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【ゴルフ上達のメンタル法】vol.14「最高のプレーをするためにゾーンを邪魔しない方法 」

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

人は誰でも「ゾーン」の中にいる。
間違った思考や感情の乱れが最高のプレーを妨げる

ゴルフ中継などで、毎ホールのようにバーディを取っている選手を「ゾーンに入った」と表現することがあるが、この「ゾーン」はごく一部の世界のトッププロしか味わえないものなのだろうか?
「ゾーン」とは実際、どんな世界なのかを紹介しよう。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

人は常に「ゾーン」の中にいる

Illustration/Masaya Yasugahira

「ゾーン」とは、集中力が冴え、あらゆるところが見えている状態であり、深い安心感と自信がある状態、そして恐怖から解き放たれる魔法の状態だ。
「ゾーンを見つける」と書かれたもののほとんどは、ゾーン内にいるときの感覚を認識することや、ゾーン内にいられない原因を説明することが主で、ゾーンを見つける方法を教えてくれるものではない。
ではなぜ、ゾーンを見つける方法を教えることができないのか?
それは、ゾーンは見つけるものではないからだ。
また、それは失われるものでもない。
自分と切り離されたものでもないのだ。
あなたがそれを見つけることができないのは、あなたが決して失うことがないから。
私たち一人ひとりは、常にゾーン内にいるだけでなく、実際、私たちの本来存在している状態である。
それは自然な心の状態であり、私たちが行なうすべての動作の背景に常に存在しているのだ。
私たちがいつもゾーンにいる状態を経験できない唯一の理由は、ゾーンを見つけようと必死になっており、失ったものとして見てしまっているから。
ゾーンにいると信じるかわりに、必死にそれを探そうとすると、かえってゾーンの邪魔となってしまう。
心をコントロールしようとするような方法で、自分の身体をコントロールすれば、ゾーンにいるのを妨げることになる。
ゾーンは身体と心の自然な同期なので、それらを2つの別々のものとして扱えば、自分の力を十分発揮できない状態に陥るのだ。

だからこそ、思うようなプレーができずに悩む上級者ゴルファーは、自分の思い通りになればもっといいプレーができると感じる。
自分の思い通りに、自然にプレーすると、ゾーン内にいるような感覚が得られるのだ。
実際、誤った思考や感情の乱れ、あるいは恐れが原因で邪魔が入らないときには、いつでもゾーンを経験することができる。
太陽が雲に隠されるように、ゾーンは邪魔によって隠れているだけで、消滅するわけではない。
雲が晴れると、太陽は輝き始めるが、太陽自体が輝こうとする必要はない。
その光は、雲に遮られることがない限り、常に利用可能なのだ。
同様に、ゾーンを経験するために、ゾーンの状態を人工的に作り出す必要はない。
混乱やネガティブな要因が消え去ると、自然な安心感が現れ、ゾーンの感覚が生まれる。

前後のショットのことは考えない

あなたが常にゾーンにいて、それがあなたの本来持っている自然な状態であるということは、「禅ゴルフ」の基本的な考え方だ。
身体と心を鍛え、統合することで、すでに最高レベルの能力を持っているという前提から、話を始めよう。
まずは、自分が自然に自分の最高のレベルでプレーできる能力を持っていることを忘れないこと。
何らかの邪魔が入るからこそ、常に最高のパフォーマンスができないだけだ。
また、自分がプレーできるレベルというのは、練習して、その打ち方を実行するための筋力、柔軟性、バランス、スタミナをどの程度発展させたかによって決まる。
その中で、身体と心を同期させて、パフォーマンスを最大化する必要があるのだ。
身体は常に現在にいる。
だから前に打ったショットや次のショットについて考えていない時、身体と心は同期する。
このような、身体と心を扱う特定の方法を取ることで、自由で自信に満ちた状態で、邪魔がない場合には、いつも最高のプレーを継続的にすることができるのだ。

これを続けていくと、自信と安心感が増し、自分自身に対する信頼を高め、能力に無条件の自信を持つほど、自分の本能に身を任せることができる。
それはまさに子供たちが楽しく遊べる方法であり、誰もがゴルフできる素晴らしい方法なのだ。

ユーモアのセンスを上げ、楽しめればうまくなる

©Getty Images
©Getty Images

全盛期のタイガー・ウッズは、強い精神力、集中力でプレーに臨み、バーディ連発の「ゾーンに入った」プレーを多く見せた。そしてパットが決まると、思い切りガッツポーズを決めて、高揚感を身体で表現した。

ラウンド中はあまり高望みしすぎず、不安を抱え込むことなく笑顔でゴルフを楽しめれば、自ずと「ゾーン内」で好プレーが期待できる。

目の前のショットに入る前に、不安や苦手意識などを感じると、「ゾーン内」でのプレーが難しくなる。

真のユーモアとは、他人を笑いものにすることではなく、自分自身をあまり深刻に考えないことであり、軽さと楽しさを持ち続ける態度をキープすることを意味する。
そして、ゴルフ場で自分自身についてあまり深刻に考えすぎないようにすれば、状況に合ったプレーを期待できるのだ。
非現実的な期待は、大きな失望を引き起こすが、それによってユーモアのセンスを維持し、ラウンドを楽しむことが難しくなる。
また、同伴プレーヤーたちにとっても楽しいものではない。
有名なゴルファーたちでさえ、毎回フェアウェイやグリーンをヒットするわけではなく、必ずしもすべてのショットが成功するわけではない。
それらを達成するためには、練習やラウンドの場数が必要なのだ。
長年にわたる練習、何千球もの打球練習、何百回ものラウンドが必要だが、ツアープロと比較して練習やプレー経験が少ないハンデ15の人が、フェアウェイやグリーンを外したり、パットを外したりしたときに、なぜそんなに失望したり驚いたりする必要があるだろうか?
もっと現実的な見方をするようになれば、どのようなラウンドでも調子の良し悪しがあることを理解し、自然にユーモアのセンスを持つことができるのだ。
それによって、より楽しい時間を過ごすことができ、友人たちからも感謝されることだろう。

私が行なったある企業の講演中、1人の男性が手を上げ、「月に1回か2回しかプレーしないし、練習する時間もないんですが、上達するアドバイスはありますか?」と質問した。
聴衆の中には、練習やプレーの回数が増えなければ上達は望めないと思って笑っている人もいたが、「実はアドバイスがありますよ」と私は答えた。
「期待値を下げて、ユーモアのセンスを上げてください」と。
多くのゴルファーは、もっと上手くなればもっと楽しめると思っているが、実はその逆。
もっと楽しめたら、もっと上手くなるのだ。

Illustration/Masaya Yasugahira
Photo/Getty Images

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