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【世界のゴルフ通信】From Asia 欧米ツアーへのハシゴではない!下部ツアー扱いを脱却したいアジアンツアー

欧米ツアーへの「ハシゴ」ではない
欧米ツアーの“下部ツアー”的扱いを脱却したいアジアンツアー

アジアンツアーのヒーローたち。左上はジャズ・ジェーンワタナノンド。下段左から、キム・ジュヒョン、パビット・タンカモルプラサート、ミゲル・タブエナ、シブ・カプール。

「コロナで試合ゼロ」から一気に世界で最も注目を集めるツアーに変身

アジアンツアーは数十年にわたって、PGAツアーや欧州ツアーよりも下のツアーという見方をされてきた。
選手たちからも、最終的に目指す場所ではないとみなされてきたツアーである。

だが、アジアンツアーのチョ・ミンタンコミッショナー兼CEOは、「ハシゴ」または「支流」サーキットとしての日々は終わったと信じている。

今後10年にわたってアジアンツアーのトーナメントの開催や賞金を支援するため、グレッグ・ノーマンがCEOに就任したLIVゴルフインベストメンツ経由で、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドから合計2億米ドルという額の支援を受けることになった。
これでアジアンツアーは、ようやく影の存在から表舞台に立つ準備ができたのだ。

チョ氏は、「これはアジアンツアーの歴史において、たった一度の最大の進展であり、アジアのプロゴルフにとって大きな記念すべき出来事だ」と語った。

「我々は何十年も、このように大きな投資を得たいと思ってきたが、とうとうその時がやってきたのだ。我々はその投資を生かしてアジアンツアーの成長のために最善を尽くしていかなければならない。もちろん、一夜にして事が起こるとは思っていない。ローマは一日にして成らず、だ。しかし我々は今、ツアーを急速に成長させていくのにとてもいい状況にある」

G・ノーマンは今後10年以上にわたって、アジアンツアーで年間10試合を開催することになっており、開催地はアジア、中東、ヨーロッパなど多岐にわたっている。

「来るもの拒まず」のアジアンツアー
世界ランク200位以内の選手や、アマチュアも大歓迎!

©Getty

LIVゴルフインベストメンツのCEOに就任した、世界殿堂入り選手のグレッグ・ノーマン。

アジアンツアーCEOのチョ・ミンタン氏。

欧米ツアーVSアジアンツアーの冷めた関係

この発表に対するPGAツアーと欧州ツアーからの反応は、予想通り冷淡なものだった。
それは欧米ツアーが今まで築き上げてきたプロゴルフトーナメントの絶対的な支配に対して、アジアンツアーから長期的な脅威がもたらされるのではないか、というジェイ・モナハン氏率いるPGAツアーとキース・ペリー氏率いるDPワールド(欧州ツアー)の抱く不安からである。
チョ氏は彼らに対し、激しく言葉で討論するのではなく、どっしりと構え、外交的なスタンスで慎重に接している。

「我々は今もPGAツアーや欧州ツアーと連絡を取り続けているが、我々とは別であり、立ち位置も違うとはっきり言及している。
だがそのことが、国際ゴルフ連盟における我々の立ち位置を変えるとは思っていない。
アジアのゴルフやアジアンツアーを成長させるというミッションや、ツアーメンバーに対する義務だけを我々は行なってきたのだ。
過去5年間にわたって欧州ツアーと提携し、1999年以来、共催試合でも素晴らしい成功を収めているが、ツアーメンバーたちはアジアで成功を収めた後に欧州に行くことで、自身のキャリアを高めている」

またチョ氏によれば、欧州ツアーは今後、アジアとの共催試合を開催せず、アジアンツアーの選手たちが欧州ツアーへ参入する機会も与えない、と明言しているという。
その見解を受け入れながらもチョ氏は、アジアンツアーの選手たちが豊かな生活を送れるよう、欧米ツアーに目を向けなくても済むようなツアーに育てていきたいと語っている。

「今までは選手たちがアジアンツアーで良い成績を収めても、かえってそれが問題になっていた。
なぜなら、成功した彼らはいつの間にか欧州ツアーに行ってしまい、残されるのはいつも新顔ばかり、となるからだ。
それが悪いわけではないが、今回のような投資や新たなシリーズによって、才能ある選手たちがアジアに留まるようになればいいし、このツアーが単なる足掛かりのツアーではなく、人々が来てプレーしたくなるような念願の場所へと成長すればいいと思う」

PGAツアーやDPワールドツアーとの関係が悪化しているにもかかわらず、チョ氏はアジアンツアーが引き続き、他のツアーと密接に連絡を取り合っていくと主張している。

「我々は韓国PGAと『韓国オープン』など3試合を共催してきたし、『シンガポールオープン』や『ダイヤモンドカップ』など、日本ツアーともいくつか共催してきた。将来的には豪州ツアーとも同様に共催していければいいと思っている」

過去、欧・米・日・韓など様々なツアーと提携し、試合を共催してきたアジアンツアー。
今後も各ツアーと提携し、欧米の人気選手にもアジアンツアーの試合に参戦してもらいたいと、考えている。

「私はサウジがバックにつく新しいシリーズで行なうことが、規範外のことだとは思っていない。我々のビッグイベントには、世界ランク200位以内の選手なら誰もが参加できるカテゴリーを設けているが、エリートアマチュアや各ツアーの賞金王も参加できるようにするつもりだ。来るもの拒まずのスタイルでやりたいと思っている。アジアンツアーの会員である必要はない」とチョ氏は語っている。

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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