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【ゴルフの夜明け】ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 欧州文化とオリエンタル文化が混在する国

世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第12回はボスニア・ヘルツェゴビナを紹介する。

欧州文化とオリエンタル文化が混在する国

ボスニア・ヘルツェゴビナ

第一次世界大戦の発端となった国であり、ボスニア紛争など、民族間の対立や抗争を繰り返してきた東洋・西洋の交差点

東はセルビア、南東はモンテネグロ、北東~南西はクロアチアと接する三角形の国。東ヨーロッパのバルカン半島の北西部に位置する共和制国家だ。サラエボ国際空港へは、ターキッシュエアラインズ、フライドバイ、カタール航空、ルフトハンザドイツ航空などが就航している。

©Sarajevo Tourism

ひき肉のグリル「チェバピ」は、ボスニア、セルビアでは国民食。

©Sarajevo Tourism

モスタール旧市街に位置する「スタリ・モスト」は16世紀(オスマン帝国時代)に完成した橋。1992年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で破壊されたが、その後再建。世界文化遺産に登録され、多くの観光客が訪れている。

©Sarajevo Tourism

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ。周囲をディナルアルプス山脈に囲まれている。第一次世界大戦の引き金となった1914年のオーストリア大公フランツ・フェルディナント暗殺事件を扱った博物館や、オスマン帝国時代のモスクなど、歴史的建造物が多く残る。

©Sarajevo Tourism

1984年に行なわれたサラエボオリンピック。そのわずか8年後にムスリム人VS セルビア人の「ボスニア紛争」が勃発し、現在では亡くなった人々の無数の墓がサラエボ市内のオリンピック会場跡地を埋め尽くしている。

©Sarajevo Tourism

紛争で破壊されたスキーのジャンプ台。現在もボスニア紛争の傷跡が、あちこちに残っている。

©Sarajevo Tourism

アドリア海に面する人口4300人ほどの小さな町ネウム。ボスニア・ヘルツェゴビナで唯一、海に面した地域で、20キロ足らずの海岸線が続くリゾート地だ。

©Sarajevo Tourism

同国中心に位置するイグマン山の羊と羊飼い。イグマン山はハイキングやスキーのデスティネーションとして人気がある。

©Sarajevo Tourism

モスタール付近のモゴリェロにはローマ時代の遺跡もある。

民族間の紛争が絶えなかった国の過去の遺産

バルカン半島の北西部に位置。国土がわずかにアドリア海に面するボスニア・ヘルツェゴビナ。
この地の歴史は古く、新石器時代には人類の定住地が存在し、洞窟壁画にも当時の生活の様子が描かれているという。
何世紀にもわたってローマ帝国、オスマン帝国、ハプスブルク帝国、ナチスなどによる争いの中心地だったが、特に1914年、首都サラエボでフランツ・フェルディナント大公が暗殺された事件が発端となった「第一次世界大戦」や、1992年に勃発したセルビア人とクロアチア人、ムスリム人との内戦「ボスニア紛争」は有名だ。
首都はサラエボで、1984年に冬季オリンピックが開催されたが、当時オリンピック会場に使用されていた土地には「ボスニア紛争」で亡くなった無数の人々の墓地が存在するという、悲しい光景が広がっている。

戦争の負の遺産も多く残る国家だが、一方でサラエボの旧市街・バスカルシヤのように、バザール(ショッピング)やコーヒーハウス、音楽、祈りの叫びなど、年齢、宗教、国籍を問わずあらゆる人々に愛され、真夜中まで賑わいを見せている街もある。
ビザンツ帝国(東ローマ帝国)やオスマン帝国、ハプスブルク帝国時代の素晴らしい建築物や、記念碑、博物館が点在し、サラエボの刺激的な歴史と多様性を物語っているのだ。

人口は政治的混乱や戦争により、1990年代以降、大幅に減少したが、現在は300万人以上で、主にムスリム人(50%)、セルビア人(31%)、クロアチア人(16%)の3つの民族と、ユダヤ人、イタリア人などが居住している。

歴史と伝統の建築物、文化が豊富なボスニア・ヘルツェゴビナ
観光業で劇的な成長

1990年~2020年まで、同国は世界観光機関による観光成長率で第3位となり、2017年以降、外国人旅行者の急増で劇的に成長している。
ローマ時代からの建築物も多く、中世の墓石、絵画など、芸術も多彩だ。

音楽はスラブ伝統の「コロ」ダンス、歌は「ガンガ」、「レラ」、そしてオスマントルコの「セブダリンカ」がポピュラーだ。
「セブダリンカ」とは愛、死、失恋をテーマにしたボスニアの情緒的でメランコリックな民謡。
「ガンガ」は民族的な伝統を受け継ぎ、荒々しく叫び合うように歌われる。

スポーツは、ハンドボール、陸上、ボクシング、サッカーなどが行なわれ、ボスニアのスター選手は、サッカーやバスケットボールの欧米の一流クラブで活躍しているが、ゴルフに関しては、まだ人気がない。

だが、2004年に「ボスニア・ヘルツェゴビナゴルフ協会」が発足し、翌年にはIGFに加盟。
現在は約200名のゴルファーが登録されており、ジュニアは経験豊かなプレーヤーに指導を受けることができるという。
プロは1人しかおらず、デヤン・サラン氏だけ。彼はゴルフの発展への支援やプログラムの開発などに取り組んでいる。

サラエボ・ゴルフクラブ

Sarajevo Golf Club

ボスニア・ヘルツェゴビナ初のゴルフクラブ

©Golf Club Sarajevo

サラエボの街を見下ろす、山々に囲まれた丘の中腹にあるコース。遠くに戦没者の慰霊墓地「コバチ墓地」も見える。サラエボ中心部から車で10分弱とアクセスもいい。

2023年には3ホール追加予定
活気あふれるクラブライフが楽しめる

©Golf Club Sarajevo

サラエボGCの男女メンバーは、毎週トーナメントに参加でき、表彰式は、ボスニア産のワインや地ビール、美味しい食事などで盛り上がる。

©Golf Club Sarajevo

クラブハウス内にはレストランも完備。ゴルファーだけでなく誰でも利用できる。サラエボの街を一望しながら、素晴らしい料理を楽しめる。フィレミニヨンが絶品。

©Golf Club Sarajevo

高台に立つお洒落なクラブハウス。男女ロッカールームやトレーニングルームも完備。

©Golf Club Sarajevo

広大な練習場が魅力。アプローチやパッティング練習場もあり、誰でも利用できる。

サラエボを見下ろす絶景コース

ボスニア・ヘルツェゴビナゴルフ協会会長が設計した、同国初のゴルフ場が、サラエボGCだ。
サラエボの街を見下ろすことができる、山々に囲まれた場所に位置するこのコースは、同国でたった1人のプロ、デヤン・サラン氏と協会会長が協力しながら造り上げたゴルフ場で、現在全長1468メートル、パー23の6ホール。
来年にはあと3ホールを追加し、合計9ホールにする予定だ。

距離は長くないが、丘の中腹に造られているため起伏があり、バンカーや池などのハザードを加え、挑戦的なコースに仕上がっている。
初級者から上級者まで幅広く楽しめるコースなのだ。

メンバーコースだが、一般ゲストも歓迎。クラブハンデを持つ、公認クラブの会員であることが必須で、空きがあればメンバーたちが出場するコンペにも参戦できる。

フォレストクリーク・ゴルフ&ロッジリゾートクリバヤGC

Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

サラエボ郊外のゴルファーズパラダイス

©Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

国有林に囲まれ、風が吹き抜ける自然豊かなゴルフ場。

R&Aも注目する最高水準のゴルフリゾート

©Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

クラブハウスにはレストランや「19番ホール」も完備し、最大90名までのグループを歓迎している。

©Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

トーナメントやジュニア育成イベント、トレーニング、レッスンなど、メンバーと一般ゲストのための魅力的なプログラムが用意されている。天候次第だが、基本的には年中無休だ。

©Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

←ホールインワン賞がかけられたホールもある。

©Forest Creek Golk & Lodge Resort Krivaja Golf Club

緑豊かな9ホールのゴルフ場。さらに9ホールを建設する計画があるという。

最高水準のサービスが好評の大自然に囲まれたコース

タジャン国定公園の森に隣接するフォレストクリークリゾートの中に、2013年、ゴルフ場がオープンした。クリバヤGCだ。
ここには宿泊施設もあり、さらにコースを拡大する計画があるという。
オーナーのハリス・デルジック氏は、ジュニアゴルフの発展にも尽力している。

このコースは全長1965メートル、パー33と非常に短いコースだ。
だが、難易度の高いホールもあり、3番ホールは至る所にOBや池があり、ボールをピンポイントでフェアウェイに運ばなければならない。
2打目ではクリーク越え、3打目で木々に囲まれた砲台グリーンに乗せることが求められる。世界で最も過酷なホールという人もいるそうだ。

クラブハウスには美味しい料理を楽しめるレストランや、バーなど、プラスアルファの楽しみがある。
R&Aはデルジック氏のこのユニークなリゾートに関心を示しているそうだ。
彼はゴルフと自然を愛し、最高水準のサービスのみを提供しようとしている。
練習施設も充実しており、プロショップやロッカールームも完備。存分にクラブライフを楽しめる。

ゴルフクラブ・ポスジェ

Golf Club Posusje

クロアチア国境付近、観光名所にも近いコース

©Golf Club Posusje

2006年12月にオープンしたゴルフクラブ・ポスジェ。開放的で緑豊かな地が広がっている。

モスタルの古い橋から45分
300日以上、晴れゴルフが楽しめるコース

コースから車で1時間半のところにある「デルビッシュハウス(修道士の家)」も観光名所。ブナリバーの上にそびえ立つ、断崖絶壁の場所に家が立っているのが面白い。

©Golf Club Posusje

山裾に広がり、ところどころフェアウェイにもアンジュレーションがあるのが特徴。

©Golf Club Posusje

コース周辺には、世界的に有名な観光地がいくつかある。これは、コースから車で約1時間のところにある「クラビツェの滝」。

南部に位置
観光とプレーを楽しみたいコース

2006年にオープンしたこのゴルフ場は、全長1946メートル、パー30の9ホールのコース。
同国南部に位置し、クロアチアとの国境にも近い。
また、古い橋のあるモスタールやスプリット、多くの聖母マリア巡礼者が訪れるメジュゴリエのような場所も車で1時間以内で行けるので、プレー&観光の両方を楽しみたい。

プロショップでレンタルクラブの貸し出しも行なっており、クラブハウスは更衣室やレストランも完備している。

Photo/Sarajevo Tourism, Golf Club Sarajevo,Krivaja Golf Club, Golf Club Posusje

Text/Susanne Kemper

スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。

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