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【ゴルフ上達のメンタル法】vol.16「ミスしても、次打でナイスショットを打つための心のルーティーン 」

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

ミスしたショットのことを考えたり 悪い結果をイメージするとナイスショットの妨げとなる

ルーティーンといえば、打つ前の「プレショット・ルーティーン」を思い浮かべる人も多いと思うが、実は打った後の「ポストショット・ルーティーン」も大事だ。
ミスショットを打った場合でも、次のショットで同じミスを繰り返さないように、ネガティブな思考をいったんクリアにして、自信を持って臨もう。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

プレショット・ルーティーンとポストショット・ルーティーン

Illustration/Masaya Yasugahira

前号では、ショット前の正しいルーティーンの重要性についてお伝えした。
後先のことを考えず、ショットの瞬間に集中し、結果ではなくプロセスに焦点を当て、リラックスした、流れるようなスイングを身につけるために役立つものである。
多くのゴルファーは、ショット前のルーティーンの重要性については理解しているが、打った後の「ポストショット・ルーティーン」の重要性についてはほとんど理解していない。
打ったショットに対してどのような反応をするかが、次のショットに影響を与える考え方(思考)を生み出すのだ。
今号では、一貫性のある効果的な「ポストショット・ルーティン」を編み出すことが、ネガティブな思考をクリアにして、感情をコントロールし、次のショットに自信を持つのにどのように役立つかを探求していくことにする。

打ったショットの結果に対する通常の反応

ナイスショットに対する私たちの通常の反応は、瞬間的にポジティブな感覚であり、あまり感情的なものではない。
時には幸運だったと思い、いいショットを打てたのに、自分自身はほとんど関係ないことのように考えるものだ。
しかし、ミスショットに対する反応は、嫌な感覚の上に多くのネガティブな感情があり、自分を責め、自分についてのネガティブな思考を抱きがちである。
例えば、「何が間違っているんだろう!?」というような自分自身に対するネガティブな思いを抱いたり、「バカ! アホ!」といった罵声を自分自身に浴びせるのだ。
また、完璧ではないが、それほど悪くはないレベルのショットに対しても、私たちはネガティブな思考を生み出すことがある。
そのショットは自分が思っていたものとは違う、という思考だ。

こうなると、ナイスショットから自信を得るのではなく、ミスショットによって自信を失ってしまう。
ネガティブな面に焦点を当てることで、次のショットではうまくいかないことばかり考えてしまうのだ。
悪い結果を恐れることは、自信を持ってこのような球を打ちたいと心に決めた上でスイングをする際の邪魔になってしまう。
私たちは前打のミスを二度と犯さないように、コントロールされたスイングをしようとするが、前のショットの逆方向に過剰補正を行なうことで、逆に恐れていた悪い結果を生み出してしまうのだ。
それからさらに心配になり、プレーのレベルが下がっていく悪循環を作り出してしまう。

ナイスショットしたら大いに喜び、楽しもう。
ミスショットしたら自分を責めるのはやめ、「消去と置き換え」を行なおう

©Getty Images

バンカーショットでミスをして怒りをぶつけるエミリアーノ・グリジョ。

©Getty Images

終わったプレーを思い出しながら、ガッカリしているポール・ローリー。

©Getty Images

ミスショットに対して、怒りのあまりクラブを地面に叩きつけるブルック・ヘンダーソン。

成功を積み重ね、失敗から学ぶためには?

そこで、ショットの結果を次の3つのカテゴリーに分けて考えてみよう。
①非常に良い結果、②一部成功、③非常に悪い結果、である。
以下にそれぞれの「ポストショット・ルーティーン」を説明しよう。

①非常に良い結果の場合

まず第一に、その結果を楽しむこと!
スイングがどれだけ良かったかや、ボールが目標に向かって進んでいく充実感を楽しもう。
ポジティブな感情を表現し、次のような言葉を口にして自信をつけよう。
「うん!これこそまさに打ちたかったショットだ!」と。自己肯定感を強めるために、プロセスを強調する2つのパートから成る言葉を言うようにしよう。
一つ目は「いつもこんな風に打つんだよ……」だ。
そして二つ目のパートは「私が……する時」と始まる言葉を話すこと。
準備やスイングの要点についての何かを含めるように口にするのだ。
ただし、(打つ技術について考えるのではなく)スイングの感覚に焦点を当てる方が良い。

例:「いつもこんな風に打つんだよ、ショットのイメージが明確な時に」。
または「……心を落ち着け、安定感を感じるために呼吸をする時に」、「……どんな球を打つのかを決め、思い通りにスイングする時に」などなど。
あるいは、もっと一般的な言葉にすることもできる。
「いつもこんな風に打つんだよ、プレー前のルーティンをうまくこなす時に」。
または「……自分のスイングのカギを信頼している時に」といった具体的な言葉にしてもいい。

②一部成功の場合

完璧ではないが、そんなに悪くないショットを打った場合の話。
例えば、ティーショットがフェアウェイ付近の浅いラフに着地した場合や、グリーンエッジから少し外れたところからアプローチショットをする場合、またはホールから約1メートル離れた場所で止まるロングパットなどがこれに当てはまる。
たいてい最初に言葉に出るのは、ナイスショットした時と比べて何がうまくいかなかったかについてのネガティブな批判だ。
私たちは、プッシュした、引っかけた、トップした、ダフった、打ちすぎた、ショートしすぎた、左に行きすぎた、右に行きすぎた、などと言う。
もしネガティブなことしか考えなければ、次のショットで自分のスイングを信頼するのは難しいだろう。
否定的な言葉を言う代わりに、まずは「惜しかった」と言ってみよう。
つまり、意図したスイングやショットから、さほどかけ離れてはいなかったことを意味する言葉だ。

次に、できるだけ多くのポジティブな要素を言葉にしてみよう。
例えば、良い弾道だった、きちんと飛距離が出た、クラブフェースやパターフェースでしっかりとした打感を感じた、などだ。
そして、「消去と置き換え」と私が呼んでいることをやってみよう。
その場にとどまり、セットアップとターゲットをチェックし、あたかもそこにボールがあるように、実際のショットでやってみたかったスイングを実際のスピードで1回以上行なうのだ。
そのショットと実際のショットとの違いを感じ、次のショット前のルーティーンを行なうことで、正しいセットアップと感覚を取り入れることができるようになる。

③非常に悪い結果の場合

非常に悪いショットに腹を立てることは、珍しくない。
数秒間感情的になることは大した問題ではないのだ。
怒ってもいいが、それから立ち直ろう。
まず、非常に悪いショットは、ほとんどがメンタルのミスによるものであることを認識すること。
前のショットから次のショットへの間にスイングの仕方を忘れることはない。
何かが邪魔をしているのだ。
怒りを乗り越え、自分のミスから学ぶために、自分自身にネガティブなことを言ったり、自分を悪く言ったりするのはやめよう。
友達が苦戦している時に、罵声を浴びせたり批判したりしないだろう。
そういうことをすると、ますます結果は悪くなる一方だ。
だから、自分自身の友達になって、自分を責めずにただ「それはいつものスイングじゃないな。どこから来たんだろう?」と言ってみよう。
そして、「消去と置き換え」に集中しよう。
ショットに対する初期のネガティブな反応やイライラ感を深呼吸や数回の呼吸で和らげ、落ち着かせよう。

次に、良いスイングで悪いスイングを置き換えてみよう。
実際のスピードで前のショットのスイングを行ない、自分でいいと思うスイングができるまで続けるのだ。
そして、もしもっと良いメンタルの状態でそのスイングをしていたら、ショットはうまくいっていたはずだ、と自分に言い聞かせよう。
ターゲットから大きく外れたショットが出るのは、おそらく準備不足や、弾道に対するイメージの欠如、または結果への心配からくる緊張などが原因だ。
これらの可能性について考え、次のショットのためにより良い準備をすることを心がけよう。

これらの3つの禅ゴルフの「ポストショット・ルーティーン」は、プレーの上達に役立つ。
自分のミスから学び、悪いスイングを減らし、成功体験を強化することで、より少ないストレス、もっと大きな自信、そしてより良いスコアでプレーすることができるのだ。

Illustration/Masaya Yasugahira Photo/Getty Images

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