ゴルフの経済を知ればビジネスのヒントも見つかる!
今回のテーマは「近年の優勝賞金の上昇について」です。
メダリストの活躍を支えた日本のシャフトメーカーの技術力と繊細さ
パリ五輪が終わり、ゴルフ競技の男子金メダルはスコッティ・シェフラー(米国)、銀メダルはトミー・フリートウッド(英国)、そして銅メダルは松山英樹が獲得した。
ゴルフは他の競技と違い、上位に来た選手がどんなクラブを使っているかにも注目が集まるところだが、中でもメダル獲得者が使用しているドライバーのシャフトについて注目した。
すると、日本メーカーのシャフトが表彰台を独占していることがわかった。
金メダルのシェフラーはフジクラ、銀メダルのフリートウッドもフジクラ、銅メダルの松山はグラファイトデザインである。
女子は金メダルのリディ・コー(ニュージーランド)が日本メーカーの三菱、銅メダルのリン・シユ(中国)も三菱である。
なお、銀メダルのエスター・ヘンゼライト(ドイツ)は、以前はフジクラを使用していたが、オリンピックでの使用シャフトは執筆段階では不明だった。
なぜここまで、日本メーカーのカーボンシャフトが強いのか。
カーボンシャフトの主要メーカーの出荷数から見ると、三菱ケミカル、藤倉コンポジット(フジクラ)、グラファイトデザインの順で、日本メーカーはプロの使用率を見ても世界で圧倒的に強い。
クラブメーカーはテーラーメイド、キャロウェイ、ピン、タイトリストなど海外ブランドが強いが、クラブに装着しているカーボンシャフトは、日本メーカーが強い。
その理由は、製造方法が繊細だから。
カーボンシャフトは、カーボン繊維シート(カーボン繊維に樹脂をコーティングしてシート状にしたもの)を鉄芯に巻き成型、焼成、鉄芯を引き抜き、研磨、塗装などの工程で製造する。
その巻き付ける工程では、カーボン繊維シートの形状や長さやスペックが違うものを20枚近く重ね合わせて製造する。
この作業では作業者の熟練度や器用さが必要で、日本の技術力が生かされている。
また、カーボン繊維のメーカーも東レ、帝人、三菱ケミカルなど日本メーカーの技術が高く、カーボン繊維シートは、シャフトメーカーの要望に合わせて製造している。
矢野経済研究所によると日本メーカーの2022年のウッド用のカーボンシャフトの海外を含めた総出荷数は、550万本に達しているという。
「パリ五輪」では、日本メーカーのシャフトがメダルを独占したが、「ロサンゼルス五輪」でもメダルの独占に期待がかかる。
Text/Hirato Shimasaki
Illustration/Koji Kitamura