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【ISPSアンバサダーインタビュー・第6回】日本ゴルフ界の第一人者「尾崎将司」

ISPSアンバサダーインタビュー・スペシャル

尾崎将司

©Yoshitaka Watanabe

1947年1月24日生まれ。73歳。プロ通算113勝。賞金王12回。世界ゴルフ殿堂入り。青木功、中嶋常幸とともにAON時代を築いた。レギュラーツアーにこだわり、最近ではジュニア教育にも注力。

若い子たちが一生懸命練習している姿を見るのが好きだ!

ジャンボアカデミーの生徒を指導する尾崎。ジャンボアカデミーには40数名の生徒がいるけど、その中でも一生懸命やっている人間が大好き。

チャリティ活動は難しい。人から寄付金を受け取るのは心苦しい

プロ通算113勝を挙げ、日本のゴルフ界の一時代を築いた第一人者、ジャンボ尾崎。

世界殿堂入りも果たしているが、今もなお現役にこだわり、シニアツアーには一切出場していない。

そんなジャンボも、最近ではコロナ禍ということもあり、自身のゴルフよりもジュニアや若手の育成に注力している。

そんなレジェンドの近況をお伝えしよう。

©Yoshitaka Watanabe

支えてくれている人たちに、できる範囲でお返しをしなければいけない。

支えてくれている人にお返ししないと……

―今回、ご自分の名前を冠したチャリティトーナメントが開催されましたが……。

尾崎 ここ10年くらい天災とか疫病とか、経験したことがないことがずっと起こってる。
その度にチャリティ活動はやっているが、ボクたちはいろんな人に支えられてやってるんだから、できる範囲でお返ししないといけないよね。

―以前、東日本大震災の時も活動されていましたよね?

尾崎 そうね。でもチャリティ活動は難しい。
自分もあの時は船橋の駅前で募金活動をしたことがあったけど、人から500円、1000円をもらうのは心苦しかった。
それだったらもうちょっと稼いでいる人間がスッと出せればいい。
今回やったISPSのチャリティトーナメントのように賞金から1~2割カットして出せるようなのが一番いいんじゃないか、といつも思ってたんだ。
帽子にサインをしていくらもらう、というのはあまり好きじゃない。

―通常であれば普段、試合で稼いでいる選手たちに寄付をして欲しいと言えるかもしれませんが、今年はコロナの影響で試合がないので大変ですね。

尾崎 男子はまだ4試合しかやっていないから稼ぎどころがなくてしんどいかもしれない。
でも自分が投資していると思えばいい。

―今後も半田会長と二人三脚でチャリティなどの社会貢献をしたいと思いますか?

尾崎 あまりそういうのは興味がない。
自分は今まで、わがままで好き勝手やってきたけど、正直な話、どうやったら若い子達がいい練習をして成長していくんだろう?と、それしか自分の興味はないね。
時々、半田会長にケツを押されながらチャリティ活動をやろうと言われればついていくよ。

―やりたいことは、若い選手を育てるということですね?

尾崎 そうだね。それが一番楽しみ。
僕は若い子が一生懸命練習をしている姿を見るのが一番好きなの。
うち(ジャンボアカデミー)には40数名の生徒がいるけど、その中でも一生懸命やっている人間が大好き。
ちょっと気を抜いて緩んでたりしたら、カミナリを落とすんだけど、そういうことも非常に楽しい。
全員プロ入りを目指しているけど、プロたちと一緒にプレーすれば、プロ入りは遠い道のりだと思い知らされるから、それはそれでいい「カベ」になるんじゃない?
みんな成功してくれれば嬉しいんだけどね。

©産経新聞社

2011年3月、東日本大震災直後に船橋駅で中央学院大ゴルフ部の学生と被災地への募金活動を行なった。

©Yoshitaka Watanabe

ISPSのチャリティトーナメントのホスト役を務めたジャンボ。大勢のメディアが詰めかけた。

「他の日本にはないような練習環境で若者には悔いのない、いい練習をしてもらいたい」

©Yoshitaka Watanabe

日米で最も違うのは練習環境

―ジャンボさんがジュニアを育てるNPO法人「ジャンボスポーツ・ソリューション」は、一昨年の6月に設立でしたね。半田会長も特別顧問になっていますが……。

尾崎 自慢になるが「練習をする場所」がここにはある。
日本の他の場所にはないような環境があるから、それを今の若い子達に使ってもらいたい。
いい練習をして、悔いのないような過ごし方をしてもらいたいね。

―具体的にどんなことをジュニアに教えてるんですか?

尾崎 手取り足取りレッスンをしているわけではなく、私はずっと「裏方」であり、「コース管理人」だから、できるだけいい状態で彼たちに練習させてあげたいというだけ。
手取り足取り教えられるよりも、本人が自分で努力して作り上げていけば、大きなものになる。
そういう姿勢が一番いいと思うんだよね。
半田会長もそういうことを理解してくれていてバックアップしてくれているのでありがたい。

―では、ジュニアを教育する上で何が重要ですか?

尾崎 キリがないけど、「基礎体力の養成」と「基本の反復」だよ。一番大事なことはこの2つ。
今の子供と我々の時代とは全然違う。
今ははるかにフィジカルが違う。
栄養生理学とか、医学とかも変わってきてる。
肩が痛いとか、ヒジが痛いとか言われれば、アドバイスすることはちょっとできるけど、その程度。
細かい指導はしていないね。
まずはみんな体を作ることが先決!

―ISPSのチャリティトーナメントに10名の生徒さんが出場しましたが、プロと一緒にラウンドするというのはどうでしたか?

尾崎 スポーツというのは比較論だから、自分がどういうレベルにいるのか、ということをわからないといけない。
そのためには自分よりもうまい人と回るのが一番よくわかる。
プロ3人相手に2日間、どれだけいろんな勉強ができたか、彼たちにとっては非常に大きなことだよね。
プロ3人とアマチュア1人というペアリングはなかなかないと思うけど、もっとできると期待してたんだろうけど大した成績を挙げられなくて、おそらく後で私にだいぶ怒られるでしょう(苦笑)。
でも、彼たちもコロナ禍の中でなかなかゲーム感覚や試合勘を養えない訳だから仕方がない。
とりあえずは復習。良い反省ができれば、次に向かうことができるからね。

―アメリカと日本のジュニア育成の環境は雲泥の差と言われていますが、アメリカに近付くにはどうなればいいですか?

尾崎 昔は特にジュニアが練習する環境が非常に少なかった。
でも最近は各ゴルフ連盟の方々がいろんないい条件で練習させてくれる。
学校が終わってからコースで練習できたり……。ただ日本の場合は練習場に差がありすぎるね。
アメリカでは一番いいところに練習場があって、ボールは打ち放題、いろんな練習ができる。
日本はそういうコースがないからみんなアメリカに行きたがる。
そういう意味ではうちはそんなに環境的には悪くないと思うよ。

©Yoshitaka Watanabe

ジュニアに対しては、普段から手取り足取り指導することはないが、時々「喝」を入れながら、裏方として練習場整備にあたったり、アドバイスを行なうという。

笹生優花と世界のゴルフ

―笹生優花選手も時々練習に来るんですよね? 彼女は世界一を目指してますが、なれると思いますか?

尾崎 なれると思うね。飛距離もアメリカに行っても負けないんじゃない?
あの体の強さは努力の賜物。
そりゃあ親父の教育も大変なことだと思ったけど、それにめげずに努力してるじゃん。

―大坂なおみのようになれます?

尾崎 ああ、面白いね~!
あの体の強さとヘッドスピードは男子レベル。
もうちょっとしたら、性別チェックを受けろって言われるんじゃない?(笑)
うちの練習場で275ヤードのネットに、ちょっとフォローの風が吹いたらキャリーするんだから。
ということは転がったら300ヤードは行くということ。
今までにそんな女子はいないよ。
原英莉花が頑張ったって、20ヤードはキャリーで負ける。
ああいうのがいるとは思わなかったよ。
大坂なおみもすごいけど、ハーフはいいのかね?
両方の国のいいところが取れるのかも。

―世界のゴルフについてお聞きしますが、男子ツアーはダスティン・ジョンソンらが強い中、日系人のコリン・モリカワも全米プロで勝ちましたね。こういう傾向については?

尾崎 昔と違って、ゴルフに向かってくる層が全然違うよね。
D・ジョンソンにしてもB・ケプカにしても、みんなメジャーリーグでも通用するような人間がゴルフに向かってきてる。

―昔はそういうところに行けない人がプロゴルファーになってたり……

尾崎 そうだよ~。俺なんか、世界の中でも大きい方だもん。
俺よりも小さい人間は世界にいっぱいいた。
そういう意味では体格が変わった。
運動能力も全然違う。

―松山英樹については?

尾崎 日本では松山しか通用してない。
やっぱり日本の賞金王がメジャーに行ってもなかなか予選も通らないじゃない?
それに比べれば松山は優勝争いをしてるし、松山と次に続く選手との差はあるわな。

©Getty Images

2010年、世界ゴルフ殿堂入りを果たし、池田勇太(左)、石川遼(右)に祝福された。

毎年の恒例行事「ジャンボ尾崎ジュニアレッスン会」。ジャンボ軍団であり弟の健夫、直道の他、飯合肇、金子柱憲、川岸良兼、原英莉花らも参加。

©Getty Images

原英莉花もジャンボのジュニアレッスン会に参加し、ジュニアの指導にあたっている。

©ISPS

「ISPS HANDA医療従事者応援 ジャンボ尾崎記念チャリティトーナメント」表彰式でスピーするジャンボ。右は優勝した谷原秀人。

今年は1ラウンドもしていない

―ジャンボさんの近況を教えてください。

尾崎 体調はあまりよくないし、こういうコロナ禍の中でトレーニングしたり練習する意欲がわかないね。
だからこのところ運動不足。
運動といったら雑草を刈ることくらいだよ(苦笑)。
難しいよな、どうやって体調維持していけばいいのか。

―来年は?

尾崎 俺も来年は74歳。今回の新型コロナのせいで、やる気がどんどん失われていくよ。
とりあえず来年もどうなるかわからないだろ?
元通りなんて、来年じゃ難しいだろ?
そうなると「草刈り」に専念かな…(笑)

―今は球打ちはしています?

尾崎 5月頃から全然してない。ただ子供達の練習を見てるだけ。
パターもアプローチもしていない。
正直何のためにやるのか、回答が見えなくなっちゃった。
厄介だ。
自慢じゃないが、今年は1ラウンドもしていない。ゼロ!
今までの人生で球を打たない、ラウンドしないというのはありえなかった。
昔は少々のケガでも、痛くても試合だけは出ようとする気持ちはあったからね。

―最後に今の男子ツアーについて、どう思いますか?

尾崎 悪いけど興味は全くない。
こうしたらいいんじゃないか?とか考えたこともない。
金子(柱憲)とかから話は聞くけど、それくらいだよ。
スポンサーになる人はゴルフを愛してくれる人だろう?
ということは男子のことだって、考えてくれてもいいわけだろう?
俺が言えるのはそれくらいだね。
男子はおもしろくないとかいう人もいるけど、それは見てる人間が決めること。
選手はそれなりに一生懸命やってるけど、なかなか認めてくれないだけの話なんだよ。
男子が認めてもらうには国内戦でバンバンと連勝するのが一番早いけど、今年は試合がない。
彼らは苦しい立場にあるよね。皆さんには、男子ツアーを応援してほしいと思います。

©Getty Images

1994年のダンロップフェニックスで、トム・ワトソンを1打差でかわして優勝したジャンボ尾崎。ダンロップフェニックスで3連勝、年間7勝を果たすなど、全盛期を迎えていた。

©Getty Images

1996年のプレジデンツカップに出場したジャンボ。右から世界選抜チームの尾崎将司、ビジェイ・シン、米国選抜チームのフレッド・カプルス、デービス・ラブⅢ。

Text/Eiko Oizumi
Photo/Yoshitaka Watanabe, ISPS, Getty Images

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