東京オリンピック、危険な猛暑
ゴルフの底辺拡大が目的。だが……
今年の夏、いよいよ東京五輪のゴルフ競技が霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)で行なわれる。
マラソンと競歩の会場が暑さを懸念して急遽、北海道・札幌に移転したにも関わらず、猛暑が予想される7月末から8月に、日本で一番暑いエリアと言ってもいい場所にあるコースで開催を強行するのは大きな危険をはらんでいる。
埼玉のこのエリアは通常、高温多湿。
出場選手の大半は、厳しいコンディションに慣れている上に、体も鍛えているが、ギャラリーとボランティアはどうだろう。
通常のツアー競技と違い、ゴルフを見慣れていない観客がやってくる。
屋外のボランティアは人数を増やして対応すると言うが、こちらも危険だ。
クールエリアを設けるなどの対策は立てているとは言え、クラブハウスに入れるわけではなく、逃げ場はない。
熱中症患者がどれだけ出るか。想像するだけで恐ろしい。
また、都内からの移動も時間がかかると言われており、渋滞もありうる。
都内の選手村から向かう選手たちは遅刻をすることなく到着できるのだろうか。
底辺拡大なのに入会困難なゴルフ場で開催
霞ヶ関CCはメンバーシップコースの中でも最も入会が難しい。
世界のゴルフ界が一つになって五輪競技にしたのは、底辺拡大のために他ならないが、それなのに五輪で見た会場でゴルフをしたくても誰もができるわけではなく、五輪以降、見に行く機会もめったにない。
これではレガシーになるはずもない。
もちろん、出場する選手たちは一生懸命プレーして五輪の素晴らしさを伝えてくれるはずだ。
だが、その一方で当初の目的を置き去りにした五輪であることは、始まる前からわかっている。
終わった後に何が残るのか。
問題点は何だったのか、五輪が終わった後、その検証と責任の所在を明らかにすべきだろう。
東京オリンピック・ゴルフの会場となる霞ヶ関カンツリー倶楽部。
1929年に創設された名門コースで、カナダカップなども開催されている。
2017年11月、トランプ大統領が来日した際、安倍首相は松山英樹とともに霞ヶ関CCでゴルフのプレーを共にし、もてなした。
2016年にブラジルで開催されたリオ五輪。ゴルフ競技は112年ぶりに実施された。写真は金メダリストのジャスティン・ローズ。
日本のゴルフに必要なのは生放送と72ホール完遂
短縮試合で2勝の今平が賞金王に。
日本のゴルフファンは気の毒である。
ゴルフ中継をナマで観ることはほとんどなく、悪天候の場合でも72ホールをやり切る試合を見ることができないからだ−−。
昨年の男子賞金王は、2勝を挙げた今平周吾だった。
だが、1勝目を挙げたブリヂストンオープンは折からの台風もあって36ホールに短縮。
2勝目のダンロップ・フェニックスはこれも大雨の影響で54ホールに短縮。
今平の勝利はいずれも72ホールを完遂していない。
いかなる理由があろうとも、勝敗を途中で決めるスポーツは世界中を見渡しても、日本のゴルフしかない。
日本で初めて行なわれたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」は悪天候で第2ラウンドの中止を余儀なくされながら、月曜まで延長して72ホールを完遂。
タイガー・ウッズの82勝最多タイ記録に花を添えた。
テレビも珍しく月曜まで放映して、ファンを堪能させた。
だが、日本は主催者やテレビ局の都合で、日にちを延長してまで試合を続けることはしない。
簡単に短縮する。
それが人気低迷の大きな一因にもなっていると思う。
録画放送ではゴルフの臨場感が味わえない
また、録画放送も日本の悪しき慣習だ。
渋野日向子が国内4勝目の大王製紙エリエールレディスで逆転優勝を遂げた瞬間、テレビは録画放送中だった。
放送が始まったときには、渋野の勝利はネット上ですでに知れ渡っており、ファンは逆転の臨場感を味わえずじまいだった。
この最低限2つだけでも、改変すれば、人気低迷にも歯止めをかけることが出来るのではないか。
だが、その気配が一向にないことが、ファンにとって悲しい現実である。
タイガー・ウッズが13年ぶりに日本参戦し大いに盛り上がったZOZOチャンピオンシップ。
男子ゴルフは人気がないと言われて久しいが、ゴルフ人気がないわけではないことが今大会で証明された。
2019年の賞金王に輝いた今平周吾。
無観客試合となったZOZOチャンピオンシップ2日目。
それでも世界のゴルフを一目見ようと、習志野CC周辺にはギャラリーが押しかけ、金網越しに観戦する人もいた。
台風の影響を受け、コースの一部は冠水、バンカーは淵も崩落したが、コース管理者たちの不眠不休の努力により速やかに回復した。
Text/Junko Ogawa