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【世界トッププロ達のFamily・家族の絆】第4回「ジャスティン・トー マス」

世界のトッププロたちは、毎週各地を転戦し、自宅で家族と過ごす時間はあまりない。
しかし過酷なスケジュールの中、頑張れるのも家族がいるから。
プロたちの大事なチームである家族を紹介する。

連載第5回は、祖父も父親もティーチングプロというゴルフ一家に育ったジャスティン・トーマス。

©Getty Images

2018年「WGCブリヂストン招待」で優勝したジャスティン・トーマス。左から祖父ポールさん、祖母フィリスさん、トーマス、母ジャニさん、父マイクさん。祖父も父もティーチングプロで、全米プロに出場したことがある。

祖父も父親もティーチングプロというゴルフ一家に育ったジャスティン・トーマス。

2019~2020年フェデックスカップランクでは堂々の2位に入ったが、彼は今も父マイクに指導を受けている。

ジャスティンの強さのルーツを探るため、フロリダの自宅を訪れた。

もしクリーニング店に父が行かなかったら……

 ジャスティン・トーマスの誕生は「奇跡」であり、トーマス家の「運命」だったといえるだろう。

トーマスの父マイクさんは、1980年代半ばにペンシルバニア州のフォックスチャペルGCのアシスタントプロを務めていたが、ある日、ゴルフ場の客のために、地元のクリーニング店を探すことになった。

「フォックスチャペルドライクリーナーズ」という店が見つかり、彼は店に入って行ったが、その時カウンターで接客をしていたのが未来の妻ジャニさんだったのだ。

「すごいことだよ!もし彼女がその日、働いていなかったら私は彼女に出会わなかったんだから」

彼らは二人とも、西ペンシルバニアという土地に縁があった。

マイクさんはケンタッキー州の大学を卒業すると、オハイオ州やペンシルバニア州のゴルフ場のアシスタントプロやヘッドプロを務め、ジャニさんは両親が経営するペンシルバニア州のクリーニング店を手伝っていたからだ。

二人がクリーニング店で知り合い、のちに結婚したが、ジャスティンが生まれたのは1990年にマイクさんがケンタッキー州のハーモニーランディングCCのヘッドプロに就任した3年後のこと。

決して裕福な家庭ではなかったため、ジャスティンを育てるには経済的にも肉体的にも相当な犠牲が払われたようだが、ジャニさんは

「ジャスティンを育てるためなら、もう一度その頃の苦労をしてもいいわ。いつも私は彼のために4つの仕事をこなしてきたけど、3人の時間はとても特別なものだったし、一緒にたくさんの試合にも行った。ジャスティンをプロにすることがマイクの夢だったけど、プロになれるかどうかなんてわからなかったし、こうしてそれが実現できて私たちはとてもラッキーよ」

と語っている。

ジャスティンのコーチは父と祖父

ジャスティンのゴルフの才能は、父方の家系から引き継がれている。

ジャスティンは幼い頃から父が基礎を叩き込んだが、マイクさんがヘッドプロとして務めていたハーモニーランディングCCのメンバーたちはジャスティンに対してとても協力的で、コースや練習場をすべて好きなように使わせてくれた。

そして、マイクさんの父(ジャスティンの祖父)のポールさんもまたプロゴルファーであり、全米プロゴルフ協会のメンバー。

オハイオ州ザネスビルCCのヘッドプロを30年以上も務めていた。彼はトーナメントプロたちと一緒に戦うほどの腕前で、1962年には全米オープン、1983年には全米シニアオープンにも出場している。

その他、数々のプロトーナメントに出場したが、ベン・ホーガンやサム・スニード、アーノルド・パーマーらとともに戦った経験を持つという。

レジェンドたちとの話はジャスティンは何度も祖父から同じ話を聞いたというが、彼は「祖父は何度も同じ話をするんだけど、一度も遮ったことはないよ。祖父の話は全部ボイスメールにキープしてるんだ」

ポールさんは今でもプレーを続けており、64歳以降、現在に至るまで毎年エイジシュートを達成しているらしい。

ジャスティンのコーチは子供の頃から父だけだが、祖父の影響も大いに受けている。

ゴルフに対する情熱の強さは、祖父譲りのものだ。祖父はジャスティンにコースマネージメントやメンタル面などを教えたのだという。

©Getty Images

コロナ禍の中でも父マイクさん(右)はジャスティンのスイングチェックのためツアー会場に足を運ぶ。

トーマス家のゴルフの教え
「アイアンやドライバーの練習をするよりも、ウェッジの練習をしなさい」

祖父のポールさんは「二人として同じ人はいないのだから、ゴルフのセオリーなどは存在しない」という理論の持ち主。

彼の生徒にはLPGAツアーで活躍したタミー・グリーンやミッシェル・レッドマンがおり、グリーンはメジャー1勝を挙げている。

「ジャスティンが7~10歳の頃、彼は大きな可能性を秘めているとわかったよ。昔、彼にはアイアンの練習に時間を費やすのはやめて、ひたすらSWやPWを練習するよう言ったのを覚えている」

トーマス家の人たちは皆、ショートゲームが得意だ。

祖父は中でもパターが得意で、マイクさんはそんな父の影響を受け、ショートゲームの練習を熱心にやっていたという。

ジャスティンもまたそんな父を見習い、アプローチの練習に励んでいたそうだ。

ジャスティンの活躍を楽しむ家族

祖父母と父母が揃って見守る中、ジャスティンが優勝したのは、2018年「WGCブリヂストンインビテーショナル」。

開催コースのファイヤーストーンCCはオハイオ州アクロンに位置するが、祖父母の自宅のあるオハイオ州コロンバスから車で約2時間の距離のため、滅多に観戦には訪れない彼らも、孫を応援しに最終日にやってきたのだ。

ファイヤーストーンCCといえば、ポールさんが1960年全米プロで戦った名門コース。

予選通過を果たし、ベン・ホーガンよりも1打いいスコアでホールアウトした思い出の地だ。

ポールさんは選手用食堂でアイスクリームをほおばりながら、そんなことを思い出していた。孫の活躍する姿を一目見たいとコロンバスから駆けつけたのだが、外に出てもギャラリーが多すぎて孫のプレーは見られない。

仕方なく最終ホールのグリーン周りで待ち受け、ジャスティンの優勝を見届けた。

最終パットをヒットする前から、ジャスティンは思わず目頭が熱くなったが、それは祖父のポールさんの姿が目に入ったから。

優勝直後、彼はポールさんのもとに駆け寄り、ハグで優勝の喜びを分かち合った。

父であり、友人、師匠、コーチであるマイクさんの存在は大きいが、祖父ポールさんの存在がなければ、父マイクもゴルフをしておらず、ジャスティンというメジャーチャンピオンも生まれなかったのである。

メジャー初優勝を恋人に見せたい第六感が働いたトーマス

ジャスティンにはジリアン・ウィスニュースキーさんというガールフレンドがいるが、できるだけ試合に同伴したいと思いつつも仕事が忙しくライダーカップやプレジデンツカップなど、妻やガールフレンド同伴のイベントと数試合のレギュラーツアーにしか姿を見せたことがない。

しかし彼は2017年の「全米プロ」で優勝争いをしていた時、どうしても彼女には初メジャー優勝を見逃して欲しくなかった。

©Getty Images

2019年シカゴ郊外のメダイナCCで開催された「BMW選手権」で優勝したトーマス。シカゴで働くガールフレンドのジリアン・ウィスニュースキーさんとともに記念撮影。

ガールフレンドにどうしても見せたかったもの

「ガールフレンドは最終日、夜の7時にはノースカロライナを出て、シカゴに戻ろうとしていたんだ。でも僕は〝もう少し遅い便に変えた方がいいと思うよ。なんというか、この瞬間を見逃して欲しくないんだ。今回はやりそうな気がするから〟と言ったんだよ」

当時、シカゴの会社に勤めていた彼女はもともとジャスティン同様、ケンタッキー出身。ケンタッキー大学でジャーナリズムを学んだが、2016年からジャスティンと交際開始。

現在はジャスティンのフロリダの自宅で同棲している。

SPECIAL INTERVIEW

「常に勝ちたいという闘争心はタイガーの影響」

ジャスティン・トーマスといえば、松山英樹の「全米プロ」や「セントリートーナメント」などの優勝を阻んだ松山キラーのイメージが強いかもしれない。

そんな彼の素顔に迫るべく自宅で直撃インタビュー。

©Eiko Oizumi

ジャスティン・トーマス
(アメリカ)

1993年4月29日生まれ。ケンタッキー州ルイビル出身。2017年「全米プロ」でメジャー初優勝。PGAツアー通算13勝。世界ランキング最高位は1位。2019~2020年フェデックスカップランク2位。

©Eiko Oizumi

自宅でインタビューに答えるトーマス。

――  ジャスティン、あなたはショットメーカーとして知られ、爆発力もありますが、何か心がけていることはありますか?

守るよりも積極的に攻める選手になってきていると思う。
ボクのゴルフは、状況に応じて狙うポイントを変えていくゴルフ。
キャディのジミー(ジョンソン)が以前担いでいたスティーブ・ストリッカーのような「グリーンまで手順を追って手堅くプレーするタイプ」とはまったく違うけど、ジミーはそんなボクにうまく順応してくれたんだ。
チームワークもいいし、リスクに対して試す価値があるかどうかを二人で判断していく。
今年は彼も体調不良で休んだ時期もあったけどね。
それと1ラウンドで8〜10個のバーディが取れる理由はそれだけではないよ。
フィーリングがいい時は、アイアンの調子がよく、パターも波に乗っている。より積極的に攻められるようになるんだ。

――   飛距離も出ますが、その秘訣は?

打ち方と技術かな。ボクはカチ上げるから、そのぶん飛距離が出るんだと思う。
筋トレも真剣にやっているし、体の深部のマッサージでヘッドスピードに必要な部位を柔らかくしたり、ケガを防ぎながら各部位の柔軟性を高めているんだ。

――  それが飛距離アップに?

そうだといいね。
正しい食事、休息、トレーニングや治療を、正しく行なうことが大事だよ。
コース外で行なっているプロセスが、コース上の結果につながっていくからね。

――  昔からやり続けている練習法ってありますか?

アラインメント(目標取り)の確認など、基礎的なことだね。
あとはボール位置、グリップなどの確認とか。これらはアマチュアは軽視しがちだけど、目標方向を確認せず、ただボールを山ほど打っても、狙い通りに打てなければ練習する意味がない。
ただ、スティックなどを置いて確認すればいいだけの簡単なことなのにね。ボクは基本から外れないように気をつけている。そこがズレるといろんな箇所に影響が出るからね。

――  おじいさんやお父さんはティーチングプロですが、どんなことを教わってきたの?

父はボクが2~3歳でゴルフを始めた時、まだ歩くのもままならない頃からコーチをしてくれている。
二人ともボクにとって師匠であり、友人であり、非常に近い最高の存在だ。祖父も予選落ちをしたり、日曜日に成績が悪いと連絡をくれて「来週はきっとうまくいくよ」と声をかけてくれる。
親子の関係にスコアは関係ないと両親も言ってくれている。
スコアに関わらず自分のことを毎日同じように愛してくれ、気にかけてくれるのは嬉しいし、それは今、こうしてPGAツアーでプレーしていても同じことだよ。全米プロゴルフ協会と長年に渡って関わってきた祖父と父の歴史を考えても、2017年に「全米プロ」で優勝したことは特別な意味があった。
言葉にできない、家族にとって特別な瞬間だったね。

――  トーマス家はショートゲームが得意なんですよね?

そうだね。特に父からはアプローチとパッティングがゴルフで一番重要だと言われたよ。
ボクは昔、小柄で飛ばないタイプだったので、みんなに対抗する手段が必要だった。
小さい頃からメンズティーやバックティーで練習し、当然グリーンにはパーオンできない(届かないので)、その結果ウェッジやショートゲームの技術を磨くことができたんだ。
レディースティーからならバーディもたくさん取れるかもしれないけど、メンズティーからいいスコアを出そうとするのは難しく、楽しい挑戦だった。

――  メジャーで優勝するのに必要なことは?

まずは「我慢強さ」。それと「優れたショートゲーム」。
もう一つは「ガッツ」だ。
厳しい場面を自分でうまく乗り越えるために、慣れていないショットやパットを打つ決断もしなければならないからね。

――  「全米プロ」で優勝した時は、松山英樹と同じ組でしたね。日本では“マツヤマキラー”と呼ばれていますよ。

え?なんて言ったらいいかわからないよ(笑)。
日本のファンに嫌われないといいけどね。ヒデキは大好きだよ。
ボクは対戦相手が誰であろうと倒したいし、ヒデキ以外の選手とも何回も争ってきたからね。
たしかに2017~2018年頃はヒデキが優勝争いしていた試合でボクが何回か勝ったこともあった。
ただそういう結果になっただけで、自分のことをヒデキキラーだとは思わないよ。
彼にもそう思って欲しくないしね(笑)。

©Getty Images

2017年「全米プロ」の最終日は松山英樹(右)と2サムでプレーし、優勝争いを展開したトーマス。メジャー初優勝を飾った。

ボクはどんなレベルでも常に負けず嫌いで、子供の頃から負けが許せなかった。

©︎PGA TOUR

トーマスはかつて、タイガー・ウッズに憧れ、現在は最も親しい選手としてよく練習ラウンドを共にしている。

――   憧れのゴルファーは誰?

小さい頃からタイガーだね。
ボクが7~10歳の頃に彼は全盛期だった。
あまり認めたくないけど、ボクの強い競争心は彼からの影響だ。

―― プロを目指したのはタイガーへの憧れから?

理由はそれ以外にもあるけど、ただ、相手を完璧に倒したい、常に勝ちたいという競争心は彼を見て得たものだと思う。
ボクはどんなレベルでも常に負けず嫌いで、子供の頃から負けが許せなかった。

――  初めてタイガーと話した時は? 今はどんな関係?

ずっとテレビで観ていた憧れの人と会って話した時は緊張したよ。
何を話したのかも覚えてないくらい。
リッキー(ファウラー)とも同じ地域に住んでいるし、3人で一緒に練習したりもするけど、普通の仲のいい男友達だ。
ゴルフの話ばかりではなく、一緒にフットボールを観たり、彼の子供たちや犬と遊ぶのが楽しいんだ。

――  タイガーの復活を支えたとか……?

ボクのマネージャーでタイガーのマネージャーを長年務めているマークにお願いしたんだ。
そこまでするべき仲なのかわからないけど、助けになりたいし、友人としていつでも頼ってくれって伝えてって言った。
マークも、きっとタイガーは喜ぶだろうって言ってくれた。
だから、タイガーに声をかけて遊んだり、夕食に誘ったりしたんだ。
彼のスケジュールに合わせ、会うようになったんだよ。
ボクとリッキーで彼を元気付けたんだ。
ボクらがいつでも助けになる、と伝えた。ゴルフはもちろんだけど、それ以上に彼には子供と遊んだり、体に痛みを感じることなく普通の生活をしてほしかったんだ。
悪い状況から抜け出せて本当に良かったよ。

©Eiko Oizumi

トーマス(左)、ファウラー(右)はタイガー・ウッズと同じフロリダ州・パームビーチガーデンエリアに居住。写真はタイガーが80勝目を飾った「ツアー選手権」後のパーティでのもの。「I Made Tiger Great Again(ボクがタイガーを再び偉大にした)」Tシャツでお祝いした。

誰も達成したことがないことを達成したい!
タイガーの勝利数を  塗り替えたいね!

――  タイガーよりもいい選手になって、歴史を塗り替えたい?

もちろん!
彼は全てのカテゴリーにおいて突き抜けているし、その一部でも追い越せたらすごいことだよ。
彼のゴルフ界への貢献度は計り知れない。
今の賞金額も、ついてくれているスポンサーや世間の関心も全て彼のおかげだ。せめて勝利数だけでも更新したいね。

――  最後に人生の目標は?

たくさんあるよ。
でも人生の目標を立ててしまうと頂点を作ってしまうから嫌なんだ。
メジャーだって本当は30勝したい。
伝説を作りたいし、子供の良いお手本にもなりたい。
財団を作って困っている人も助けたいんだ。
そういう大きな目標はあるけど、自分を制限してしまうような目標は立てたくない。
誰よりも多くメジャーに勝ち、誰よりも長くNo・1でいたい。ベストを尽くして、自分の努力が報われるよう頑張るよ。

©Eiko Oizumi

ジャスティン・トーマスの自宅の玄関。

©Eiko Oizumi

プールと広いテラスのある庭。

©Eiko Oizumi

優勝トロフィや写真など、記念の品々が保管されている。

©Eiko Oizumi

「プレジデンツカップ (左)」と「ライダーカップ(右)」のバッグや優勝カップのほか、「全米プロ」「フェデックスカップ」優勝時のトロフィも並ぶ。

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松山英樹と優勝争いを繰り広げた「全米プロ」の優勝時のスコアカードが飾られていた。

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今年亡くなったバスケットボール選手、コービー・ブライアントの死を悼み作られたフットジョイの特製シューズ。バスケ好きのトーマスの憧れの選手だった。

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バスケの神様、マイケル・ジョーダンからのメッセージが書かれたユニフォームが飾られている。実際に知り合って、友情を築いたアスリートたちのものだけが飾られている。

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自宅にビリヤード台も備える。近所に住むツアー仲間でアラバマ大のチームメイトだった、バド・コーリーとよくビリヤードを楽しんでいるという。

©Eiko Oizumi

父マイクさんと母ジャニさん、ガールフレンドのジリアンさんと。

Text & Photo/Eiko Oizumi

Photo/Getty Images

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