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【世界のゴルフ通信】From Asia 世界アマチュアランキング1位の金谷拓実が日本人初の「マコーマックメダル」受賞

世界のゴルフ通信・アジアのゴルフ事情を紹介します。

アジア人のメジャーへの道

世界アマチュアランキング1位の金谷拓実。アマチュアランク1位の者に贈られる、「マコーマックメダル」を受賞した。スポーツ選手のマネージメント会社「IMG」の創設者マーク・マコーマックにちなんで名づけられた名誉ある賞だ。

タイガーを破ったYEヤンに次ぐ逸材は?

YEヤンが「全米プロ」で優勝して早11年。アジアのゴルフファンにとってあの光景は、象徴的なイメージとして今でも頭に焼き付いている。

ヘーゼルティンナショナルGCで開催された「全米プロ」で、YEヤンはタイガー・ウッズを退けて優勝を果たした後、18番グリーン周りで、自分のゴルフバッグを高々と掲げて、喜びを表していた。

この勝利は、さまざまな意味で大いに意義深いことだった。

大会前の世界ランキングで110位だったヤンが、優勝候補に挙がっていたウッズに3打差で優勝したのだ。

ウッズが、54ホール終了時点で首位をキープしていながらメジャー大会で優勝できなかったのは、これが初めてだったので、ゴルフ界は大いにどよめいた。

そして世界中の新聞各紙は、それまで無敵を誇っていたウッズが、いかにして一敗地に塗れることになったかを、全面で書き立てた。

ウッズの凋落をめぐって一つの時代の終わりが語り尽くされると、著名なゴルフ解説者たちは男子プロゴルフ界全体、とりわけ、アジアの選手たちに目を向けるようになったのだ。

新しいエキサイティングな時代の幕開けだ。

©Getty Images

「全米プロ」でYEヤンが優勝したのは2009年のこと。それ以来、いまだにアジア人メジャーチャンピオンは生まれていない。(シニアでは、井戸木鴻樹が2013年「全米プロシニア」に優勝)

メジャー優勝に挑戦したアジア人選手たち

YEヤンが偉業を成し遂げるまでにも、アジア人選手がメジャー大会で好成績を残した例はいくつかあった。

1971年全英オープン2位の呂良煥、1980年全米オープン2位の青木功、1985年全米オープン2位の陳志忠などがそうだ。

そのほか、2004年マスターズではKJチョイ(崔京周)が3位に入賞している。いずれも惜しいところまで行ったが、栄冠には届かなかった。

ある「事情通」は、ヤンの優勝はアジア出身の男子プロがメジャー制覇の栄誉に、あふれんばかりに名を連ねていく転機になるだろうと言った。

だが、あれから11年。

残念ながら、こうした予想は的外れであった。あふれるどころか、その滴りさえも見えていない。

松山英樹は、何度か優勝争いをした経験があるし、2017年のロイヤルバークデールでの全英オープンでは、李昊桐(リー・ハオトン)が最終日に63アンダーで3位に急浮上したことがある。

この時に李と一緒に回ったアーニー・エルスが、世界で最も人口の多い中国から初の「メジャーチャンピオン」が誕生するのも時間の問題だと言ったほどである。

さらにTPCハーディング・パークで行なわれた今年の全米プロでは、李が65の5アンダーで2日目を終え、エルスはこのことを言い当てていたのだと思われた。

しかし結局は17位に終わり、「アジア人のメジャーの歴史のトビラは開かれた」との見方は崩れてしまった。

世界ランク順に言えば松山英樹(日本)、イム・ソンジェ(韓国)、ジャズ・ジェーンワタナノンド(タイ)、アン・ビョンフン(韓国)、今平周吾(日本)、カン・ソンフン(韓国)、キム・ジュヒョン(韓国)、李昊桐(中国)らが名を連ねているが、このほかにも、石川遼(日本)、キム・シウー(韓国)、CTパン(台湾)、キラデク・アフィバーンラト(タイ)など、アジアの大舞台で活躍中の実力派ゴルファーがひしめいている。

この中に、次のステップへの意欲と精神的な強さとを兼ね備えた選手がいるかどうかは、今後数年で明らかになることだろう。

今年の全米アマにも出場し、33位に入った中国のアーロン・デュー。

©︎PGA of America

今年の全米プロで一時首位に立った中国の李昊桐(リー・ハオトン)。

アマチュア男子にも明るい兆し

「全米プロ」翌週にバンドンデューンズ・ゴルフリゾートで開催された「全米アマ」には、アジア太平洋ゴルフ連盟加盟7か国から14名の選手が出場した。

内訳は、中国から5人、日本から4人、台湾、韓国、マレーシア、シンガポール、タイから1人ずつである。

彼らの多くは米国の有名な大学ゴルフ部に在籍し、コリン・モリカワらのようにプロ転向直後から活躍する選手も少なくないだろう。

特に、中国からの3選手に注目したい。

19歳で左利きの林鈺鑫は、「アジア・パシフィックアマ」で2度の優勝経験がある。現在は、南カリフォルニア大学の2年生だ。

18歳のアーロン・ドゥはカリフォルニア大学バークレー校の1年生、17歳のジン・ボーはカリフォルニアにあるフューチャーズ・アカデミーに通い、今秋、オクラホマ州立大学に入学する予定である。

ジン・ボーの兄のジン・チェンは「全米アマ」に3回出場、2015年の「アジア太平洋アマ」で優勝すると、2016年には「マスターズ」出場を果たした。

また、妹のジン・ジアルイ(ジョイス)は2019年の「全米女子アマ」でメダルを受賞している。

もちろん、米国の大学に進むほかにも、富や名声を得る方法はある。

日本の金谷拓実がいい例だ。

2018年の「アジアパシフィックアマ」で優勝。世界アマチュアランキング(WAGR)で1位の座を確保し、先日、世界No.1のアマチュアに贈られる「マコーマックメダル」を受賞した。

これにより、来年の「全米オープン」「全英オープン」への出場権も獲得したのだ。

金谷拓実をはじめとして、アジア人2人目の「メジャー制覇」を目指す全ての選手たちには、大きな挑戦が待ち受けているはずだ。

いつかその日は来るだろう。しかし、その道は容易ではない。

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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