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【ゴルフ上達のメンタル法】vol.8「パットが入る」と「パッ トを決める」の違いとは?

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

今回のテーマは「パッティング」。

ただなんとなくボールに向かい、カップに入れようとするのと、ラインをしっかり読み、打ち出していく方向や距離感を見定めたら、できるだけそれに忠実にパットを決めようとするのとでは、結果的にカップインする確率は変わってくる。

まずはどのようなパッティングをするのかを、自分の中でしっかり把握することから始めよう。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

ベストだと思える軌道、スピードを決めたら、あとは迷わず、結果を気にせずにストローク

Illustration/Masaya Yasugahira

できるだけベストな軌道とスピードをつかむことに集中

ジャック・ニクラスはかつて、トーナメントの最終ホールで重要なパットを外したことはないとコメントしている。
ギャラリーの誰かがニクラスに、パットが入らなかった場面があったことを伝えると、ニクラスは「私がパットを外したんじゃない、ボールがカップを外したんだ」と答えた。

これは重要な違いだ。あなたのやるべきことは、「パットを決めること」。つまり「意図したパットを実行すること」だとしよう。
もし入れば、それを「パットが(カップに)入る」と呼ぶことにする。

考える時でさえ、使う言葉はとても重要だ。
完璧なラインと完璧な速度を判断しようとすると、間違うことはたくさんある。
自分のタスクを、「できる限りベストな軌道とスピードを選ぶ」というシンプルなものにすることで、失敗も少なくなる。

ベストな軌道を選び、ベストな感覚でスピードをつかみ、できる限りベストなストロークをすれば、パットを決めることができる。
すべてのパットを入れることはできないかもしれないが、すべてのパットを決めることはできる。
どんなパットでも決められるという気持ちでプレーすると、自信につながる。パッティングでは、自信があるかないかで大違いだ。

パットを決めるために必要な心構え

ツアープロの中には、「ミスしても気にしない、と思ってパッティングをすると、最高のパッティングができる」と言う人がいる。
トーナメントで大金を手にするためにプレーしている彼らが、気にしないとは信じがたい。
彼らが言うこの「気にしない」の実際の意味は、「心配しない」ということなのだ。
パットが入るかどうかを気にするのは当然である。要は、パットを入れることができるかを心配しないということだ。

ショットの結果を気にしないふりをすることは、間違ったアプローチ法だ。
たいていの場合、ゆるんだ、だらしないスイングとなり、悪い結果を生む。
自分をごまかすのはやめよう。結果を気にするのは当然だ。
そうでなかったら、あなたはゴルフをしていないだろう。
だが、不安な気持ちを持たずして、気にすることはできる。
つまり、「正しく気にする」ことができれば、結果について心配することなく、パッティングのプロセスに集中し、専念できるようになる。
パットの軌道とスピードの判断に徹して、一瞬の迷いもなくセットアップとストロークを行なうことで、最高のパッティングができるようになるのだ。
ボビー・ジョーンズの言葉にあるように、「パットをできるだけうまくストロークし、結果を心配して、ストロークを台無しにしない」ことだ。

自分のルーティーンを信じることで、ストロークがスムーズになり、安定する可能性が高くなる。
パットが入るかどうかの心配から解放されれば、より多くのパットが入ることがわかるだろう。

徐々に範囲を狭めながら全体→部分を見ていく

「パットを読む」には、まず広い視野を持つことから始めよう。
土地の全体的な地形を見、次にグリーンの全体的な傾斜を見る。
最近の建築家は排水を考慮して設計しているので、グリーンの境界線にある、排水溝(最も低い場所)を探そう。
そして、パットに影響を与えるような芝目があるかどうかを判断する。

そのあと、より狭い範囲に焦点を合わせるようにシフトする。
ボールとカップの間の両サイドや、上り・下りのスロープなど、ボールのコロがる方向やスピードに影響を与える微妙なアンジュレーション(起伏)を探すこと。
特にカップ付近の最後の数フィートの目やラインを見てみよう。
そこはボールが最もゆっくり動く場所なので、重力と芝目が最も影響する場所だ。
ボールが通過すると思われるカップの縁にあるスポットを見つけ、ボールがドロップインするときにコロがってほしい速度を決める。

目だけでなく、足も使ってラインを読む

パットを読むとき、目だけでなく、足も使えるということは多くのゴルファーにとって大事な話だろう。
ボールとカップの間を(ただし、そのライン上を直接歩かないように)歩いてみよう。
人によっては、カップの向こう側へ歩き、それから反対側に戻るのが効果的と感じるようだ。
足元とバランス感覚にできるだけ意識を集中させる。
地面の傾斜で左右にどれだけ傾くか、上り坂、下り坂、平地を歩いていることをどれだけ感じられるかを体感してみよう。

そして、足で感じていることと目で見ているものを融合させる。
目だと錯覚を起こすこともあるので、迷ったときは足を信じてみよう。

目で見て、足で感じたことをもとに、ボールが自分の意図するスピードでカップに入るために必要だと判断した軌道をイメージして、カップからボールに向かってラインを辿ってみよう。
長いセカンドパットを残すことなく、1打目のパットを入れられるような最良の軌道とスピードを選択したい。

パットを決めるためのルーティーン

ラインを読み、軌道とスピードを判断したら、迷いなくパットしよう。
まずはボールの数歩後ろに立ち、イメージした軌道を見下ろす。
この時、軌道を見ながら1~2回素振りをする人もいる。
次に大きく息を吸って、息を吐ききって、落ち着かせる。
そして足で地面を感じながら、ゆっくりとボールに向かって前進し、ボールに正対する。
このとき、ボールのすぐそばで、軌道と平行に1~2回ストロークの練習をする人もいる。
フェースをボールの後ろ、軌道の始点に対して垂直にセットし、アドレスしよう。
ボールからカップまでの道筋を確認し、その軌道上にボールを打ちだそうと、はっきり気持ちを決めることだ。
少しでも疑問を感じたら、一歩下がってもう一度見てみよう。
最後に、ボールがコロがってほしい距離を、上り坂、下り坂の感覚を含めて、じっくりと見てみよう。
チラッとボールの方を振り返りながら、そのイメージを思い浮かべてみること。

そして、ゆっくりと息を吐き、腕の力を抜いて、イメージしたパットの距離に応じて、インパクトまでスムーズにストロークする。
パターを狙い通りの軌道に向かって、真っすぐ出すことで、パッティングがより安定する。
ラインに合わせるために、決してパットを押し出したり、引っかけたりする必要はない。意図的に変えるのは、ストロークの大きさだけだ。

そして、フィニッシュの形を数秒間キープすること。
姿勢を安定させたまま、ボールが軌道上にコロがっていく(できればカップに入る)のを、頭を上げずに見よう。
ボールの動きが止まるまで、前傾角度をキープしながら、伸び上がらないようにすることが大切だ。

パットが外れた後も考えなければならないことがある

©Eiko Oizumi

ボールとカップの間の傾斜などを歩きながら確認するキャメロン・スミス。

©Eiko Oizumi

カップの反対側、あるいは横から姿勢を低くして傾斜やラインを判断する。

©Eiko Oizumi

足の裏の感覚を使い、傾斜具合を確認する。

©Eiko Oizumi

ボールの後ろに座って、低い位置から傾斜具合を確認する。

打った後に必要なルーティーンもある

パット後のルーティーンを持つことで、グリーンを読む力と、自信を持ってパットする力のどちらも向上する。

もし、意図したとおりのパットができて、カップインしたり、あと一歩のところまでいったりしたら、「これがまさに自分が感じたスピードとラインだ」と言って、自分をほめてあげよう。
そうすることで、ラインを読み、ストロークするという成功のプロセスを強化し、自信をつけることができる。

スピードが完全には正しくなかった場合は、横に立って、グリーンの傾斜や芝目など、スピードを見誤る原因がなかったかどうかを確認する。
そして、パットした場所に戻り、パットした時の結果をもとに、スピードや軌道を修正して素振りをしよう。
ストロークを大きくしたり、小さくしたりして、正しい距離感を持ってボールをコロがすことが大切だ。

パットが予想と違う曲がり方をした場合、土地の形状、グリーン全体の傾斜、パットしたエリアを見て、次の2つのうちどちらか1つを見つける。
パットに影響するとは思わなかったものか、あるいはパットに影響すると思ったが、実際はそうでなかったものか。
より正しかったと思われる軌道を再度思い浮かべてみよう。

このパット後のルーティーンを行なうたびに、ラインを読む目とスピードを計る目がより磨かれる。
そして次のパットではどのくらいのストローク幅、どういう軌道、どのくらいのスピードで打てばいいかを自信を持って判断することができるのだ。

Illustration/Masaya Yasugahira Photo/Eiko Oizumi

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