうことが可能になり、(コスト削減にもなる)、選手たちがプロ入りした時に直面する、プロの試合の形式(ストロークプレー)に近い状態でプレーできるというメリットがある。

当時のゴルフ運営マネージャーは、男女の出場人数を将来的には同数にしたいとし、本大会を可能な限り最高レベルのコースで開催できるよう、スポンサーを集め、競技レベルを高い水準のままキープしていきたいと語った。

だが、この変更は未だに満場の承認を得ていない。ストロークプレーを採用することで、トップアマの試合とプロの試合との差別化を図れないのではないか、という危惧を抱いている人も多いからだ。

Text/Rod Morri

ロッド・モリー
(オーストラリア)

ゴルフニュースのウェブサイト「オーストラリアゴルフ」のコラムニストで、長年に渡り、豪州ゴルフツアーを取材。

関連する記事