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【世界のゴルフ通信】From Japan 2021年 世界のトビラを開いた日本人たち

「日本人でもできることがわかったと思う」

松山英樹の「マスターズ」優勝は今後の日本のゴルフの歴史を変える!

「マスターズ」優勝直後、記者からの質問に答える松山英樹。

「子どもたちにはゴルフをプレーするうえで、楽しむ気持ちだけは絶対に忘れないでほしい」松山英樹
*『彼方への挑戦』(徳間書店刊)より引用

4月 オーガスタ女子アマ
梶谷 翼 Tsubasa Kajitani

©Getty

マスターズ
松山英樹 Hideki Matsuyama

©Getty

6月 全米女子オープン
笹生優花 Yuka Saso

©Getty

8月
東京オリンピック・女子ゴルフ銀メダル獲得
稲見萌寧 Mone Inami

©Eiko Oizumi

11月
アジアパシフィックアマ
中島啓太 Keita Nakajima

©Asia-Pacific Amateur Championship

アジアパシフィック女子アマ
橋本美月 Mizuki Hashimoto

©Women’s Asia-Pacific Amateur Championship

日本のゴルフ界に追い風が吹いた1年

2021年は、日本のゴルフの歴史において劇的な変化が訪れた1年となった。

昨年、2回目を迎えた「オーガスタ女子アマ」で日本の梶谷翼が優勝し、その直後の「マスターズ」では日本人で初めて松山英樹が優勝した。
1936年の陳清水、戸田藤一郎による日本人初の「マスターズ」挑戦以来、85年後のことである。
その間、青木功、尾崎将司、中嶋常幸、丸山茂樹、伊澤利光、片山晋呉ら日本を代表するトッププロたちが、メジャーの中でも最も思い入れの強い「マスターズ」で優勝しようと何度も挑戦してきたものの、高い壁に阻まれてグリーンジャケットに袖を通せなかった。
その「マスターズ」で松山が自身10回目の出場で、その悲願を達成。
それまでゴルフにさほど興味がなかった人の中には、ニュースやワイドショーなどで、連日この快挙が報じられているのを見て、松山が成し遂げた事の大きさを理解した人も多いだろう。
彼は優勝直後の記者会見で次のように語っている。

「これからゴルフを始める人とか、10代、高校生の方に(今回の優勝の)影響があるのかな、と思う。今まで、日本人だったらできないんじゃないか、というのがあったかもしれないけど、僕はそこを覆すことができたんじゃないかと思うので、そういう子たちにもっともっとプラスの影響を与えることができるよう、自分も頑張っていきたい」

今まで「日本人の優勝を見ることはないだろう」と思われていたオーガスタナショナルGCで、2週連続で日本人が優勝を成し遂げたことは、それだけで日本のゴルフの歴史を大きく変えた劇的な事件だった。

女子ゴルフにも日本人優勝の波

それから2か月後、次は女子メジャーで歴史的偉業が達成された。
米女子ツアー賞金女王に輝いた岡本綾子や国内ツアー最強の不動裕理、かつて世界ランク1位だった宮里藍らをもってしても優勝できなかった女子メジャーの最高峰「全米女子オープン」で、自身3回目の出場の笹生優花が日本人初優勝。
しかも畑岡奈紗との日本人対決のプレーオフを制して、である。
当時、笹生はフィリピン国籍として出場していたが(現在は国籍を日本としている)、日本のパスポートも有しているから、日本人初と言っても間違いではない。
松山の「マスターズ」優勝にどれだけの刺激を受けていたのかはわからないが、日本人2人で世界最高峰のメジャー「全米女子オープン」で優勝争いを演じるとは、過去の長い同大会の歴史の中でも初めてのことだ。

そして東京オリンピック・女子ゴルフでは、稲見萌寧が日本人初のメダリストに。
金メダルのネリー・コルダに肉薄する活躍を見せ、リディア・コーとのプレーオフの末、銀メダルを獲得した。
海外遠征よりも国内で勝利を積み重ねることに重きを置く稲見も、この快挙に対して
「私自身、世界で戦う経験が少ないので、どの立ち位置にいるのか、どういう状況にいるのかわかっていないが、プレーオフで戦ったリディア・コー選手も、金メダルのネリー・コルダ選手もすごい人たちというのはわかっているので、そこに挟まれて私が立っているのは本当にすごいこと」
と語っている。

男女2人のアマチュアがオーガスタ行きの切符を獲得

11月には2人の日本人アマチュアが中東で大活躍した。
「マスターズ」と「全英オープン」への出場権をかけて争われる「アジア・パシフィック・アマチュア選手権」(ドバイ)では世界アマチュアランキング1位の中島啓太が優勝し、続いて開催された「アジア・パシフィック・女子アマ選手権」(アブダビ)では、東北福祉大1年生の橋本美月が優勝。「オーガスタ女子アマ」と「AIG 全英女子オープン」「エビアン選手権」の3大会(うち2試合はメジャー)への切符を獲得したのだ。
これで今春のオーガスタには、少なくとも「マスターズ」ディフェンディングチャンピオンの松山英樹と世界ランク50位以内の金谷拓実、2人のアマチュアの日本人4人が集結することになる。

ゴルフは本人の努力や才能、時の運などに成績が左右されるスポーツと言われているが、2021年は何か、日本人ゴルファーにとって追い風の吹いているような1年となった。
これだけの男女ゴルファーの偉業が1年間で達成されることはいまだかつてなかったことだ。
松山や笹生のメジャー優勝も、稲見がオリンピックでメダルを獲得したことも、もちろん本人の持ち前の才能と弛まぬ努力の賜物。
さまざまな要因が絡み合い、積み重なり、ようやく機が熟した時に昨年のような結果として現れ始めたのかもしれない。

昨年の快挙は、偶然や単発のものではないだろう。
日本のゴルフの歴史は、昨年を機に大きく変わろうとしている。
松山の快挙をテレビで観た子どもたちが、松山のように世界のメジャーで優勝できる日を夢見てゴルフに取り組む「松山キッズ」が既に誕生しているかもしれない。

まずは今年、また誰がどんな快挙を達成するのか、今から楽しみでならない。

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images、USGA、R&A/Getty Images、Asia-Pacific Amateur Championship、Eiko Oizumi

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