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【世界のゴルフ通信】From USA 学生がPGAツアーで戦うプロになる近道

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大学生ゴルファーのプロへの近道
PGAツアー・ユニバーシティ

©︎USGA

9月の「全米オープン」でローアマに輝いたフロリダ州立大のジョン・パク。彼は現在、PGAツアー・ユニバーシティランキングで1位のアマチュアだ。

学生がPGAツアーで戦うプロになるための近道

PGAツアーに、プロゴルファーになるための新たな道が作られた。

それは、大学の試合に出場することだ。前からそうだったじゃないか? と思う人もいるだろう。

しかしこれは、PGAの下部ツアーに直接通じる道であり、PGAツアー出場への近道となるものである。

「PGAツアー・ユニバーシティ」と呼ばれるプログラムは、今年の夏に発表された。

この制度は、全米大学体育協会(NCAA)のディビジョンIでプレーする4年生が大学卒業後、コーン・フェリーツアーなどの下部ツアーでプレーする機会を提供することを目的としており、今秋からスタートしたものだ。

  コーン・フェリーツアーのブレンダン・V・ドーレン氏は「世界中の素晴らしい選手たちに、私たちのツアーに来て欲しいと思っています。このプログラムは、その大きな助けになるでしょう」と語る。

©︎PGA TOUR

PGAツアー・ユニバーシティランキング2位のユ・チュンアン。

©︎PGA TOUR

PGAツアー・ユニバーシティランキング3位のデービス・トンプソン。

大学を中退して学業を諦める必要はない

このプログラムができたことによって、大学生ゴルファーたちは学業を続け、教育課程を修了するまで学校に居続けることができるというメリットがある。

なれるかどうかわからないプロを目指して途中退学したのに、出場できる下部ツアーも見つからないという悲惨な事態を防ぐことができるのだ。

大学ゴルフで好成績を収めれば、プロとしてプレーする機会が直接転がり込んでくる。

またPGAツアー側にとっては、将来有望な大学生が卒業後にさまざまなツアーに出場するのを見届けられるという利点がある。

   ここでプログラムの仕組みを簡単に説明しよう。

PGAツアー・ユニバーシティのポイントランキング上位5人は、春に行なわれる「NCAA選手権」後にコーン・フェリーツアーカードを獲得し、夏の大会に出場する権利を得られる。
そしてその結果によっては、出場資格を維持し、PGAツアーへの出場権を手にすることもできる。

 ポイントランキングの6位から15位までは、マッケンジー・ツアー(PGAツアー・カナダ)、PGAツアー・チャイナ、PGAツアー・ラテンアメリカのいずれかの下部ツアーで常時プレーする選択肢が与えられる。
また、これらのツアーからも、コーン・フェリーツアーの出場資格を得られるのだ。

「ほかのスポーツでは、大学とプロの間には直接のつながりがあるのに、ゴルフ界には、そのようなつながりがなかった」と、プログラムの企画にあたって相談役を務めたアリゾナ州立大学ゴルフ部監督のマット・サーモンド氏は言う。

「たいていの場合、大学を卒業した選手たちは、数年間姿を消し、その後でツアーにひょっこり姿を現したものだが、今は、直接ツアーへとつながった」選手は大学を卒業する必要はないものの、資格を得るためには大学に4年間通わなければならない。
そして最終年度には、大学のトーナメントだけでなく、PGAツアーの試合やメジャーを含む最低9つの予選に出場する必要がある。

ただしこれには、コーン・フェリーの試合は含まれない。
また、最終年度にはNCAAの地区大会に出場しなければならないのだ。

PGAツアー・ユニバーシティのランキングは、世界アマチュアランキングのようなものだが、対象となるのは大学の試合、PGAツアーの試合、メジャーのみである。
そして、2年間または104週間のプレー成績が順位に反映される。ここで上位5人になると、コーン・フェリーツアーのQT最終ステージへの出場権が与えられ、6位から15位までであれば、第2ステージへの出場権が与えられる。

コーン・フェリーツアーに参加する5人の選手は、おそらく8~9試合に出場してポイントを争うことになる。
その結果、トップ25に入れば、翌シーズンのPGAツアーへの出場資格が手に入るし、トップ75人でもコーン・フェリーツアーの出場資格を維持して、ファイナルの予選に出場、その中から25人がPGAツアーへの出場資格を得ることになる。
また、ランキングから漏れたとしても、QTの最終ステージへの出場権は与えられる。

だが、このシステムについても欠点があるものの、いくつも良い点がある。
例えば、PGAツアーは、より多くの実績ある選手を自らの育成システムに送り込むことができるし、大学もトップクラスの選手が学校に居続けることでゴルフ部の強化につながる。

 「学生と親が、プロ入りできるかどうか、不安を感じなくてもいいようになれば……。大学に通ってからプロになればいいと考えてくれたらいい」とジョージア大ゴルフ部のクリス・ハーク監督は語る。

新型コロナウイルスの大流行により、今春は大学のゴルフプログラムが中止された。
また、PGAツアーやコーン・フェリーツアーの試合も中止されたため、今秋はQT開催を見合わせることになった。だが一方でNCA

Aは資格取得の年限に満たない学生に対して助成金を給付する決定を下した。これにより、多くの学生が復学することになる。
と言うことは、上位15人を目指して一流の選手たちが秋と春に競い合うことで、競争はますます激しくなるわけである。

PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏は「PGAツアー・ユニバーシティは、最低4年間大学に通っている選手たちを支援することで、途中退学を思いとどまらせるとともに、大学卒業までの自分たちの成長と経験から学んでもらいたいと考えています」と話す。

PGA TOUR UNIVERSITY 上位ランキング

1 ジョン・パク(フロリダ州立大) 1342.2286
2 ユ・チュンアン(アリゾナ州立大) 1242.5476
3 デービス・トンプソン(ジョージア大) 1160.3441
4 サンディ・スコット(テキサス工科大) 1113.624
5 ジョン・オーゲンスタイン(バンダービルト大) 1090.176
6 オースティン・エックロート(オクラホマ州立大) 1090.145
7 ガレット・レバンド(オクラホマ大) 1068.5571
8 マクルア・マイスナー(サザンメソジスト大) 1067.2392
9 クエイド・カミンズ(オクラホマ大) 1059.028
10 トレバー・ワービロ(アリゾナ大) 1056.7971
46 大西魁斗(南カリフォルニア大) 888.0962
65 呉 司聡(東テネシー州立大) 845.4738
90 田辺一成(南カリフォルニア大) 802.098

*10月25日現在。数字はポイント。

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

ESPN.comシニアゴルフライター。25年以上に渡り、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

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