• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Japan 「日本人男女メジャ...

【世界のゴルフ通信】From Japan 「日本人男女メジャーチャンピオンを輩出」若手選手の台頭が目覚ましい日本ゴルフ界

コロナがゲームチェンジャー?

「日本人男女メジャーチャンピオンを輩出」
若手選手の台頭が目覚ましい日本ゴルフ界

©JGTO

選手会主催の「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」の開催に向けて、尽力した時松隆光選手会長(左)と池田勇太副会長(選手会事務局長兼任)。

選手会の努力で試合を実現した男子ゴルフツアー

©Eiko Oizumi

石川遼副会長も時松、池田とともに、選手会による選手のためのトーナメント作りに尽力。

日本のゴルフツアーは、男女ともに大きな変革期を迎えようとしている。
本来とっくの昔に変わっていなければならなかった古い体質を引きずっていたが、コロナ禍に背中を押された、と言い換えてもいい。

背水の陣を敷き始めたのが男子ツアーだ。
試合数が激減し、ツアーの組織(日本ゴルフツアー機構=JGTO)も落ち着かないところでコロナ禍に襲われた。
2020年の試合数は、年初にアジアと共催だった「SMBCシンガポールオープン」を入れてもたったの6試合。女子に比べて元々の試合数が少なかったとはいえ、コロナ禍という条件は同じ中、8試合も少なく危機感は募った。

そこで目立ったのはツアー本体ではなく選手会の動きだ。
時松隆光選手会長とそれを支える池田勇太副会長(選手会事務局長兼任)、石川遼副会長らが中心となって、自分たちが主催する競技を企画。
2021年に実現させた。5月の「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」がそれだ。
「自分たちで何とかしないと」という気持ちを選手たちが持ったのは素晴らしいこと。
その反面、青木功会長率いるツアーの存在価値はどこにあるのか、という問題がある。
中心になって動いたのは池田大会実行委員長と時松大会会長。
いずれもバリバリの現役選手が試合を企画したり営業したりする難しさはあったはず。
ツアー本体に喝を入れるカンフル剤となり、今後のあり方を考えさせられる大会となった。

女子ツアーとネット動画配信について

©Getty Images

今季6勝と、圧倒的な強さを誇る稲見萌寧(右)と現在賞金ランク1位の小祝さくら。

一方女子は、コロナ禍でも14試合が行なわれ、今年も無観客は多いが、順調に試合が開催されている。
だが、JLPGAツアーが自分たちで行なうことを高らかに宣言しながら、いまだに実現できていない「ネット中継」の今後が気になるところだ。

全試合の放映権をJLPGAが手にするという方針を打ち出して以来、テレビ局や主催者の一部との話し合いが一向に進まない女子ツアー。
ネット中継については、自分たちが権利を持って行なっていくことを主張しているが、これは今のところ実現していない。

コロナ禍は、各大会が試合のあり方を考え直す機会ともなっており、今後への考えを形にする主催者も増えている。
特に無観客開催で経費が浮くことや、ナマで見られないのなら、とネット中継に力を入れる試合も増えた。
だが、ツアーが一貫したネット中継を行なっていないため、こちらもテレビ中継同様、主催者次第。
無料で見られるものもあれば、公式戦初戦の「ワールドレディス・サロンパスカップ」やツアー最高賞金総額3億円の「アース・モンダミンカップ」のように、有料のものもある。
当然、配信もまちまちで、配信サービスで有料の登録をしたからと言って、ツアーの試合全部が見られるわけもなく、戸惑うファンが増えているのが現状だ。
テレビ中継から有料ネット中継だけになった試合などもあり、過渡期とはいえファンへの〝露出〟という部分では、今後への大きな課題となっている。

コロナ禍の中、活躍が目立つ日本人の若手選手たち

©JGTO

今季は「フジサンケイクラシック」(2020年)、「関西オープン」(2021年)、「アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフ」(2021年)で3勝を挙げている星野陸也。国内だけでなく、「全米プロ」「全米オープン」「全英オープン」にも出場。東京オリンピック・日本代表選手。

©Eiko Oizumi

プロ転向後、JGTOツアー4試合目にしてツアー初優勝を果たした片岡尚之。東北福祉大出身で、金谷拓実の1学年上。

松山英樹が「マスターズ」に、笹生優花が「全米女子オープン」に優勝するなど、海外メジャーでの日本人の活躍が目立つ年となっているが、日本でプレーする選手たちも男女ともに明るい話題が多い。

今季3勝している25歳の星野陸也が引っ張る男子ツアーは、若い力がみなぎる激戦が続いている。
「東建ホームメイトカップ」で勝った金谷拓実と、「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ」で優勝した片岡尚之は揃って23歳だ。
「日本ゴルフツアー選手権」優勝の木下稜介も30歳と、新しい風が吹き始めている。

年々、シード選手の平均年齢の低下傾向が見られる女子ツアーだが、今年は18戦5勝の稲見萌寧(7月11日時点でのデータ)が圧倒的な強さを見せている。
昨年の14試合と併せてのロングシーズンのため、安定した成績の小祝さくらや、古江彩佳との賞金女王争いも気になるところ。
昨年公式戦2勝の原英莉花もいる。
「全米女子オープン」優勝の笹生がオリンピック後には日本国籍にすると公表しているが、主戦場をすぐに米国に移すのか。
2019年「全英女子オープン」優勝の渋野日向子の今後も含めて、相変わらず目が離せない。

2019年には渋野を中心にした1998年度生まれの〝黄金世代〟が注目されたが、古江ら2000年度生まれも実力者揃い。
1999年度生まれで、自ら「すき間世代」と言う稲見の活躍もある。さらに2001年生まれの笹生らもおり、終わりのない群雄割拠の戦国時代が続いている。

男女ともに、国内だけでなくメジャーで結果を出した日本ゴルフ界にとってエポックメイキングな2021年。
これを今後につなげられるかどうかは、選手たちの活躍だけでなく、ツアーやその周辺のゴルフ界すべてにかかっている。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

関連する記事